チーム戦の順位
「へえ、これまた見事なパフォーマンスだな」
大歓声と拍手の中、スライム達によって作られた見事なアーチの上を手を取り合って舞台まで歩いて上がってきたレニスさんとリナさんを見ながら、拍手をした俺は思わずそう呟く。
スライムアーチから降りて舞台に並んだ二人は、緊張はしているようだが二人揃ってとても良い笑顔だ。
そして二人の胸元には、揃って綺麗な緑色のラインが引かれている。
でもって彼女達が無事に舞台に降り立った直後、役目を終えて一瞬でばらけたスライム達は、次々に跳ね飛んできて舞台に上がり、彼女達のところへ集まりそのまま小物入れの中と胸元へと飛び込んでいった。
ジェムモンスターの従魔が体の大きさを自由に変えられる事を全く知らない街の人達には、まるで手品のようにスライム達が消えたように見えただろう。
どよめく会場を見て、そんな事を考えた俺だったよ。
「おお。一位にふさわしい素晴らしい登場でしたね。そしてこれはまた、スライムトランポリン以上に色々と出番がありそうでしたねえ」
スライムアーチを見て目を輝かせていた司会者さんの感心したような言葉に、シルトさんと並んで舞台の後ろに立っているアルバンさんの目が、割とマジになっている。
「そっか。例えば結婚式での二人の登場シーンとか、何かのイベントなんかで主役が登場する場面とか、それこそ舞台上の演出の一環としてなら、スライムアーチは絶対目立つし良さそうかも」
俺が少し考えただけでもこれくらい思いつくんだから、イベンターとしても役割もある商業ギルドのギルドマスター的には、新たなパフォーマンスであるあのスライムアーチはさぞかし魅力的だろう。
多分、今後どんな風にあれを使えばいいのかとか、アルバンさんの頭の中では、今頃もの凄い勢いで考えているのだと思われる。
うん、この街でもテイマー達がもっと今後増えていくだろうから、危険な冒険者としてだけでなく、安全に街の中で働ける仕事が増えるのは良い事だよな。
「では、第一位の副賞です! ホテルハンプールのスイートルームの宿泊券が二枚! そして同じくホテルハンプールが誇る豪華料理が好きなだけ食べられるレストランチケットがなんと百枚! そして賞金は金貨百枚だ〜〜〜!」
司会者さんの解説に、また会場が大きくどよめき拍手が沸き起こった。
頬を真っ赤にしたレニスさんとリナさんが分厚い封筒と賞金の目録を花束と一緒に笑顔のシルトさんから受け取り、揃って笑顔で会場に手を振る。
彼女達の名前を呼ぶ声と共に、またしてももの凄い大歓声が上がっていたよ。
「では、このままチーム戦の表彰式へと移らせていただきます!」
笑顔の司会者さんの声に、一旦レニスさんとリナさんも下がる。
「その前に、また一つ説明をさせていただきます」
ちょっと真面目な声になった司会者さんの言葉に、ざわめいていた会場が一気に静まり返る。
「今回の五周戦にソロで、つまりチーム戦には参加なさらなかった方が複数名おられます。はい、そうです。皆様もうお分かりかと思いますが、一位を取ったレニスさんはソロでの参加なので、チーム戦の対象にならないんですよ〜〜! 申し訳ありません!」
一応、チーム戦での賭け券も発売されているので、そういった説明も必要なんだろう。
勿体無いとか、ソロでも一人チームで良いのに、とかの声があちこちから上がっていたけど、まあこれはそういうルールなんだから仕方がないよな。
「せっかくの勝ち点なのに、使えません。申し訳ない」
司会者さんが、割と本気でレニスさんに謝っている。
「いえ、分かっています。そういうルールですから、謝っていただく必要はないです」
苦笑いしたレニスさんが司会者さんにそう言い、リナさんにこっそりおめでとうと言っているのを見て思わず考える。
「あ、そうか。チーム戦って個人の順位がそのまま点数になっていて、その合計点数で順位が決まったんだよな。確か一位が百点で、二位が五十点、三位が三十点で四位が二十点、五位が十点で六位が五点だったよな。あれ、って事は……」
思わず今舞台の上にいる人の顔を見て、俺は頭の中で点数を数える。
つまり、一位のレニスさんとリナさんが百点、二位の俺とアーケル君が五十点、三位のハスフェルとギイが三十点で四位のボルヴィスさんが二十点、五位のアルクスさんとオリゴー君が十点で、マールが五点。
そのうち、ソロのレニスさんとアルクスさんは評価対象外。
つまり、リナさんのチームラブラブが百点、愉快な仲間達は俺の五十点のみ。金銀コンビは三十点が二人だから合計六十点で、凸凹コンビはアーケル君の五十点とボルヴィスさんの二十点で合計七十点。
「って事は、チームラブラブが百点確保で一位、凸凹コンビが七十点で二位、金銀コンビが六十点で三位か。うわあ、とうとう表彰台にすら上がれなかったぞ」
小さくそう呟くと、いつの間にか俺の右肩に座っていたシャムエル様が笑って俺の頬を叩いた。
「残念だったねえ。今回も勝ったら私の尻尾を好きなだけもふらせてあげようと思っていたのに」
「うああ、それは悲しい!」
ドヤ顔のシャムエル様の言葉を聞いてわざとらしく顔を覆った俺の叫びに、ハスフェルとギイが吹き出して誤魔化すように咳き込んでいたのだった。
でもまあ、俺に賭けてくれた皆さんには心から申し訳ないと思うけど、俺的にはこれくらいの立ち位置の方が気楽でいいよ。
騒めく会場を見ながら、こっそりそんな事を考える俺だったよ。