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塩焼きとバター焼き

「よし、火の準備は完了したぞ。どれを焼くんだ?」

 ギイの言葉に、粗塩を振って用意しておいた串に刺した切り身をまとめて渡す。

 一応大きめのバットに並べてあるよ。

「おお、これは綺麗な切り身だな。じゃあ焼いていくか」

 どうやって焼くのかと思って見ていると、なんと大きくて背の高い金属製の五徳みたいなのを取り出し、焚き火の上に置いたのだ。

 ちょうど火の先端部分が当たるくらいの高さだから、そこに網を置いて焼けば火加減もバッチリだろう。

 予想通りに、五徳の上に大きな金網を取り出して置いたギイとハスフェルは、いそいそと串に刺した魚の切り身を並べ始めた。

「じゃあよろしく!」

 アーケル君とランドルさんが駆け寄って焼くのを手伝い始めたのを見て、俺は笑って並べたコンロに順番に火をつけていった。

 その上に並べたフライパンにはバターの塊を落として溶かしてから、トラウトの切り身を並べる。

 少し薄めの綺麗な薄紅色をした身はとても美味しそうだ。

「これ、刺身で食いたいけど、駄目なのかなあ」

 サーモンよりは少し色は薄いが、これも刺身で食べたら絶対に美味しそうだ。

 ごくりと唾を飲み込んでから、冷凍すれば万一寄生虫とかがいても大丈夫なのになあ。なんて考えていた俺だったよ。



 並べたフライパンの切り身を崩さないように軽く揺すりつつ、じっくり火を入れていく。ある程度火が通ったら、野菜炒めの時なんかに使っている大きめのフライ返しでそっとひっくり返してみる。

「おお、いい感じの焼き色がついたぞ。じゃあこっち側ももうちょい焼かないとな」

 順番にひっくり返していき、全部終わったところでもう一度ひっくり返してからフライパンの縁に醤油を回しかけて一気に強火にしてフライパンを揺する。

「ううん、良い香りだ」

 醤油の焦げる良い香りに、思わず深呼吸をする俺だったよ。

 焼き魚も良い感じになっているらしく、先ほどからパチパチと油のはぜる音と香ばしい香りがここまで届いてくる。



 俺達が魚を焼いている間に、リナさん達や新人さん達は、手分けして夕食の準備をしてくれている。

 食器は準備の時点で並べてあるんだけど、皆が手持ちのサイドメニュー系を色々と取り出してくれているみたいだ。

 しかも、パンだけじゃあなくてご飯やおにぎり各種がガッツリ用意されているのを見て、ちょっと嬉しすぎて涙目になった俺だったよ。

 焼き魚に白米って、最高の組み合わせだよな。あ、わかめと豆腐のお味噌汁は用意しておかねば!

 新人コンビとレニスさんは、ハスフェル達が出した大量のお酒をせっせと氷の入った桶に沈めてくれている。

 あっちには、もうちょい氷を出しておいてあげるべきかな?

