街へ行くぞ〜〜〜!
「おはよう。今日もいい天気みたいだな」
「おはようございます!」
従魔達を引き連れてリビングへ向かうと、もう俺以外の全員が集合していて揃って笑顔で挨拶を返してくれた。
「おはよう、今日は自分で起きてきたな。そろそろ起こしてやろうかって話していたところだよ」
笑ったハスフェルの言葉に、俺は笑いながらさっき噛まれた場所を順番に指で示した。
「今朝も、従魔達が張り切って起こしてくれたよ。冗談抜きで、身がもげたかと思ったくらいに痛かったよ。あれであざが出来ていないって言われても、信じられないって」
「どれどれ? ふむ、特に何もないぞ?」
オンハルトの爺さんが笑いながら俺が示した部分を見てくれたが、どうやら本当に大丈夫みたいだ。
「君の従魔達が、君を傷つけるような事をするわけないでしょうが。そこはちゃんと信頼して大丈夫だよ」
呆れたようなシャムエル様の言葉に、それもそうかと妙なところで納得した俺だったよ。
いつもの作り置きの朝食メニューで食事を済ませ、おかわりのコーヒーを飲みながらこの後の事を考えるとついため息が漏れる。
「あの、ケンさん達には極力ご迷惑をかけないようにしますので、ホテルへ着いたら部屋で待っていてください。まずは私が話してみます」
真顔のレニスさんにそう言われて、俺は思わずハスフェル達を見た。彼らも真顔でレニスさんを見ているから、考えている事は同じなのだろう。
「本当に大丈夫ですか?」
「大丈夫ですよ。それに正直に言うと、彼らはケンさんの事をもの凄く以前から気にしていましたから、戻ったら間違いなく、今までどうなっていたのか、何をしていたのかって絶対に事細かに聞かれると思いますよ」
笑いながらそう言われて、思わずシェルタン君をこっそり横目で見てしまった俺だったよ。
「ううん、まあ俺達が彼らと会ったのは、あの衆人環視の中での一度だけだからなあ……」
あの親の仇かってくらいのガン睨みを思い出して、割と本気で遠い目になる。
「もし何かあったらすぐに駆けつけますから、そこは遠慮なく助けを求めてください。まあ、従魔達がいるから大丈夫だろうとは思うけど、やっぱりなあ……」
だけどまあ、少なくとも彼らとそれなりの期間の付き合いである彼女がそう言うのなら、まずは任せてみるか。
無言で顔を見合わせた俺とハスフェルは、うんうんと頷き合って残っていたコーヒーを飲み干したのだった。
「ご苦労さん。じゃあ、片付けたら出発だな」
跳ね飛んで戻ってきたスライム達を順番におにぎりにしてやり、スライムが渡してくれたイチゴを一口で食べた。
実は食事をしながら思いついて、スライム達に急ぎお願いして裏庭と温室で熟しているイチゴとさくらんぼをがっつり収穫しておいてもらったのだ。
だって、しばらくここには戻って来られないから腐ったりしたら大変だしさ。
まあ、毎日植木屋さんのスタッフさんが来てくれているらしいから、その辺りは大丈夫なんだろうけど、すっごく美味しかったから持っておきたいしね。
聞けば相当の収穫があったみたいなので、いくらかはまとめてクーヘンとバッカスさんのお店に差し入れをして、残った分は俺達も食べるしベリー達にも食べてもらう予定だ。
ううん、時間停止の収納様々だね。
「さて、それじゃあ行くか。はあ、きっとまた大騒ぎになるんだろうなあ」
立ち上がった俺の呟きに、ハスフェル達やランドルさんも苦笑いしていた。
逆に、リナさん一家やアルクスさん達、それから新人コンビとレニスさんは、ワクワクって感じだ。
「言っておくけど、君達だって街へ行ったら大騒ぎだと思うぞ〜〜」
からかうようにそう言ってやると、そんな事ありませんって、と、揃って言われてちょっと遠い目になったよ。
だから〜〜〜君達、全員揃って早駆け祭りを甘く見ているよ。
「戸締り完了! じゃあ行くぞ〜〜!」
しっかりと戸締りをして最後に玄関の鍵をかけた俺は、そう言って居並ぶ仲間達を見た。
「では、全員騎乗! ホテルハンプールへ無事に着けるように祈っててくれ」
俺の若干諦めの漂うその言葉に全員が揃って吹き出し、大爆笑になったのだった。
「だから大丈夫ですって」
「だって、俺達ここへ来るまでは、普通に街の中で過ごしていたんですからね」
「まあ、たまに冒険者の人や街の人に頑張ってって声を掛けられたくらいですから」
新人コンビの言葉にボルヴィスさん達やレニスさんも笑って頷いている。
だから〜〜〜以下同文だよ!
って事で、諦めのため息を吐いた俺もマックスに飛び乗り、そのまま何となく俺を先頭にして三列に並び、従魔達を引き連れて街へ向かったのだった。
もう、従魔を引き連れた俺達を見て、街の人達や観光客の人達、それから冒険者達がどれほど大騒ぎしたかは……もう、忘れたい記憶のトップになるくらいだったよ。
なにしろホテルハンプールに到着した時点ですでに昼前。別荘を出たのは、ゆっくりしていたとは言っても朝食食べてすぐだったんだぞ。
その結果、もうとにかく今日はそのままそれぞれの部屋で休もうと満場一致した結論に達したくらいには、全員揃って心底疲れ切っていたのだった。
いやあ、本当にこの早駆け祭りにかける街の人達の情熱というか思い入れというか、楽しみっぷりというか……マジで凄いんだって再認識された時間になったよ……。
お疲れ様〜〜〜〜!