ハイタカとハクトウワシのテイム!
「お前の名前は、アードラーだよ。よろしくな、アードラー」
お空部隊と猫族軍団の見事な連携で、またしても地面に追い落とされて確保されたオオワシよりもやや小柄なハイタカを、これまた易々とテイムしたシェルタン君が満面の笑みでそう命名する。
「はい、名前をいただけてとても嬉しいです。いつでもご主人を乗せて飛びますので、必要な際にはどうぞ遠慮なく言ってくださいね」
普段のファルコよりもちょっと小さいくらいになって、目を細めて嬉しそうにそう言ったアードラーの言葉を慌てて通訳してやると、嬉しそうに笑ったシェルタン君はアードラーに抱きついていた。
見ると、アードラーはファルコよりもかなり細身で全体に小柄だ。オオタカとハイタカだと、同じタカでも元の体型自体もちょっと違うみたいだ。
密かに感心していると、目を輝かせたムジカ君が横からアードラーを覗き込んだ。
「よろしくなアードラー。俺はムジカ。こいつとコンビを組んでいるからさ。俺の従魔の鳥達とも仲良くしてくれよな」
「そうなんですね。よろしくお願いします。ご主人のお友達。もちろん、翼を持つ仲間がいれば私も嬉しいです」
軽く羽ばたいてそう言ったアードラーは、上空を見上げてからシェルタン君に頬擦りして、それから大きく羽ばたいて一気に上昇していった。
それを見て、レニスさんの肩に留まっていたオオワシの八号も、レニスさんに頬擦りしてから上空へ飛んでいった。
さっきの言葉も通訳してやると、ムジカ君は満面の笑みで何度も頷いていたよ。
そして最後の一羽になったハクトウワシだが、ここから見ても大きさが先ほどまでの二羽とは桁違いなのが分かる。
巨大化したお空部隊の子達でさえ、小さく見える子がいるくらいだ。
しかも巨大化したファルコやオオワシ達でさえ、どうやら攻めあぐねているみたいでさっきのように簡単には地上へ降りてこない。
「うわあ。あれ冗談抜きで確保出来るのか?」
若干不安になりつつそう俺が呟いた時、にんまりと笑ったアーケル君が剣を抜いた。
「じゃあ、最後の一羽だな。俺が落としてやるから頑張ってテイムしてくれよな」
ムジカ君を見てからそう言って一つ深呼吸をしたアーケル君は、空を見上げてまだ旋回しているお空部隊の面々に手を振った。
「おおい、今から俺が術でそいつを地上へ落とすから、お空部隊の子達は巻き込まれないように逃げてくれよ〜〜! 真上に術が開放されるからな〜〜」
大声でそう叫ぶと、応えるかのようにお空部隊の子達が次々に大きく鳴いて下がり、ハクトウワシの包囲網をググッと広くした。
それを見て即座に包囲網から逃げようとしたハクトウワシだったが、何故か急に悲鳴のような鳴き声を上げて翼を広げた状態のままで地面に落ちてきた。
しかもその時に、羽を広げた鳥のおもちゃがそのまま落っこちてくるみたいに、ハクトウワシは全く動いていないから、なんとも不自然な動きだ。しかも無抵抗で落ちるにしては速さがゆっくりすぎる。
「なあ、アレってもしかして……」
考えたくないけど、あの状況は間違いなく、アレだよ。
俺がドン引きしつつそう呟くと、近くにいたハスフェルとギイも同じくらいにドン引きしつつ何度も頷いていた。
「そうだな。例の過剰重力の……空中版か?」
「みたいだなあ。ハクトウワシは完全に身動きが取れていないみたいだぞ」
「一応、息はしているようだなあ」
「まあ、息はさせておかないと、テイムするのに殺してどうするんだよって」
そう言いながら俺達の視線は、地面に落っこちてきて、翼を広げた体勢のままに空気に押さえつけられているハクトウワシに釘付けのままだ。
何が起こっているのかすら分からずにいるのだろう。地面に這いつくばったまま目を白黒させるハクトウワシ。
「解放するから、確保はよろしくな! よし!」
大声でアーケル君がそう言って剣を下ろした直後、巨大化したティグとヤミー、それからニニとカッツェが四方から同時に襲いかかった。
咄嗟に羽ばたいて逃げようとしたハクトウワシだったが、あっけなくニニ達に押さえ込まれてしまい直後に悲鳴のような鳴き声が響いた。
しばしの沈黙の後、俺を乗せたマックスが振り返ってこっちを見た。
「ご主人、あれでもう大丈夫みたいですよ」
「お、おう。ムジカ君。もう大丈夫らしいぞ」
俺がマックスの言葉を通訳してやると、目を輝かせたムジカ君が走り出てハクトウワシの頭を押さえつけた。
彼の手が小さく見えるくらいにハクトウワシの頭が大きい。
「俺の仲間になれ!」
やや緊張しているのだろう。普段よりもちょっと高めのムジカ君の言葉にはしっかりと力がのっているのが分かって俺も笑顔になる。
「はい、貴方に従います」
目を閉じて答えたハクトウワシが、静かな声でそう答える。
ムジカ君がつけた名前はヘルツェ。なんでも、ムジカ君が子供の頃に好きだった物語の英雄の名前なんだって。
白髪の剣士で、剛力の持ち主だったらしい。
成る程。白髪の戦士なら、確かにハクトウワシにはぴったりの名前だよな。
紋章を刻まれ名前を貰って喜ぶヘルツェに、巨大化してもらって満面の笑みで抱きつくムジカ君だった。
ううん、これでレニスさんも新人コンビも相当強い従魔をしっかりと確保出来た事だし、そろそろテイムは終了にしてもいいかもな。
もうこの後は、別荘へ戻ってのんびり風呂に入ろう。
そう考えてにんまりした俺は、不意に聞こえたベリーの念話に、驚いて飛び上がる事になったのだった。
「あと一羽、ハクトウワシを確保していますが、どうしますか? 誰かテイムなさいますか?」ってね。