 追加の味噌汁の入った鍋を取り出して、空いたコンロの上に置いておき、聞けば氷はまだまだあるらしいので、俺は二回目のバター焼きをせっせと焼いていった。

「あ、ムニエルとかも美味しそう。少しくらいなら作れるかな?」

 何しろ魚の大きさが異常に大きいので切り身はまだまだある。

 少し考えて、スライム達に手伝ってもらって手早く準備をして、定番ムニエルとカレー風味のムニエルも作ったよ。



「よし、これだけあれば大丈夫だろう。そっちはどんな感じだ?」

 もう大丈夫だと思えるまでガッツリ焼いたところでそう言い、ハスフェル達を見る。

「おう、今焼いているのが最後だからもう終わるよ」

 笑って差し出された大皿には、串刺しになった焼いた切り身がびっしりと並べられている。これは美味しそうだ。

「じゃあ、そろそろ良いかな」

 笑ったギイがそう言って焼いていたのを大皿に取って並べたのを見て、良い感じの焼き具合に思わず拍手をした俺だったよ。



「じゃあ、俺は魚メニューは一通りもらおう。間違いなくシャムエル様に半分持っていかれるからな」

 苦笑いしつつ空のお皿を手に、トラウトの塩焼きを始め一通り大きめの部分を取っていく。

 まあ、いつものお肉系の料理も一通り並べておいたから全員が魚に殺到したってわけではないので、いつもよりはのんびりと取る事が出来たよ。

 だけど、皆も興味津々で魚も一通り取っていたから、あれだけ焼いたけど残るかどうかは微妙だ。

 ちなみに、今回の釣り大会で釣った魚は料理に使ってくれと言われて全部提供されているので、もしも生食OKなら早々に刺身と寿司パーティーをする予定だよ。

 駄目なら焼き魚系のメニューをもうちょい考えよう。

 多めに塩を振って焼いて解せばおにぎりの具にぴったりだろうから、これはやる予定だ。



 魚を一通り取って席に置き、お味噌汁やご飯を準備して戻ると、キラッキラの目でお皿を手に焼き魚のお皿の横で高速ステップを踏んでいるシャムエル様がいた。

「いつの間に戻ってきていたんだよ。それで、生食の件はどうなったんだ?」

 笑って席につきながら小さな声でそう尋ねる。

「今、色々と準備と仕込み中で〜す! 明日になれば、生食OKだからね! お、す、し! お、さっしみ〜! 食べたい、食べたい、わ〜い! わ〜い!」

 謎の歌を歌いつつ、ダンスが横っ飛びステップに切り替わる。

 当然のように、横にはカリディアがすっ飛んで来ていて、完璧に同じステップを踏んでいる。

「おう、明日になれば食べても良いんだな。じゃあ、明日は刺身とお寿司パーティーだな」

 笑ってそう言った俺は、まずはスライム達が用意してくれたいつもの簡易祭壇に、自分用のお皿を一通り並べた。

 それから、例のラベル入り地ビールをまとめて三本取ってきて横に並べた。

 ちなみにラベルはランドルさんとハスフェルと、何故か一人だけ可愛らしい絵柄のクーヘンだったよ。

「皆で釣ったトラウトを焼いてみました。ええと、塩焼きとバター醤油焼き、それから定番ムニエルとカレー風味のムニエルだよ。付け合わせはワカメと豆腐のお味噌汁とおからサラダ、大根とにんじんの浅漬けとご飯です。だし巻き玉子もあります。少しですがどうぞ」

 手を合わせて目を閉じて小さな声でそう呟く。うん、俺的には完璧な和定食だよ。

 いつもの収めの手が何度も俺の頭を撫でてから順番に料理を撫でてお皿を持ち上げていき、最後にこっちに手を振ってから消えていくのを見送った。

「気に入ってくれたみたいだな」

 小さく笑ってそう呟くと、急いでお皿を席に戻した。



「ああ、待っていてくれたのか。悪い悪い」

 皆が席についたまま待ってくれていたので、慌てて謝って席に座る。

「じゃあ、まずは乾杯だな」

 笑ったハスフェルにそう言われて俺も笑顔で頷き、まずは一番近くにあったランドルさんのラベルの地ビールを手にした。

 栓を開ける前にわざとランドルさんにラベルを見せたら、にんまり笑って俺のラベルを見せられたので同時に吹き出してから黙って栓を開けた。うん、ラベルに罪はないからさっさと飲もう!

「では、釣りの成功と勝ったチームはおめでとう。負けたチームは次回頑張れ! って事で、釣り大会お疲れ様でした。乾杯!」

 いつもの流れで俺が乾杯の音頭を取る事になったので、笑ってそう言い、グラスを掲げた。

「釣り大会お疲れ様でした! 乾杯!」

 笑顔の全員の声が重なり、ようやく待望の焼き魚の夕食が始まったのだった。


挿絵(By みてみん)

2024年11月15日、アース・スターノベル様より発売となりました「もふもふとむくむくと異世界漂流生活」第九巻の表紙です。

どうぞよろしくお願いしますm(_ _)m


今回も引き続き、れんた様が表紙と挿絵を最高に素敵に可愛らしく描いてくださいました。

そして中の口絵二枚目が、何とケンの〇〇シーンですよ!

どうぞお楽しみに!

口絵ラフをいただいて、もう、一人で大爆笑したのは内緒です

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― 新着の感想 ―
玉ねぎとえのきを敷いたホイル焼きがいいなー。 でもこの世界にアルミホイルってあるのかな? あとこのメンバーなら鉄板丸ごと使っての ちゃんちゃん焼きなんかも盛り上がりそう。
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