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乱獲ジェムの買取価格

 皆の食事とジェムモンスター狩りを終えた俺は、マックスの背中に乗せてもらって、揃ってのんびりと街へ向かっていた。


 街道から少し外れたこの辺りには、人影が全くない。

 うん、あの辺りが人に知られてない狩り場ってのは本当みたいだ。

「じゃあ、天気が良ければ明日も頑張って、さっきの辺りでジェムモンスター狩りかな?」

「そうだね。あの辺りには、まだ他にも地脈の吹き出し口があるから、案内するよ」

 当然のように俺の肩に座ってるシャムエル様が、嬉しそうにそう言ってくれた。

 おう、良いね、俺だけの狩り場。


 俺はふと、後ろを走って付いてくる、新しく仲間になったラパンを見た。改めて見ると……これもまたデカいなあ。

 街へ戻ったら、また注目の的になりそうだ。

 そんな事を考えて若干遠い目になったけど、俺は別に悪くないと思うから気にしない! うん、気にしない!


 その時、俺の視線に気づいたラパンが、勢いよく跳ねてマックスの背中に飛び乗って来た。

「お? どうした?」

 振り返った俺は、もう息が止まるぐらい驚いたよ。

 だって、いつの間にかラパンが、初めて見たときぐらいのちっこい角付きウサギになってたんだから。

「ええ! お前どうしたんだよそれ!」

 思わず叫ぶ俺に、ラパンは恥ずかしそうに小さな手で顔を覆った。……あ、その仕草、可愛い。

「街へ戻られるのでしょう? それなら、あんまり大きなモンスターをこれ以上連れ歩くのは、ご主人のご迷惑になるかと思いまして……如何でしょうか? この大きさなら邪魔にならないのでは?」

「おお、ラパン。最高だよ。これなら確かに大丈夫そうだ」

 手を伸ばして背中を撫でてやり、そのまま軽く掴んで俺の前に座らせてやる。

「じゃあその姿の時は、お前はここな」

「ありがとうございます、ご主人!」

 嬉しそうなラパンをもう一度撫でて、俺はシャムエル様を見た。

「なあ、ちょっと質問していいか?」

「ん? 何?」

 こっちを見るシャムエル様に、俺は前に座ってマックスの首輪にしがみついてるラパンを指差した。

「セルパンも、ラパンも大きさがいろいろ変わるし、ファルコも、デカくなれるって言ってただろう? マックスやニニも大きさは変わるのか?」

 一瞬、何を聞かれてるのか分からない、と言わんばかりに目を瞬き、それから首を傾げた。

「えっと、マックスやニニちゃんは、魔獣だから大きさは変えられないよ」

 今度は俺が目を瞬いた。

「え? どういう意味?」

 しばらくお互いの顔を見合っていたが、不意に納得したようにシャムエル様が頷いた。

「ああ、そうか。ケンはジェムモンスターと魔獣の違いを理解してないんだね」

「ええと、大きさが違うだけで、一緒だと思ってたけど、違うのか?」

「違う違う。全く違うよ。以前も言ったと思うけど、ジェムモンスターってのは、その名の通り核にジェムを持つモンスターで、魔獣っていうのは、親から生まれた生き物が、地脈の影響を受けて魔獣化した者達の事だよ」

 ああ、確かマナがどうとかって話の時に、そんな事を言ってたな。

「だから、元がジェムであるジェムモンスターは、核となるジェム自体が無事なら、ある程度は実体の大きさを変える事が出来るの。だけど、元が普通の生き物の魔獣は、成長すればどんどん大きくなるだけで、小さくなる事は出来ません! ……解った?」

