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買い取り手続きと庭遊び?

「ええ、ちょっと待ってください! ゴールドバタフライの翅があるんですか!」

 嬉々として机の上にゴールドバタフライの翅を取り出し始めた新人コンビの二人を見て、横で見ていたグラフィーさんが慌てたようにそう言って二人の手を押さえた。

「はい、ケンさん達のおかげでめっちゃ沢山あります!」

 揃って満面の笑みでそう答える二人を見て、グラフィーさんもこれ以上ないくらいの笑顔になる。

「失礼しました。では奥の部屋へ移動しましょう。ゴールドバタフライの翅は非常に繊細ですから、乱暴に扱って傷めたりしては大変ですからね」

 確かに、ギルドでゴールドバタフライの翅を買い取ってもらう時って、用意されたでっかい箱みたいなのに、翅を重ねて入れて渡していた覚えがある。

 収納袋を抱えて別室へ案内されていく二人を見送り、俺達は広い部屋に従魔達と一緒に散らばって座った。でも何と無く間が持たなくて無意識にアクア達を順番におにぎりにしていた。



「ご主人、庭に出てみてもいいですか?」

 すると、何やらもじもじしながらマックスがそう言って外の庭を見ている。

「ええと……」

 一応ここは冒険者ギルドの建物内だから叱られる事はないだろうけど、周りが貴族のお屋敷だから勝手に庭に出ていいのかの判断が俺にはつかない。

 グラフィーさんは新人コンビと一緒に奥へ行ってしまったので、こっちには誰もスタッフさんがいない。

 信用されているんだろうけど。これでいいのかとちょっと突っ込みたくなったぞ。

 仕方がないので、表の門の横にいた警備の人に確認したところ、敷地内、つまり柵の中であれば従魔達に出てもらっても構わないとの事だった。



「柵の中ならいいんだってさ。だけど、他の庭に砂を飛ばしたりしちゃあ駄目だぞ。無茶な穴掘りも禁止だぞ」

「もちろん分かってます! ちょっと面白そうなものがあったので、見てみたかったんです!」

 何やら興奮して走り出したマックス達を見て首を傾げる。

「ええ? 何が面白そうなんだ? 何かあったかな?」

 特に思い出す物が無いので、ちょっと興味を引かれた俺も庭に出てみる事にする。

 すると、門のある側ではなく裏庭に行ったようで見えるところには誰もいない。

「ん? だけどマックス達の気配がするぞ? 何だこれ?」

 不思議に思って首を傾げていると、玄関から少し離れたところにあった石製の塀の向こう側から突然マックスが飛び出してきた。

「うわあ! ちょっとお前、何処から出てきたんだよ!」

 石製の塀はどうやらコの字になっていたらしく、しかもコの字が向こうを向いていたので俺的には突然石の塀の向こうにマックスが出現したみたいに見えたらしい。

 だけど、石の塀は俺の背丈よりも低いくらいだからマックスよりもかなり低い。

 魔獣であるマックスは大きさの調整が出来ないはずだから、小さくなって塀の向こうに隠れていた訳ではない。どうなってるんだ?

「ご主人、ここに裏庭に通じる地下通路があるんですよ! ほら、中はひんやり気持ちいいですよ!」

 尻尾扇風機状態のマックスにそう言われて、驚いてコの字になった塀の中を覗き込む。

 確かにそこには大きな階段があり、下に降りられるようになっていたのだ。

 一体何のための通路なのかが分からなくて首を傾げつつ、せっかくなので俺も階段を降りてみる。

 地下通路に明かりの類は一切無く、真っ直ぐに伸びた地下通路の奥に光が見えている。

「ええ、この建物より絶対通路の方が長いぞ。おいおい、これって従魔達が行っていい場所なのか?」

 出た先が別の建物の庭だったりすると、マジで問題になりかねない。

 慌てて走り出した俺を見て、マックスがワンと吠えて俺の後ろを追いかけてくる。

 もちろん、マックスが全力で走ったら俺なんかあっという間に追い越されるけど、ここは狭い通路なので追い越し禁止だ。

 すぐ後ろを走るマックスを見て何だか楽しくなって来て、小さく笑いながら狭い通路を走って行った。



「で、何処に出たんだ?」

 到着した奥の階段を上がって外へ出てみると、何と外はめっちゃ広い運動場みたいになっている。

 一応確認したけど表側にあったのと同じ塀がずっと続いているから、どうやらここもギルドの敷地内みたいだ。

 広い運動場の奥には整備中と思われるでっかい箒を持ったスタッフさんと思しき人が数名いて、階段から出てきた従魔達と笑顔で戯れていた。

「あの、ここって冒険者ギルドの敷地内でいいんですよね?」

 万一違っていたら大変なので、大きな声で聞いてみる。

「もちろんです。ここはギルドが管理する運動場になっていまして、街のギルドの運動場で足りない時などには、新人達の剣の指導をここで行ったりもします。また、冒険者の方やギルドにお越しいただいた方々の馬や従魔達を走らせてもいい場所になっています」

 笑顔のスタッフさんの説明に安堵のため息を吐いた俺だったよ。



 ってか、冒険者ギルドって実はめっちゃホワイト企業だよな。

 イベントなんかで臨時出勤した時は交代でお休みがもらえるって聞いたし、イベント時の弁当も全支給。新人教育にも熱心だし、こんな広い運動場まである。

 成る程。元冒険者がギルド職員に多いのも納得だな。

 妙なところで感心しつつ、マックス達を順番にスタッフさんに紹介して、その後はハスフェル達が呼びに来るまで、俺も一緒になって広い運動場を従魔達と一緒に走り回って遊んでいたのだった。


挿絵(By みてみん)

2024年7月18日、アース・スターノベル様より発売となりました「もふもふとむくむくと異世界漂流生活」第八巻の表紙です。

どうぞよろしくお願いしますm(_ _)m


今回も引き続き、れんた様が表紙と挿絵を最高に素敵に可愛らしく描いてくださいました。

楽しそうなスライムトランポリン、私もやってみたい! と、仕上がった表紙のイラストを拝見して叫んだのは内緒です。

そして、中の口絵も最高に可愛いのでどうぞお楽しみに!

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