昼食と午後からの予定
「ええと、じゃあもう皆充分にテイムして従魔の戦力強化も成ったみたいだから、少し遅くなったけどまずは何か食べよう。それで街へ戻りがてらどこか近くにジェムモンスターの出現場所があれば、新しい子達の戦力確認の意味も込めてちょっと戦ってみるか」
「ああ、いいな。実を言うと腹が減っているなと思っていたんだ」
「確かに腹が減ったな。それに、これだけテイムすれば皆、もう戦力強化は充分だろうからな」
俺の言葉にハスフェルとギイも笑って頷いている。そうだよな。お前らの腹時計は本当に正確だからな。
それに改めて今はもふ塊になってくつろいでいる全員の従魔達を見て、俺は密かに感心していた。
何しろ、レニスさんはサーバルにキツネ、オオワシにハクトウワシまで、なんと今回の遠征で合計九匹になるまで従魔をテイム出来たんだからな。
ムジカ君とシェルタン君も、それからボルヴィスさんやアルクスさんもジャガーやタイガーなど、相当に強い従魔を数多く従える事が出来たから、もう戦力強化としてはひとまず一段落でいいだろう。
となると、後はもう祭りまでのんびりして良いと思った俺は間違っていないよな。
それに、別荘の裏庭のフルーツ狩りは、レニスさんや新人コンビ達にも是非ともやらせてあげたい。
幼少の頃ひどい虐待を受けていたシェルタン君とレニスさんは、間違いなくそんな楽しいイベントはやった事がないだろうし、ムジカ君だって十歳でお父さんを亡くしたのなら、あまりそういった娯楽的な事はやった事がないかもしれないからな。
内心でそう考えて、サクラが入ってくれた鞄を手にした。
「ええと、ここで食っても大丈夫かな? それとも移動する?」
そのあたりはよく分かっていない俺は、素直にそう言ってハスフェル達を振り返った。
「そうだなあ。ここはちょっと林に近いから、林から何か出てきたら避けようがない。もう少し下がってあっちの草原へ行けば大丈夫だな。食事をしている間の周りの警戒は、従魔達に頼めばいいだろう」
ハスフェルがそう言ってシリウスを進ませたので、俺達もそれぞれの騎獣に乗ってその後に続いた。
昼食は、それぞれのスライム達が椅子役やテーブル役をしてくれたので有り難くそこに座り、まだまだあるお弁当各種を俺が出して好きに取ってもらった。
これはシェアして食べる事も出来るんだって説明してやると、並んで座った新人コンビとレニスさんは、三人仲良くお互いのお弁当を相手に見せておかずのやり取りをしていた。
ううん、なんというか……青春だね。
俺は、バイゼンの街で手に入れたカフェのテイクアウトセットみたいな、珍しく野菜がたっぷり入ったハンバーガーとフライドポテトのセットを美味しくいただいたよ。
シャムエル様には、特別製タマゴサンド色々詰め合わせ弁当を出してあげたら、喜びの余りもの凄いスピードで歓喜のダンスをひとしきりカリディアと一緒に踊り狂って、疲れ果てて地面に倒れてそれでもまだ転げ回っていたよ。
「はいはい、嬉しいのは分かったからちょっとは落ち着け。ええと、ホットオーレが欲しいからミルクを沸かすけど、飲みたい人は手を上げて〜〜!」
取り出した小さい方の机の上に簡易コンロと片手鍋を取り出しながらそう言うと、ハスフェルとギイ、それからリナさんとアーケル君が即座に手を上げ、それを見て、やや遠慮がちにレニスさんとシェルタン君も手をあげた。
ちなみに彼らがコーヒーを飲む時は、いつもと違ってお砂糖も出してあげているよ。
「じゃあこの人数なら、使うのは大きい方の鍋だな」
点呼を取って笑った俺は、小さくそう呟いて大きい方のお鍋を取り出し、たっぷりのミルクを入れて火にかけたのだった。
ポカポカの春の日差しの下で食べるお弁当は最高に美味しかったよ。
大満足で食事を終えた俺達は、少し休憩してその場を撤収した。
「で、何処へ行くんだ?」
戦力的には、間違いなくどんなジェムモンスターでも魔獣でも余裕で対応出来るだろうが、新人コンビやレニスさんもいるので、あまり危険なところへ行くのはNGだよ。
「ううん、キラーマンティスかピルバグ、あとはロックトード辺りなら近くに幾つか出現場所はあるな」
「後は、肉食系のジェムモンスターが出る場所は幾つかあるが、あっちは出現数そのものが少ないし出現範囲も無駄に広いから、この顔ぶれで狩りに行くにはちょっと不向きだな」
顔を見合わせるハスフェルとギイの言葉に。ボルヴィスさんとアルクスさんも困ったように頷いている。
「後は、誰かさんが大好きな芋虫系の出現場所が……」
「絶対無理〜〜〜! そこへ行くなら俺は辞退します!」
力一杯叫ぶと、ハスフェル達とリナさん一家、それから新人コンビが揃って吹き出す。
「相変わらずだなあ、お前は。じゃあまあ、従魔達が間違いなく喜ぶだろうから、まずはピルバグかキラーマンティス辺りから行ってみるか」
笑ったハスフェルの言葉に皆も笑って頷き、まずはピルバグの出現場所へ向かったのだった。
ここの出現数もかなりあったらしく、うじゃうじゃ湧いて出るピルバグを見た猫族軍団の狂喜乱舞っぷりはそりゃあもう凄くて、その結果またしても従魔達大はしゃぎのピルバグサッカー大会が繰り広げられる事となった。
で、その結果、身の危険を感じた俺達は早々に戦線を離脱して午後のお茶タイムとなったのだった。
いやあ、従魔達の大はしゃぎっぷりに、見ていた俺達は大爆笑させてもらったよ。
なんと言うか、ピルバグ、ごめん! って感じだったね。