「おお、成る程。凄くよく解りました」

 今の説明で、めっちゃよく解った。

「あ、それから、当然だけど、ジェムモンスターが変えられるのは自分自身の大きさだけで、ラパンが蛇になったり、セルパンが鳥になったりは出来ないからね」

「つまり、核になるジェムで、何のモンスターになるかが決定されてるって事だな」

「はい、その通り。よく出来ました!」

 嬉しそうに手を叩くシャムエル様を見て、俺も笑った。



 日が暮れる少し前に、俺たちは無事に街へ辿り着く事が出来た。

 夕方の人が多い時間帯。またしても大注目を浴びたが構うもんか。

 気にせず並んで、ようやく入れた城門で作ったばかりのギルドカードを提示した。

「おお、ギルドに加入してくれたんだな。よろしくな。魔獣使い」

 昨日と同じ兵隊が、カードを返しながらそう言って笑ってくれる。

「しばらくこの街にいるから、よろしくな」

 カードを受け取って、手を振って街の中へ入る。


 うん、相変わらず大注目なのは……気にしない、気にしない。



 ギルドの建物へマックスに乗ったままゆっくりと向かい、道沿いの店をぼんやりと眺めていて気が付いた。朝は開いてなかった店が、何軒も開いている。

 あれはどう見ても家具屋っぽいし、向こうは道具屋っぽい。

 よし、後で見に行ってみよう。

 これから先、旅をするなら折りたたみ式の椅子と机、それからテントは必須アイテムだろうからな。あ、水筒も買わないと。



 ひとまず宿泊所へ戻り、先にジェムの整理をする事にした。

「アクア、今あるジェム、全部出してくれるか」

 鞄を下ろし、椅子に座って机の上にアクアを乗せてやる。

「じゃあ順番に出すね。まずはスライムとグリーンコブラのジェムだよ」

 小さなジェムがゴロゴロと出てくる。

 数えてみると、スライムが35個、グリーンコブラが43個だった。

「なあ、ジェムって置いておくならどの辺りがいいんだろう?」

 肩に座って興味津々で覗き込むシャムエル様にそう尋ねた。まあ答えは期待していないが、単に、誰かの意見が聞きたかったんだよ。

「これは全部売っちゃっていいと思うよ。小さいのは安いけど、その分需要も高いから、まとめて売ると喜ばれるね」

 成る程。じゃあこれはそのまま全部買取に出す、と。

 広げた大きな布に、売る予定のジェムをまとめて乗せる。

 次に出してもらったブラウンホーンラビットのジェムは、大小合わせて全部で何と136個もあった。マジかよ。どんだけ狩りまくったんだって……。

 一番大きい、ボスモンスターのジェムは、高値が付くらしいので売ってみる事にした。それ以外はほぼ大きさは似たり寄ったりだ。でも、スライムのジェムの5倍ぐらいはある。

「100個を売りに出して、35個を自分用として置いておくか」

 35個をアクアに返して持っていてもらう。100個は売り物チームの布の上にまとめて置く。

 ワニもどきはブラウンクロコダイルと言うらしい。あの辺りのジェムモンスターには、ブラウンって色の名がつくものが多いらしい。確かにワニも茶色っぽかったね。

 こっちは全部で72個あった。ボスモンスターのデカいのは売りに出す。こっちも50個を売りに出す事にした。

 さてと、幾らになるのか楽しみだね。


 売り出す分のジェムを布で包んで空にした鞄に突っ込む。

「じゃあ、ジェムを売りに行って、さっきの家具屋と道具屋を見に行くからな。誰が一緒に行く?」

 鞄を手に振り返ると、マックスがいそいそと起き上がって隣に来て、ファルコが俺の左肩に留まる。そして、当然のようにシャムエル様が右肩に座った。

 それから、アクアとサクラがマックスの背中に勢いよく飛び乗ってきた。

 ニニは既にベッドで丸くなってるし、ラパンもニニの胸元に潜り込んで眠ってるみたいだ。

「女子組は留守番だな。まあ、ゆっくり寝てていいよ」

 振り返ってそう言った俺に、ニニが、仕方ないな、とでも言わんばかりにちょっとだけ尻尾で返事をしてくれた。



 隣のギルドの建物の中に、マックス達を連れて入る。

 またしても、中にいる人達からどよめきが聞こえたのは……気にしない……気にしない。

 買取と書かれた受付に並び、すぐに順番が来る。

「あの、ジェムを買い取ってもらいたいんですが、よろしいでしょうか」

 鞄を下ろしながら言うと、受付のお姉さんが、にっこりと笑って書類を取り出した。

「では、こちらに出して頂けますか」

 小さなトレーを出したので、思わず俺は首を振った。

「あの、沢山あるのでそれには乗りませんよ」

 すると、お姉さんは更に満面の笑みになり、慌てて後ろに合図を送った。

「では、こちらでお願い致します。あ、従魔もご一緒で大丈夫ですのでどうぞ」

 別の男性が出て来て、俺を別室へ連れて行ってくれた。


 おう、やる気満々なおっさんが待ち構えてるぜ。


 部屋には大きな机があり、その向こう側に座っているのは、白髪混じりの虫眼鏡を持った爺さんだった。

「ジェムの大量買取との事だが、とにかく鑑定するから出してくれるか」

 さっきとは比べものにならない大きな皿を出されて、俺は鞄からさっきの包みを取り出した。グルグル巻きにして両端をふろしき包みして何とかまとめたやつだ。

「これです。よろしく」

 包みを開いて見せると、爺さんの手から虫眼鏡が落ちた。あ、口が開いてる。

「こ、これ全部買取に出してよろしいのですか?」

 ものすごい勢いで聞かれて、俺は思わず仰け反った。

「ええ、お願いします」

 爺さんは、振り返って後ろに合図を送り、後三人、鑑定士らしき人がやって来て、次々とジェムを手にとって感心している。

 まずは俺も一緒に数を確認した。うん、数えた数通りだ、間違ってません。

 渡された、数を書き込んだ書類にサインをして返す。

 一礼してトレーを持って奥へ下がった爺さん達は、揃ってジェムを前にしばらく相談していたが、ようやく話がまとまったらしく書類を手に戻って来た。

「お待たせ致しました。鑑定内容を説明します」

 横に置かれた革の巾着を気にしつつ、俺は居住まいを正した。

「買取金額ですが、スライムのジェムが、一つ銅貨5枚。グリーンコブラのジェムが、一つ銀貨1枚。ブラウンホーンラビットのジェムは、一つ銀貨2枚と銅貨5枚。上位種は金貨2枚になります。それから、ブラウンクロコダイルのジェムですが、こちらは一つ銀貨3枚を付けさせて頂きました。こちらの上位種は非常に珍しく、金貨3枚を付けさせて頂きました」

 驚く俺に、にっこり笑った爺さんは深々と頭を下げた。

「このところ、どこもジェムが常時不足気味で、皆非常に困っておりました。これ程の数をまとめて売って頂き、本当にありがとうございます。今後もありましたら、いつでもお持ちください、一つから値を付けますので、どうぞよろしくお願いします。こちらが、今回の買い取り分、金貨51枚と銅貨5枚になります」

 手渡された革の巾着を見て、俺は驚きを隠せなかった。

 一日で、金貨50枚超えたよ。ジェムモンスター狩り……凄え。



 満面の笑みで揃ってお礼を言う爺さん達に見送られて、とにかくさっきの店へ行ってみる事にした。

 うん、道具は良いものを買おう。

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