レッツ焼肉〜〜!
「うわあ、なんだよこれ。口に入れたら肉が溶けたぞ。柔らかいのにしっかり味があって最高に美味い!」
「だよな。めちゃくちゃ美味い!」
マールとリンピオは、焼いた岩豚の肉を口に入れるなり絶句して目を見開き、しばしの沈黙の後に感動したようにそう言ってお互いの背中をバンバンと叩き合っていた。
「まだまだあるから、しっかり食べてくれていいぞ。世間では貴重な肉らしいけど、俺のところでは普通に皆食べているからさ」
焼き上がるまでもうちょいな岩豚の肉をひっくり返しながら、笑った俺がそう言ってまだまだ山積みになっている各種お肉を指さして見せる。ちなみにこれは、一面クリアーされた後に追加で出した肉だよ。
「あの、本当にこんなに食べていいんですか?」
「世間の岩豚の価格って、もしかしてご存じありませんか?」
すっごく遠慮がちにそう聞かれて思わず吹き出す。
「いやいや、バイゼンにいた時にギルドマスターからも力説されたから世間のこれらのお肉の値段は知っているよ。でも、この肉ってどれも別にお金を出してお店で買ったわけじゃあ無くて、俺の従魔達が狩りに行って確保してきてくれたものなんだよ。だから俺が出したお金ってギルドに解体依頼をした時の分くらいだから、総額にしても微々たるもんなんだよ。だから遠慮は無用だって」
実際には、ギルドの買い取り分があったりするから、どの解体費用もほぼ払っていないんだよな。
「ええ、これを従魔達が狩ってきてくれたんですか?」
「岩豚だけじゃあなくて、こっちのハイランドチキンやグラスランドチキンなんかもですか?」
これまた揃って驚く二人の言葉に俺が笑って頷くと、部屋の隅にもふ塊になっていた従魔達が揃ってドヤ顔になっていたよ。
「す、凄いですね。さすがです」
「では、お言葉に甘えて遠慮なくいただきます」
顔を見合わせてうんうんと頷き合い、揃って俺に一礼してからそう言った二人は、嬉々として追加の岩豚の肉とハイランドチキンとグラスランドチキンのぶつ切り肉を鉄板に並べ始めた。ううん、清々しいくらいに肉しか無いぞ。
笑った俺は、とりあえず焼けた岩豚の肉を全部お皿に取り、少し考えて追加の岩豚の肉をがっつり鉄板いっぱいに並べてから、ちょっと肉が焼けて脂がしみ出てきたところでそこに玉ねぎとキャベツをたっぷりと投入した。
「この、岩豚の脂で焼いた野菜がもう最高に甘くて美味しくなるんだよな。ううん、焼き上がりが楽しみだ」
彼らに聞こえるようにわざと少し大きめの声でそう呟くと、当然聞こえた二人が揃って驚いたように俺を見てから俺の鉄板を見た。
岩豚のお肉と並んで、タマネギとキャベツがジュウジュウと賑やかな音を立て始めている。
顔を見合わせた彼らは無言で頷き合い、リンピオが慌てたように立ち上がって野菜各種もがっつり取って来たのだった。
よしよし、好きなだけ肉食っていいから野菜も食え。
ちなみに、岩豚の脂で野菜を焼けばこれまた美味しくなる事を知っているハスフェル達が新人コンビやアルクスさん達にもそれを教えたらしく、今回は野菜各種もかなり減っている。
レニスさんの鉄板は、岩豚も焼いているけど全体に見ると鶏肉各種と野菜が多めだ。とはいえ、他の人達に比べたら肉も野菜もかなり控えめな量しかない。
「レニスさん、遠慮なく食べてくださいよ」
心配になった俺がそう声をかけると、レニスさんはこれ以上ないくらいの笑顔で首を振った。
「ありがとうございます。充分過ぎるくらいに頂いていますのでご心配なく。一度にあまりたくさんは食べられないので、ゆっくりいただきます」
「それならいいです。どうぞゆっくり食べてください」
笑ってそう言ってくれたので俺も笑顔でそう言い、皆の鉄板を見る。
新人コンビやアルクスさん達も、山盛りに取った肉だけでなく野菜もかなり食べてくれているみたいだ。
もちろん、ビールをはじめとしたお酒各種もかなり減っているみたいで、肉焼きをシェルタン君に任せたムジカ君が、追加のお酒を氷が入った木桶にせっせと突っ込んでくれていたよ。
そんな彼らを見て満足した俺は、滲み出てきた岩豚の脂にキャベツと玉ねぎをせっせと絡ませたのだった。
「はあ、もう腹一杯だ」
いつもながら少食な俺は、早々に焼肉戦線から離脱してのんびりと白ビールを飲んでいる。
「相変わらずお前は少食だな。そんな量で本当に足りるのか?」
「そうだぞ。主催者のお前が食わないでどうするんだって」
黒ビールの入ったグラスを手にしたハスフェルと、赤ワインの入ったグラスを手にしたギイが、そう言いながら俺の左右の空いた席に座る。グラスと反対側の手には、何故か岩豚の生肉が山盛りになっている。
「いや、もうマジで充分食ったって。まだ食えるなら、俺に構わずどうぞ食ってください!」
顔の前で手を振りながらそう言うと、笑った二人が俺の鉄板に岩豚の肉を並べ始めた。
「だから、俺はもう腹一杯だって! ああ、もう注がれたら飲まないわけにはいかないじゃあないか〜〜」
ギイが取り出した白ビールの瓶の栓を手早く開けて、空になっていた俺のグラスに当然のように注ぐ。
止め損なった俺は、苦笑いしながら満杯になったグラスを手に取る。
「愉快な仲間達にカンパ〜〜イ!」
「愉快な仲間達にカンパ〜〜イ!」
笑った俺の乾杯の言葉に、二人だけでなく周りにいた皆も笑顔で乾杯してくれた。
さらに追加のビールが注がれて、焼けた肉がお皿に置かれる。
笑って肉を食っている間にまた飲んだはずのビールが復活していて、その辺りからだんだん俺の記憶が途切れていったのだった……あれ?