今後の予定?
「ううん。あの様子を見ていると、番号呼びもありかなって気がしてきたぞ」
「確かにそうだな。まあ分かりやすいし、別にそれもありって事で良いんじゃあないか?」
笑ったハスフェルとギイの言葉に、同じ事を考えていた俺も笑顔で振り返る。
「だよな。従魔達も喜んでいるみたいだし、それはそれで良いと思うぞ。もう、ここまできたら潔くこのまま番号呼びを続けてもらおう。どこまで伸びるか楽しみにしておくよ」
俺の言葉に、二人が小さく吹き出す。
「そうだな。では、二桁目指して頑張ってもらおう」
「それは面白そうだ。じゃあ彼女には二桁目指して頑張ってもらうとするか」
「無茶言わないでください。でも、厚かましい願いなのは重々承知していますが、サーバルは出来ればテイムしたいです。なので、その……どうかお助けください」
俺達の声が聞こえたらしく、やや戸惑いつつもそう言って俺達に向かって頭を下げる彼女の言葉に、全員が笑顔になる。
「もちろん喜んでお手伝いしますよ。お任せください」
俺が何か言うより早く、シェルタン君が張り切ってそう言って胸を逸らす。
「はいはい、頑張れ〜〜〜」
完全に面白がる口調のムジカ君が笑いながらそう言い、俺達も揃って小さく吹き出したのだった。
うん、青春だね。頑張れ〜〜〜!
「とは言っても、そろそろ日が暮れそうだな。ええと、このまま野営しても大丈夫ですか? それとも、一旦街へ戻りますか?」
俺の言葉にレニスさんは驚いたように目を瞬いてから考え込んだ。
「私はどちらでも良いです。マールやリンピオ達と一緒にいたと言っても、別にお互いの行動を束縛しているわけではないので。単に、今までは私の方が一方的に彼らにくっついていたような感じでしたから」
レニスさんの言葉に、俺達は無言で顔を見合わせる。
『なあ、それって逆に、急に彼女が彼らから離れたら向こうから俺達が何か言われそうじゃあないか?』
一応、こっそり念話でハスフェル達に相談してみる。
『ううん、あいつらの様子を思い出すに、それは否定出来ないなあ。だが彼女の話を聞く限り、別に彼らと男女の関係と言うわけでもなさそうだし、そこまで拗れるとは思えないがなあ』
困ったようなハスフェルの呟きに、ギイも苦笑いしつつ頷いている。
『まあ、何か言ってきたらその時はその時だ。シェルタン君が色んな意味でやる気になっているみたいだし、いざとなったら俺達も彼に協力して彼女を守ってやろうじゃあないか』
笑ったオンハルトの爺さんの言葉に、俺も笑顔で何度も頷いたのだった。
「じゃあ、もうこのまま野営地へ行くとするか。ええと、行くとしたら、やっぱり以前にも行った草原かな?」
水場が無いけど、広くて平らな草原を思い出してそう言うと、ハスフェル達が少し考えるように周りを見た。
「ここからなら、距離的には同じくらいか。以前も行ったあの水場の無い草原か、もしくは水場がある林横の岩場のどちらかだな。だが、林横の岩場は、この人数だとちょっと広さ的に厳しいと思うぞ」
「確かにそうだな。今の顔ぶれなら、水の術を使える奴が複数いる事だし、またあの草原へ行くか」
ハスフェルの呟きに、ギイも頷きながらそう言っている。
「この人数だし狭いのは駄目だな。じゃあ、またあそこへ行くか。それならまた水場の設置をお願いしますね」
「お任せください。また大きな水場をご用意しますから!」
笑って胸を叩いたアーケル君の言葉にリナさんとムジカ君も笑顔で頷いている。
「水の術が必要ですか? それなら私も一応上位まで使えます。その、ちょっと制御が下手なんですけど……」
少し恥ずかしそうなレニスさんの言葉に、驚いた俺達全員が一斉に彼女を振り返る。
そうか、彼女の剣に青い石がはまっていたのは、やっぱり術の補助の為だったんだと納得した俺だったよ。
「上位まで扱えるってすごいじゃあないですか! でも制御が下手って?」
不思議そうなシェルタン君の呟きに、彼女が軽く右手を挙げてみせる。
その右手からジャバジャバって感じに勢いよく水が噴き出すのを見て、俺達の目が一斉に見開かれる。
「加減が本当に下手なんです。特に弱くするのが苦手でして……一応、これが出来るようになったのは、その、私を引き取った爺さんが死んで間も無くの事です。それで、これなら冒険者になれるかと思って、爺さんの家にあった古い武器や防具を持ち出したんです。詳しく聞いた事はありませんが、二人とも村の護衛のような事をしていましたからね。恐らく元冒険者だったのだと思います。あ、今の装備は自分で揃えたものですよ」
青い石のはまった剣をそっと撫でた彼女は、少し恥ずかしそうに笑った。
リナさんほどではないが、今の彼女はそれなりの良い装備を身につけている。
「村にも、周辺にも冒険者ギルドがありませんでしたからね。しばらくは、訓練を兼ねて村の外にある森へ行ってスライムやホーンラビットなんかを倒してジェムを集めていました。換金は村唯一の商店が行ってくれたので、ほぼ物々交換で食べ物や着る物を手に入れていました。あとはたまに来る商人の護衛の人に、剣の扱いを教えてもらったりしました。この子を森で見つけてテイムした話はしましたよね。その後に、森で偶然マールとリンピオと会って、彼らの後を追うようにして村を出たんです。最初は迷惑そうにしていましたが、まあそれなりに受け入れてくれたので、彼らと一緒にハンプールへ来たんです」
ここへ来るまでの経緯を教えてくれた彼女は、そう言ってため息を吐いた。
「マール達と話をして、私は、今後は独立してソロの冒険者になろうと思います。まだまだ未熟で無知な私ですが、しばらくはここの冒険者ギルドで色々教えてもらって、まずは一般常識と冒険者としての知識の勉強から始める事にします」
初心者冒険者の為の講習会や武器の取り扱いの講習会なんかもあるって言っていたもんな。確かに、ソロの冒険者になるのなら、色々と覚える事はありそうだ。未熟な術の扱いも、もしかしたら教えてもらえるかもしれないものな。
「頑張ってくださいね」
笑顔の俺の言葉に、レニスさんは嬉しそうな笑顔で頷く。
どう見ても女子高生くらいの年齢に見えて、割と本気で彼女に年齢を聞いても良いか悩んだ俺だったよ。
「それなら、早駆け祭りが終わった後に、引っ叩いたお詫びに私が術の扱いを教えてあげるわ。しばらく一緒に行動しましょうか。そっちの二人と一緒にね」
笑ったリナさんの提案に、アルデアさんも笑顔で頷いている。
「ああ、それなら俺達も協力しますよ。なあ、しばらく一緒に行動しようぜ!」
嬉しそうなアーケル君の言葉に、戸惑いつつも笑顔で頷く新人コンビ。
「ええ、良いんですか?」
こちらも戸惑うようにそう言いつつも、嬉しそうなレニスさん。
「じゃあ、今後も決まったところで移動しようか」
笑った俺の提案に皆も笑顔で頷き、俺達はとりあえず今日の野営地へ向かったのだった。