衝撃の地ビールとのご対面!
「ギャハハ、何だよこれ!」
「ぎゃ〜〜〜、ちょっと待て!」
「うぎゃ〜〜〜、これ街で売ってるのかよ! 恥ずかしすぎるぞ!」
差し入れの地ビールの木箱の蓋を開けて中身を確認したところで、ハスフェルとギイの笑いながらの悲鳴に俺の叫びが重なった。
何しろ、取り出されたそれは以前の記憶にあるリアルビール瓶サイズの大きなものだったんだけど、そこに貼られたラベルが凄かったんだよ。
何とそこには、どこからどう見ても超男前に描かれた俺の似顔絵と俺の名前が、デカデカと描かれていたんだから、これを見て笑わずに何とする!
しかも、慌てて確認したところ、当然ここにいる入賞者全員のラベル入り瓶ビールが木箱単位で用意されていたんだよ。ちなみに、木箱一つで4ダース、つまり四十八本入っている。
成る程。どうして差し入れであんなに幾つもの木箱があったのかの理由が分かったよ。
そしてその結果俺だけでなく、ハスフェルとギイ、オンハルトの爺さんとランドルさんがそれぞれ自分の似顔絵と名前が描かれた瓶ビールを手にして、同じように悲鳴を上げ全員揃って大爆笑になったのだった。
「か、勘弁してくれ……」
「恥ずかしすぎる……」
オンハルトの爺さんとランドルさんが、揃って仲良く椅子から転がり落ちて床に転がったまま大爆笑している。
ちなみに二人とも笑いすぎて顔は真っ赤だし呼吸困難になっているぞ。
そして、完全に観客状態のリナさん一家と新人コンビ、そしてアルクスさんとボルヴィスさんに至っては、もう遠慮なく全員揃って大爆笑中だ。
「これ、お祭りの期間限定だって言っていたよな。って事は今現在街で売っているのかよ。もう恥ずかしすぎて直視出来ないぞ」
ちょっとドヤ顔の自分が描かれたラベルを見て、俺はそう言いながらもう一回吹き出す。
これが街で売っているのを想像しただけで、もう恥ずかしすぎてどんな顔をしたらいいのか分からないよ。
「確かに考えただけで恥ずかしいな。いやあ、それにしてもなかなかの男前に描いてくれているじゃあないか」
笑ったハスフェルの言葉に、瓶を持った全員がもう一回吹き出す。
「男前とか、そんな問題じゃあない気がする……はあ、それにしても笑いすぎて苦しいぞ」
何とかそう言って立ち上がったランドルさんが、手にしたビール瓶をくるりと回してラベルが見えないようにする。
「これ、いっその事全部の在庫を混ぜて目隠ししたまま改めて木箱に入れて、皆で順番にラベルを見ずに取って飲むのがいいのでは?」
確かに、自分のラベルを自分で飲むのは、正直言って羞恥プレイ以外の何者でもない気がする。かと言って、木箱単位で同じラベルの瓶がずっと出てくるのは、もう笑いすぎて飲める気がしない。
「それは良い案だな。じゃあ……頼んでいいか?」
笑ったハスフェルがそう言いながら手にした瓶を木箱に戻し、まだ笑っているアーケル君達を見る。
「確かにそうですね。じゃあ責任を持ってしっかり混ぜますので、ちょっと貸してください」
何とか笑いを堪えたアーケル君がそう言ってくれたので俺達は一旦下がり、瓶を混ぜて入れ直すのは彼らにお任せした。
そのあと、彼らが大爆笑しつつビンを混ぜて戻すのを俺達は揃って遠い目になりつつ見守っていたのだった。
「よし、これで終了です! じゃあ、いつものように残りはハスフェルさん達に持っていて貰えばいいですよね」
笑いながらのアーケル君の言葉に、俺達参加組が揃って乾いた笑いをこぼした。
「はい、せっかくですから記念に一式お持ちください!」
そして満面の笑みで差し出された包みを受け取り、またしても揃って情けない悲鳴を上げた俺達だったよ。
渡された包みの中には、全員分の瓶が一本ずつ揃えられている。
まあ、確かに話のネタとしては最高な気がするけど……うん、だけどビールに罪は無いよな。これはもうサクッと飲んで証拠隠滅してしまおう。
「よし、冷やす用に氷を出すぞ〜〜!」
無言でハスフェルがいつも使っている大きな木桶を取り出してくれたので、気分を変えるように大きな声でそう言った俺は。そこに遠慮なくドバドバと氷を作っていく。
それを見てにっこり笑ったアーケル君が地ビールの瓶をガンガン突っ込み始めたので、さりげなく氷の壁を作ってラベルを見ないようにした俺だったよ。
そしてそのまま、やけ酒状態の宴会に突入してしまい、気がつけば日が暮れていたのはご愛嬌だ。
揃って我に返って苦笑いしつつ適当な作り置きで夕食を済ませて、そのまま解散したのだった。
うん、ある意味早くから飲んで正解だったかも。
夕食の後にあの木箱を開けていたら間違いなくそのまま徹夜で飲み会になって、全員二日酔いのぐだぐだ状態で暴力テイマーと対峙する事になっていただろうからな。
うん、とりあえず風呂に入ってアルコールを抜いてこよう。
大きなため息を吐いて、従魔達と一緒にそれぞれの部屋に戻った俺達だったよ。