朝食とこの後の予定
『おおい、起きてるか〜〜?』
従魔達と戯れていると、ハスフェルの念話の声が聞こえてトークルームが開くのが分かった。
『ああ、おはよう。久しぶりだったから従魔達と一緒にのんびり戯れていたところだ。まだ顔も洗っていないんだよ』
慌てて起き上がりながら返事をすると、三人の笑う声が返ってきた。
『そうなってるんじゃあないかと思っていたよ。じゃあ、準備が出来たらリビングに集合だな』
『了解、じゃあ顔洗って準備するから気長に待っていてくださ〜〜い。あ、マール達にもリビング集合って声掛けてきてくれよな』
『おう、じゃあ全員に声だけかけてからリビングへ行くよ』
『よろしく〜〜』
笑ってそう言い、ちょうど抱きついていたカッツェに引っ張ってもらって立ち上がる。
「よし、とにかく顔を洗ってこよう。水遊びする子達は一緒に来いよ〜〜」
思いっきり腕を上げて伸びをしてからそう言い、そのまま階段を降りて水場へ向かった。
マックスやビアンカをはじめとする水遊び大好きっ子達が、慌てたように後を追いかけて階段を駆け降りてきた。
「ふああ、冷たい!」
流れる水で顔を洗い、思わずそう叫ぶ。
「ご主人、綺麗にするね〜〜!」
跳ね飛んできたサクラがそう言って、一瞬で俺を包み込みすぐに離れる。
もうそれだけで、濡れていた顔や手、少し汗ばんでいた服も伸びた髭も一瞬で綺麗になるんだから、本当に有り難いよな。
「いつもありがとうな。ほら、いっておいで」
サクラを捕まえておにぎりにしてやってから、笑いながらそう言って水槽の下の段目がけてフリースローで投げ込んでやる。
「ご主人、アクアも〜〜」
「アルファもお願いしま〜す!」
嬉々として跳ね飛んでくるスライム達を順番に受け止めては、おにぎりにしてから水槽に放り込むのを繰り返す。
スライムの数も増えているからこれをするだけでも結構時間がかかるんだけど、これは普段は団体行動の多いスライム達との一対一での大事なスキンシップタイムだから疎かにはしないよ。
スライム達を全員水槽に放り込んだところでマックス達やお空部隊と場所を交代して、俺は一旦屋根裏へ戻る。
自分で収納していた防具を取り出し、確認しながら手早く身に付けていく。
その間中、下の階からはずっと、バシャバシャと賑やかな水音や楽しそうな笑い声が聞こえている。
「遊ぶのはいいけど、後始末はちゃんとしてくれよな。このお屋敷で水漏れとか洒落にならないからさ」
剣帯を身につけ、剣を装着しながら階段を降りて水場に向かってそう言ってやる。
「もちろん、ちゃんと毎回確認してま〜〜す!」
「水回りは特にしっかり確認してますので、ご安心ください!」
俺の声にずらっと整列したスライム達が、張り切ってそう報告してくれる。
「あはは、そりゃあありがとうな。そろそろリビングへ行くから水遊びは終了〜〜」
「はあい、じゃあ片付けま〜〜す!」
一瞬で水場へ戻ったスライム達が手分けして片付けてくれるのを待ってから、従魔達を引き連れてリビングへ向かった。
「おはようございます!」
廊下を歩いていると聞こえてきた元気な声に振り返ると、ムジカ君とシェルタン君、それからマールとリンピオが揃ってこっちに向かって歩いてくるところだった。
四人揃って、とってもいい笑顔で手を振ってくれている。
「ああ、おはよう」
俺も笑って手を振りかえし、一緒にリビングへ向かった。
ううん、それにしても全員の従魔が集まると、冗談抜きで凄い数だな。
まだ、彼らの従魔はジェムモンスターばかりで魔獣がいないからマシだけど、自分が連れている従魔達を振り返って、ちょっと乾いた笑いが出た俺だったよ。
うん、そろそろ冗談抜きでテイムは打ち止めにしないと、色々と大変な事になりそうだよな。
「おはよう。じゃあ色々出すから待ってくれよな」
サクラが入ってくれた鞄を手にそう言い、いつもの朝食メニューを一通り出していく。
昨夜はそれなりに飲んだけど、皆平気そうなのでお粥は無しだ。
「いただきます!」
山盛りに取ったサンドイッチに手を合わせてそう言い、横で高速ステップを踏んでいるシャムエル様を見る。
「あ、じ、み! あ、じ、み! あ〜〜〜〜〜っじみ! ジャカジャカジャン!」
即座に飛んできたカリディアと並んで、さらにヒートアップするシャムエル様の高速ステップ。
最後はピタリと止まってキメのポーズだ。
「お見事! じゃあ、カリディアにはこれだな」
笑って激うまブドウを一粒取り出して渡してやり、シャムエル様にはタマゴサンドと岩豚トンカツを一切れ渡してやる。
今日のドリンクはホットオーレだ。
「わあい美味しそう! では、いっただっきま〜〜〜す!」
タマゴサンドに頭から突っ込んでいったシャムエル様の尻尾をこっそりと撫でつつ、俺も岩豚カツサンドを食べ始めたのだった。
ううん、いつ食べても岩豚カツサンドは最高だね。
「それで、この後ってどうするんだ? 一応アーケル君がサイン色紙の額が欲しいって言っているから、一度は街へ行きたいんだけどな」
「ああ、あれな。まあ無事に祭りも終わった事だし、しばらくのんびり休憩でもいいんじゃあないか? それにここ数日は天気も悪そうだから、街へ行くのなら気をつけろよ」
ハスフェルの言葉に、思わず窓を見る。
今は少し雲が多いくらいで雨が降る様子はないが、彼らがこういう言い方をする時って間違いなく雨が降るんだよな。
「そっか、じゃあしばらくはここでのんびり休憩かな。ええと、皆もそれでいいですか? 早く狩りに行きたいとかある?」
俺の言葉に、食べていた手を止めた皆が顔を見合わせている。
「まあ、確かにちょっとくらいはゆっくりしてもいいと思います。ちなみに俺の額縁は急ぎませんので、街へ行くついでの時でいいですよ。それに狩りに出かけるのなら、確かに天気が安定している時のほうがいいですね」
笑ったアーケル君の言葉に、ランドルさん達やリナさん達も頷いている。
マール達や新人コンビ、レニスさんも顔を見合わせて頷いているので、とりあえずしばらくはここでのんびりする事になったよ。
ちなみにスライム達によると、さくらんぼはほぼ収穫しちゃったから無くなっているんだけど、イチゴはまだまだ追加の実が熟して鈴なりになっているらしい。
じゃあ、少し休んだら皆でイチゴ狩りでもしようかな?
残りのホットオーレを飲みながら、のんびりとそんな事を考えていた俺だったよ。




