風呂に入るぞ〜〜!
「ご馳走様でした!」
副賞でもらったレストランチケットで精算してくれたリナさんとレニスさんに、俺達が揃ってお礼を言う。
「いつも散々美味しいものをご馳走してもらっているんですから、たまには奢らせてください」
「そうですよ。これくらいさせてください」
嬉しそうにそう言って笑った二人に、もう一度お礼を言った俺だったよ。
ピカピカにしてもらったマックス達を引き取りホテルハンプールを後にした俺達は、酔い覚ましを兼ねて手綱を引いて歩いて帰った。
もうかなり遅い時間になっていた事もあり、時折酔っ払い達が俺達に気付いて手を振ってくれたり乾杯してくれたりするくらいで、来た時とは違ってのんびりと歩いてクーヘンの店へ向かった。
そこでクーヘンと別れて預けていた従魔達を引き取り、バッカスさんの店にも立ち寄ってランドルさんとバッカスさんと別れた俺達は、ここでようやくそれぞれの騎獣に乗り揃って別荘へ向かったのだった。
真っ暗な坂道を上り別荘に到着したところでマール達にもそれぞれ好きな部屋を選んでもらい、あとは前回と同じ部屋を使ってもらう事にしてその夜は解散となった。
一応、しばらくはここでのんびり過ごして、それからまずは例のメタルスライムの生息地があるカルーシュ山脈の奥地へ行ってみる事になったよ。
「よし! 風呂に入るぞ〜〜!」
自分の部屋である屋根裏部屋に従魔達を連れて行った俺は、まずは装備を全部解いて楽な格好になり、いそいそと風呂の準備をしてスライム達を引き連れて風呂のある部屋へ向かった。
「ひっさびっさのお風呂〜〜」
鼻歌まじりにそう言いながら、風呂用に確保してある部屋に入る。
まずは元栓を開けて湯船にお湯を流し入れておき、それから服を脱ごうとしたその時、ハスフェルから念話が届いた。
『おう、どうした?』
何かあったのかと驚いてすぐに応えると、トークルームが全開になるのがわかった。
『もしかして、今から風呂か?』
笑ったハスフェルの声に、別に何か問題があったわけではないと分かって内心で安堵しつつ、俺も笑って応える。
『おう、準備を終えて今まさに服を脱ごうとしていたところだよ』
俺の答えにハスフェル達の笑う声が重なる。
『それなら、お前が入ったら、俺達も順番にその風呂に入らせてもらっていいか?』
『もちろん。そっか、そっちの部屋の湯室はそのままだったな』
確か、ハスフェル達の部屋にも湯室はあったはずだが、この風呂場とは違って湯船がかなり浅い。
恐らく彼らなら寝湯にしても全身浸かれないのだろう。
納得してそう呟くと、ハスフェル達がそうなんだと言って笑っていた。
ううん、相変わらず考えている事ダダ漏れだぞ。
『実はさっき飲んでいた時に風呂の話をしたら、マールとリンピオは湯室を知っていたが、それ以外は全員存在すら知らなかったんだ』
『それで、湯に全身を浸かるのが気持ちいいんだって話をしたら、あいつらも興味を持ったらしく風呂に入ってみたがっていたからさ』
おう、まさかのお風呂希望者がいた。
『もちろん構わないよ。ここの湯船はバイゼンの風呂ほどじゃあないけどかなり広いからさ。じゃあ、俺が入り終わったら連絡するよ』
『おう、じゃあよろしくな』
笑った声の後にトークルームが切れる。
「よし、じゃあ入るぞ!」
風呂仲間が増える事を願いつつ、急いで服を脱いで風呂場へ向かう。
スライム達が跳ね飛んでついてきたので、うっかり風呂の扉を閉めそうになって慌てて全開にした俺だったよ。
「はあ、やっぱり風呂はいいねえ」
手足を伸ばしてたっぷりのお湯に浸かりつつ、天井を見上げた俺は一つため息を吐いてそう呟き両手で顔を洗った。
スライム達は、今は俺が作ってやった氷のボールで大はしゃぎしながら遊んでいる。
のんびりとそんなスライム達を見て和み、窓辺に座って尻尾のお手入れをしているシャムエル様を見上げる。
シャムエル様は濡れるのは嫌らしく湯に浸かる事はしないが、風呂場に立ち込める蒸気は気に入っているみたいで、俺が風呂に入っている時は、たいていあそこに座って尻尾のお手入れをしている。
「湯に浸かると気持ちいいのになあ」
「そんなの絶対にごめんだね!」
プン! って感じにそう言い、また尻尾のお手入れを再開するシャムエル様。
「まあ、別にいいんだけど、あそこまで拒否られるとちょっと悲しいよなあ。気持ち良いのに」
「そうだよね! お風呂最高です!」
「ご主人、そろそろ交代ですか?」
アクアとサクラが、ビヨンと伸びてそう聞いてくる。
「おう、じゃあ交代してくれるか」
笑って立ち上がり、氷のボールを持って湯船に飛び込んできたスライム達と交代した俺だったよ。
『お先でした〜お次の方どうぞ〜〜』
風呂から上がって身支度を整えた俺は、とりあえずハスフェルに念話でそう伝えてから屋根裏部屋に戻った。
『おう、じゃあ入らせてもらうよ』
『ああ、ごゆっくり。皆にも風呂の気持ちよさを知ってもらってくれよな』
嬉しそうな声に俺も笑ってそう言い、まずは冷えた麦茶をぐいっと飲んでからベッドで待ち構えていたニニとマックスの間へ潜り込んだ。嬉々として他の子達もいつもの定位置に収まる。
「ご主人あったかい〜」
腕の中に潜り込んできたマニが、凄い音で喉を鳴らしながら俺の胸元にさらに潜り込んでくる。
「そりゃあ風呂上がりだからな。ほら、あったかいぞ〜〜」
笑ってマニの顔を両手で掴んで揉んでやる。
全くの無抵抗で揉まれるがままなマニを気が済むまで揉みくちゃにしてから、欠伸を一つして目を閉じる。
もうそこから俺の記憶は途切れて、そのまま眠りの海へ墜落して行ったのだった。
いやあ、もふもふの癒し効果は相変わらず最高だね。