賑やかな夕食タイム!
「じゃあ、これを順番に焼いてくれるか。ええと、焼けた分は……」
「おう、俺が収納しておくよ。とりあえず適当に皿に並べておけばいいな」
笑ったギイとオンハルトの爺さんがそう言ってくれたので、そこはお願いしておく。
さすがにこの人数だと、四人いても一度では焼けないからな。
ちなみに俺とギイがグラスランドブラウンブルの熟成肉を焼き、アーケル君とオンハルトの爺さんがハイランドチキンとグラスランドチキンの肉を焼いてくれている。
アーケル君は、オンハルトの爺さんに鶏肉を焼く時には皮から焼く事や、あまり何度もひっくり返さないようにする事など、鶏肉の焼き方を詳しくレクチャーしてくれていたよ。
オンハルトの爺さんも、笑顔でうんうんと頷きながらアーケル君の詳しい説明を聞いていたから、爺さんも肉焼きの手伝いを楽しんでくれているみたいだ。
リナさん一家やランドルさん達は、先に俺が出しておいたいつものサイドメニューを見て大喜びで準備している。
「うああ、この香りだけで肉が無いってなんの拷問だよ!」
ようやくしっかりと肉が焼け始めた時、飲み物の準備を終えたハスフェルがわざとらしくそう叫んで空のお皿をこっちに見せる。
「まだ駄目だもんね〜〜」
「こっちも、もうちょいかかりま〜〜す」
笑った俺が、ジュウジュウと賑やかな音を立てている肉を菜箸で掴んでゆっくりひっくり返してやると、それを見たアーケル君だけでなく、ギイとオンハルトの爺さんまでもがそれぞれトングを使って肉をわざとらしくゆっくりとひっくり返してみせた。
するとそれを見たハスフェルだけでなく、ランドルさんとボルヴィスさんと草原エルフ一家が揃って同じように悲鳴を上げた。遅れて新人コンビとアルクスさんも揃って悲鳴をあげていたから、もうそのあとは全員揃って大爆笑になったよ。
ううん、皆ノリが良いねえ。
「お待たせしました〜〜〜肉が焼けたぞ〜〜」
しっかりと火が通ったのを確認した俺の言葉に、全員から拍手が湧き起こった。って事で、それぞれのお皿に焼けたお肉各種を並べていく。
「はい、これで良いか?」
いつものようにハスフェルが俺の分だけじゃあなくギイとオンハルトの爺さんの分までしっかりと準備をしてくれていたので、お礼を言って受け取る。
ギイはパンで、俺とオンハルトの爺さんはご飯だ。
俺用の温野菜多めのお皿を受け取り、自分のお皿にも焼いた肉を並べていく。
一応メインが熟成肉で、ハイランドチキンとグラスランドチキンをその横に添える。
まあどれ一つとっても余裕で一人前サイズなんだけどさ。
「あ、じ、み! あ、じ、み! あ〜〜〜〜〜〜〜〜っじみ! ジャカジャカジャン!」
シャムエル様の今日のダンスは、久々の正統派味見ダンスだ。
空のお皿を手に、見事なサイドステップを踏んでいる。当然のようにカリディアもお皿を手にすっ飛んできて、これまた見事なまでの完コピで踊り始める。最後は二人揃ってキメのポーズだ。
「お見事〜〜〜」
お肉山盛りのお皿を手にした俺は、笑ってお皿を置いてから拍手をしてやる。
先にカリディアにダンスのご褒美にブロッコリーとトマトを小皿に並べて渡してやる。
「で、どれくらいいるんだ?」
「肉は全部これくらいずつでお願い! あとは適当ね。あ、コーンスープはここにください!」
意外に三分の一くらいのところで切る振りをするので、その位置で切って小さい方を見る。
「一応確認だけど、こっちで良いんだよな?」
「あはは、い、いくらなんでも、そんな無茶は言わないよ。じゃあ、ここにお願い!」
笑ったシャムエル様の言葉に密かに安堵した俺だったよ。
だって、さすがにこれを三分の二持っていかれたら、少食の俺でもちょっと足りないと思うぞ。
「なあ、今、若干言葉が詰まっていた気がするんだけど、俺の気のせいだよな?」
切った小さい方の肉をお皿に並べてやりながらそう尋ねてしまった俺は、間違ってないよな?
「それは確実に気のせいです!」
無駄にキリッとしたシャムエル様の言葉に、思いっきりじと目になった俺だったよ。
いつものように、スライム達が準備してくれていた簡易祭壇に、俺の分を一通り並べてから手を合わせて目を閉じる。
「今夜はステーキだよ。付け合わせの温野菜とポテト、コーンスープとおにぎりの盛り合わせ、それから冷えた白ビールも一緒にどうぞ。ええと、色々ありましたがアルクスさんの指導もなんとか無事に終わったみたいです。明日、彼にサーバルをテイムさせてあげた後は、問題の暴力テイマーの指導です。無事に終わりますようにお守りください」
一応神様なんだから、このお願いは間違ってないよな?
若干不安になりつつ頭を撫でてくれる感触に目を開けると、いつもの収めの手が何度も俺を撫でてから料理をしっかりと撫で、それから新人コンビとアルクスさんの所へ行って彼らの頭も何度も撫でてくれた。それから、彼らの従魔達も順番に撫でてくれていたから、もしかしたら彼らにも祝福を授けてくれていたのかもしれない。
「ありがとうな」
消えていく収めの手にそっと小さくそう呟いてから、俺も自分のお皿を持って席についた。
「ああ、待っててくれてすまない。じゃあ食べようか」
俺が席につくのを当然のように全員揃って食べずに待ってくれていたので、慌ててお礼を言って冷えた白ビールを手にする。
皆もそれぞれの飲み物を手に、笑顔で俺を見ている。
「では、僭越ながら……明日のアルクスさんのテイムの成功と、愉快な仲間達のこれからの益々の活躍を願って、乾杯!」
「かんぱ〜〜い!」
笑顔の皆の声が見事に揃い、皆一気にお酒を飲む。俺も、笑顔で冷えた白ビールをぐいっと半分ほど飲み干す。
「くああ、冷えたビールが美味い!」
若干おっさんみたいな声が出たけど、気にしない。だって、本当に美味しいんだからさ!
「はあ、本当に仲間達と飲むお酒って、どうしてこんなに美味しいんだろうな」
しみじみとそう呟き、早速空になったグラスに二本目の白ビールを注いだ俺だったよ。