表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1862/2071

参加者紹介前半!

「おお、あの道具屋のマシューさんだ。今回も一周戦に参加しているんだ」

 暑苦しい司会者の参加者紹介の声に笑顔で手を振りながら舞台に進み出る、立派な馬を引いた見覚えのある男性に俺は思わずそう呟く。

「マシューさん、連勝するんだって言ってとても張り切っていましたからねえ。商売仲間としては頑張って欲しいものです。今回は、一周戦も二周戦も三周戦も、もちろん五周戦も相当激しい戦いになると言われていますね。賭け券のオッズも、どれも相当荒れ気味だったみたいですからね」

 苦笑いしたクーヘンの言葉に納得した俺も頷く。

「確かに、賭け券をお願いする時に一通り見たけど、今回俺達が参加している五周戦も含めてどれもオッズは荒れ気味だったなあ」

「でも、ケンが最有力候補でしたよ」

 からかうようにそう言われて、笑って肩をすくめる。

「確かに今回は、どのレースも相当な乱戦になると俺も思うよ。五周戦なんてどういう展開になるのかすら全く予想がつかないよ。もちろん、俺だって簡単に負ける気はないし、三連覇目指して本気で走らせてもらうよ。だけど五周戦は、参加者達の顔ぶれを見る限り冗談抜きで誰が勝ってもおかしくないと思うぞ」

「そうですね。私もそう思います、でも、私だってもちろん勝つ気で行かせてもらいますよ」

「おう、受けて立つぞ。俺の三連覇を阻んでみせてくれよな」

 胸を張ってそう言い、俺達はお互いの顔を見てから揃って吹き出したのだった。



 そうこうしている間に一周戦の参加者紹介が終わり、二周戦の参加者紹介が始まる。

 相変わらずの暑苦しい参加者紹介の言葉の連続に、もう笑いが止まらない俺達だったよ。

「あれ? そういえば俺、二周戦って見た事がないけどどうなっているんだ?」

 ふと思いついて考えながらそう呟くと、隣にいたクーヘンが笑って教えてくれた。

 今まではお祭り二日目の午前中に、二周戦をやっていたらしい。

 成る程。俺達は、二日目は午後からのレースに備えてゆっくりしていたからな。

「あ、って事はもしかして今回の三周戦を俺達は見られなかったりする?」

 せっかくだからウッディさん達の応援はしたい。一応、ウッディさんとマシューさんの単勝の賭け券は買っているからさ。

「エルさんに頼めば、明日も特別観覧席は取ってもらえると思いますよ」

 笑ったクーヘンにそう言われて、まあそれは後で考える事にした。

 だって、そろそろ舞台では三周戦の参加者紹介が始まっているんだからさ。これが終われば、いよいよ俺達の紹介だぞ。

 ちなみに今回も、ウッディさんとフェルトさんには学生達が応援の横断幕を振り回し、ご祝儀テストをもう一度! とか、単位ください! とか叫んで、マイクを司会者から奪い取ったウッディさんが怒鳴り返して会場は大爆笑になっていたよ。

 ううん。なんというか……お約束の展開からの笑いって安心する。



 三周戦最後の一人の紹介が終わり、会場の拍手が静かになる。

 さあ、いよいよ五周戦の参加者紹介だ。

 クーヘンと顔を見合わせて頷き合った俺は、一つ深呼吸をしてから胸を張って舞台を見た。



「さて、大変お待たせいたしました! ここからは、今回新しく設定された五周戦の参加者の皆様を順に紹介していきます。ここで改めて説明させていただきますが、この五周戦に参加される皆様は、全て魔獣使いやテイマーです。当然、乗っている騎獣は馬ではなく様々な従魔です。ジェムモンスターや魔獣はもの凄く脚が速く、前回前々回の三周戦では、魔獣使いの皆様が上位をほぼ独占しました。どちらも素晴らしい速さでしたからね」

 改めて説明する司会者の言葉に、会場のあちこちから、確かにあれは速かった、とか、あんなの馬では相手にならないよなあ、とか、笑い声と共に俺達の名前も聞こえている。

「そこでギルド連合で考えた結果、一層早駆け祭りを面白くする為に魔獣使いの皆様専用のレースを設定しました。それがこの五周戦です。ご理解いただけましたでしょうか〜〜〜?」

 満面の笑みの司会者の呼びかけに、会場から一斉に返事が返る。

 その見事なまでの一致団結っぷりに、ちょっと、コンサート会場みたいで面白いと思ったのは内緒だ。

「ちなみに早駆け祭りの決まりで、レースに参加する際に乗る動物は、生きている動物ならばなんでもいいのですが、空を飛ぶのは禁止、走る、もしくは跳ねるのはよし。ですからね! つまり鳥に乗って空を飛ぶのは禁止です。もちろんお分かりですよね? 魔獣使いの皆様〜〜?」

 俺達に向かって突然司会者が満面の笑みでそう言う、思わず吹き出した俺達は、揃って手を挙げて大きな声で返事をして会場を大いに沸かせたのだった。

 司会者さん、心臓に悪いから、こっちにこういう振りをする時は前もって教えておいてくれって!

 手を下ろして笑いながら、思わず内心で力一杯突っ込んだ俺だったよ。

 俺は、アドリブは苦手なんだってば。


挿絵(By みてみん)

2024年11月15日、アース・スターノベル様より発売となりました「もふもふとむくむくと異世界漂流生活」第九巻の表紙です。

どうぞよろしくお願いしますm(_ _)m


今回も引き続き、れんた様が表紙と挿絵を最高に素敵に可愛らしく描いてくださいました。

そして中の口絵二枚目が、何とケンの〇〇シーンですよ!

どうぞお楽しみに!

口絵ラフをいただいて、もう、一人で大爆笑したのは内緒です

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