レッツバーベキュータイム!
「準備完了〜〜じゃあ外の様子を見に行くとするか」
いつも以上にガッツリ大量に仕込んだ肉や野菜を全部まとめて収納した俺は、スライム達があっという間に綺麗に片付けてくれた広い厨房を見まわし、小さく吹き出してから顔を上げた。
いやあ、冗談抜きで本当にスライム達無しの生活なんてもう考えられないって。
スライム達を引き連れて、鞄を手に厨房を後にした俺はそのまま外へ向かった。
「おお、ほぼ終わってるな」
庭に出たところで、目に飛び込んできたその光景にもう一回吹き出した俺だったよ。
何しろ、広い庭の一角に見事なバーベキュー会場が出来上がっていたんだからさ。
今回も、いつも使っている大型のバーベキュー台が二台と、業務用コンロがセットされた大きな網焼きの台もある。もちろん、塊肉を焼く用の台も二台セットされているよ。
ずらっと並んだ焼き台の奥には、大きな組み立て式のテーブルと椅子が何台も余裕を持って並べられている。
椅子も明らかに人数分以上あるから、まあ好きに席を移動しながら食べていいって事なんだろう。
「ああ、そろそろ呼ぼうかと話していたところだ。どうだ、これだけあれば充分だろう?」
ちょとドヤ顔のハスフェルの言葉に、俺は笑顔でサムズアップを返してやった。
準備万端整ったバーベキュー会場を前に、それぞれの席についていた皆を見回した俺はにんまりと笑ってサクラが入ってくれた鞄に手を突っ込んだ。
「じゃあメインの肉を出しますよ〜〜〜」
若干もったいをつけてそう言い、用意していた塊肉を取り出す。
「こっちは普通の牛肉とグラスランドブラウンブルの熟成肉の塊肉だよ。ええと、誰が焼いてくれるのかな?」
「はあい、塊肉の焼き台は、俺達が担当しま〜〜す!」
1メートルくらいはありそうな鉄串を手に、満面の笑みのアーケル君達がそう言ってくれたので、笑って頷き巨大な塊肉と一緒に仕込んであったいつもの塊肉用の赤ワインソースを瓶ごと渡しておいた。
今回は草原エルフ一家総出で担当してくれるらしく、リナさん夫婦と三兄弟に分かれて、それぞれの肉を焼き始めてくれた。
「じゃあ出すぞ〜〜〜ひれ伏せ〜〜岩豚様なるぞ〜〜〜!」
笑ってそう言い次に取り出したのは、今回のメイン、大量の岩豚の肉が山盛りになったバットだ。
当然、それを見た全員の歓声とともに拍手が沸き起こる。
肉焼きを担当してくれているアーケル君達が、岩豚岩豚と声を揃えて大喜びしていた。
「でもってグラスランドブラウンブルの熟成肉で、こっちがハイランドチキンとグラスランドチキン。水鳥もあるのでお好きなのをどうぞ。それからこっちはレッドエルクだぞ〜〜!」
次々に取り出す肉の数々に毎回大歓声と拍手が沸き起こってる。
キャベツや玉ねぎなどの野菜を出すと、お付き合い〜って感じのゆる〜い歓声と拍手だったのには笑ったよ。
お前ら、好きなだけ肉食っていいから、野菜も食え!
ちなみに今回も、ハスフェルとギイとランドルさんとボルヴィスさんがバーベキューの台を、オンハルトの爺さんとアルクスさんが網焼きの台を担当してくれたので、もう俺は、ここからは肉の追加を出す以外は何もしない宣言をして食べるのを担当させてもらった。
新人コンビとレニスさんは、飲み物担当をしてくれているらしく、例の大爆笑ラベルの地ビールをガッツリ冷やしてくれている。
って事で、各種肉が大量に鉄板や網焼きの上に並べられ、焼けるのを待っている間に全員のグラスにまずはビールが注がれる。今回はハスフェル達もワインじゃなくてビールで乾杯するみたいだ。
「では、僭越ながら、優秀な魔獣使い達の益々の活躍を祈って乾杯! 愉快な仲間達最高〜〜!」
笑った俺の乾杯に、目を輝かせた全員が手にしたグラスを高々と掲げた。
「愉快な仲間達最高〜〜!」
「あ、じ、み! あ、じ、み! あ〜〜〜〜〜っじみ! ジャカジャカジャン!」
久々の正統派味見ダンスで高速ステップを踏むシャムエル様。もちろん手には大きなお皿がある。そして、それを見て即座にすっ飛んできてシャムエル様のダンスを完コピして踊り出すカリディア。
最後は二人揃ってぴたりと決めのポーズだ。
「お見事〜〜〜じゃあ、取ってくるからもうちょっと待ってくれよな」
そろそろ肉が焼けはじめているので、笑ってそう言い空のお皿を手にまずはバーベキュー台へ向かう。
「そろそろ塊肉が焼けますよ〜〜取りに来てくださ〜〜い」
ガッツリ岩豚の肉をもらったところでアーケル君の声が聞こえて、慌ててもらった分を一旦収納してから塊肉をもらいに行ったよ。
それから、バーベキュー台の端っこで岩豚の脂にまみれていい感じに焼き上がっていたキャベツと玉ねぎもガッツリといただき、適当に掴んで栓を開けてもらった白ビールの瓶を持って席に戻る。
「うわ、俺のだった。でもまあ、味に違いはないよな」
絶対俺より男前でドヤ顔な自分のラベルを見て吹き出し、もう気にせずにそのままマイグラスに注ぐ。
まあ、ラベルを手で隠すみたいに持って注いだのは当然だよな。
それから、取ってきた肉をお皿ごと全部まとめて敷布の上に並べ、まだ半分くらい残っている自ビールの瓶とマイグラスも並べる。
「ええと、無事に新人さん達の紋章の授与が終わりました。しかも、皆とっても優秀みたいですぐに従魔達の言葉が聞き分けられたみたいです。昼はお祝いのバーベキューパーティーです。最初のはお供えしますので、あとはどうぞお好きに取ってください。早駆け祭りまで後少し、実際に見てくれると嬉しいけど、忙しいって言っていたから今回は無理かな?」
帰る時に、そんな事を言っていたのを思い出して最後に小さな声でそう言い、手を合わせて目を閉じる。
いつもの収めの手が俺の頭を何度も撫でてくれるのを感じて顔を上げると、目の前に来たいつもよりもテンション低めな収めの手は、まるで謝るかのように手を合わせてそれを上下させた。これは明らかに、今回は無理って意味だろう。
「いやいや、忙しいのなら無理はしないでくれって。そっちから、こっちの世界は見えるんだろう? そこから応援してくれれば充分だって」
慌てたようにそう言って顔の前で手を振る。
うん、祭り見物よりも神様のお仕事が優先だって。
もう一度俺の頭を優しく撫でてくれた収めの手は、そのあとはもういつも通りに大はしゃぎ状態で肉を撫でたりお皿を持ち上げたり、それから並んだ地ビールの瓶を次から次へと撫で回しては持ち上げるふりを始めたのだった。
「まあ、彼女達も色々と忙しいからね。でも、ちゃんと見てくれているからさ」
慰めるみたいな優しい声のシャムエル様にそう言われて、苦笑いしつつ頷いた俺だったよ。
よし、食うぞ!