表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1859/2071

お祭り会場へ!

「おはよう。準備はいいかい?」

 朝食を終えてゆっくりしているところに、軽いノックの音がして笑顔のエルさんが顔を出した。

「お出迎えだよ。今回も初日に参加者紹介があるから、それには出てもらうからね」

「うわあ。またあの小っ恥ずかしい参加者紹介を聞かされるのかよ」

 あの司会者さんの暑苦しい選手紹介を思い出し、思わずそう言って顔を覆う。

「あはは、まあ言われる方は確かにそう言いたくなるだろうね。だけど、あの参加者紹介は街の人達には大好評なんだよ。君達も開き直って楽しんでおくれ」

「そう出来ればいいんですけどねえ。俺は、村人その一くらいの扱いが身の丈に合っているんですって」

「まあ、そう思うのは自由だよね。実際どうかは別にしてさ」

「いやいや。エルさんは俺をなんだと思っているんですか。俺的には、もっと扱いは地味でいいんですって!」

「まあ、そう思うのは自由だよね。実際どうかは別にしてさ」

 さっきと全く同じセリフをもう一回笑って言ったエルさんは、一つ深呼吸をしてから部屋に集合している皆を見た。

「では行きましょうか。参加者紹介の後は、レースを見るなら特別観覧席に案内するし、休みたければホテルへ戻ってもらっても構わないよ」

 笑顔のエルさんの言葉に、笑ったアーケル君が右手を挙げる。

「はあい、俺はせっかくだから初日のレースを見たいです! レースの観覧希望者は手を挙げて〜〜!」

 アーケル君の呼びかけに全員が一斉に手を挙げる。もちろん、俺も手を挙げたよ。

「了解だ。じゃあ観覧席を準備しておくね。では行こうか」

 エルさんの言葉に頷き、それぞれの従魔達には出来るだけ小さくなってもらって、まずは全員揃って厩舎へ向かった。



「マックス! いよいよ祭りの始まりだぞ。まあ、今日は参加者紹介だけで、あとはお前はテントで留守番だけどな。おお、ピカピカだな」

 もうこれ以上ないくらいにピッカピカな毛艶のマックスを見て、俺は笑いながら駆け寄ってその大きな顔を抱きしめてやる。

「はい! いよいよですね。今回も絶対に勝ちましょうね!」

 ご機嫌で尻尾扇風機状態のマックスにそう言われて、笑いながら俺も頷く。

「でもまあ、勝負は時の運。しかも今回は魔獣使いの人数も倍増どころじゃあないもんな。正直言って勝てる気がしないよ」

 ため息を吐きながらそう言うと、抱きしめていたマックスが首を振って俺の腕をごく軽く甘噛みした。

「ご主人が今からそんな弱気でどうするんですか! 相手が誰であろうと絶対に勝ちますよ!」

「あはは、マックスに叱られたよ。そうだな。絶対勝とうな」

 グイグイと額を押し付けられて慌てて踏ん張り、もう一回力一杯大きな頭を抱きしめてやってから俺は笑ってマックスの首元を叩いた。

 それから、同じくらいピッカピカになったニニ達も順番に撫でてやり、それぞれの背中に小さくなった従魔達を乗れるだけ乗せてやる。

 何しろ、ホテルの中の厩舎にいてさえ、大はしゃぎしている街の人達の声が聞こえるんだから、従魔達の安全の意味でも、ニニ達に乗せてもらうのはいいと思うぞ。

 マジで、前回、前々回の早駆け祭りとはなんと言うか街の人達の熱量が違う気がする。



「では、いってらっしゃいませ!」

 厩舎のスタッフさん達に見送られた俺達は、エルさんの先導でホテルの騎馬を連れている時専用の出口から外に出て行った。

 その瞬間、ものすごい大歓声が沸き起こり俺は思わずマックスの首にしがみついたよ。

 ハスフェル達でさえ一瞬飛び上がっていた。

 リナさん達をはじめとする今回が初参加の人達は、大歓声に飛び上がった後、あまりの街の人達の興奮っぷりを見て揃って呆然としている。

「じゃあ、それぞれの騎獣に乗ってくれるかい。ここからは護衛がつくけど、騎獣の上にいてくれる方が安全だからね」

 エルさんの言葉が合図だったみたいで、大きな槍を持った軍服を着た人達や、見覚えのある冒険者の人達が一斉に集まってきて俺達の周囲を取り囲んでくれた。

 その中に、俺達が最初に街へ来た時に冒険者ギルドまで護衛してくれた冒険者の人達がいて、思わず笑顔で手を振ったよ。皆、苦笑いしつつ手を振り返してくれた。



「それじゃあ会場までパレードだな」

 大きなため息を吐いた俺はそう呟き、勢いをつけてマックスの背に飛び乗った。

 一気に視界が高くなり、また大きなどよめきと大歓声が沸き起こる。

 俺やハスフェル達の名前を呼ぶ声。もちろん、今回初参加の人達の名前もあちこちから聞こえている。

 意外に人気だったのがリナさんとレニスさん。

 どうやら女性の参加者は貴重らしく、あちこちから野郎どもの熱い歓声が上がっていたよ。

 最初こそ緊張しているのか俯きがちだったリナさんやレニスさんも、あちこちから名前を呼ばれて、嬉しそうに笑って手を振っていたよ。

 そして、もう会場に着いた頃には俺だけじゃあなく、マジで全員のHPが一桁になっていたのだった。

 応援されてHPが下がるって、どんなデバフだよって、割と本気で思った俺だったよ。

 うん、五周戦が今日じゃあなくてよかった。明日は二日目だから、ここまで大騒ぎにはならない……よな?


挿絵(By みてみん)

2024年11月15日、アース・スターノベル様より発売となりました「もふもふとむくむくと異世界漂流生活」第九巻の表紙です。

どうぞよろしくお願いしますm(_ _)m


今回も引き続き、れんた様が表紙と挿絵を最高に素敵に可愛らしく描いてくださいました。

そして中の口絵二枚目が、何とケンの〇〇シーンですよ!

どうぞお楽しみに!

口絵ラフをいただいて、もう、一人で大爆笑したのは内緒です

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
ケン(明日は二日目だから、ここまで大騒ぎにはならない……よな?) 確実に大騒ぎになるよ!(笑) 同じくHP一桁になってるクーヘンとの再会の回をお待ちしてます♪
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