野営と夕食の準備だ!
「お疲れさん。もう気が済んだか?」
ピルバグサッカー大会の五面目がクリアーしたところで、ようやく満足したらしい従魔達がやっと寛いで体を舐め始めたので、それを見た俺は笑いながらマックスにそう言ってやる。
「はい、とっても楽しかったです!」
そりゃあもうご機嫌な声でそう答えたマックスは、軽く飛び跳ねてからやっと大人しくなった。
足元はもう、大量のピルバグのジェムが地面を埋め尽くしている。
ちなみに、まだ前回手に入れたジェムを全然換金していない新人コンビは、貸してあげた二百倍の収納袋がまた満杯になってしまったらしく無言で焦っていたので、少し考えて五百倍の収納袋をもう一つずつ貸してあげた。
「ありがとうございます! お借りします!」
目を輝かせてお礼を言ってくれる新人コンビを見て、またしても保護者モードになった俺だったよ。
よし、今回も彼らには多めにジェムを押し付けておこう!
ジェムの回収が済んだところで移動して、前回と同じ野営場所へ向かう。
「じゃあ、また水は出して差し上げますので、お任せください!」
「お任せください!」
得意げに胸を張るアーケル君の言葉に、同じく満面の笑みで頷くムジカ君。そしてそれを聞いて、これまた大喜びのスライム達と水遊びの大好きな犬族軍団とお空部隊の面々だったよ。
ちなみにイグアナ達も実は水遊びが好きみたいで、毎回ではないんだけど朝の水浴びにも参加しているんだよな。
確かにあの子達をテイムした時って、水のある場所だったな。
走るマックスの背の上で、そんな事をのんびりと考えていた俺だったよ。
「到着〜〜〜じゃあ、まずはテントを張らないとな」
今回も俺とハスフェルが新人コンビに予備の大きなテントを貸してあげ、同じく大きなテントを持っていないアルクスさんには、ランドルさんが持っていた予備の大きなテントを貸していた。
そうだよな。従魔とくっついて寝る幸せを彼にも知ってもらわないと!
ちなみに、スライム達があっという間にそれぞれのテントを張るのを見て、アルクスさんはそりゃあもう目玉が転げ落ちそうなくらいに目を見開いて驚いていたよ。
呆然と動けないアルクスさんをおいて、先に俺達のテントを張り終えたスライム達の何匹かがアルクスさんのスライムと一緒に彼のテントを張り始める。
その際に、彼のスライムと合体した子達が作業をいつもよりもかなりゆっくりしていたから、テントの張り方を詳しく教えていたみたいだ。
いやあ、いつもながらうちのスライム達は皆優秀だねえ。
そして残りのスライム達は、マックス達と一緒にまた水場用の穴掘りのお手伝いを始めていた。
すり鉢状の穴が掘れたところでリナさん達が前回と同じように穴の底と穴の横に長い筒を突き刺して、噴水と手洗い用の水道を作ってくれたよ。今回は、穴の底に突き刺した筒は長いのと短いのが複数あったから、あれがスライム達が吹き上がる噴水用なのだろう。
「いやあ、お見事!」
あっという間に出来上がった噴水を見て、もう笑うしかない俺だったよ。
「さて、夕食は何にするかね?」
せっかくアルクスさんが考えを直して再出発してくれたんだから、やっぱりここは祝いの肉かな?
「おおい、ステーキにしようかと思うんだけどどうだ?」
「お願いします!」
見事に新人コンビとアルクスさん以外の全員の声が揃う。
「ええと……」
戸惑うように顔を見合わせる新人コンビに俺はにっこりと笑って頷いてやる。
「ありがとうございます!」
「また、厚かましくもご一緒させていただきます!」
直立してお礼を言う二人に笑顔で手を振り、アルクスさんにも手を振っておく。
「せっかくですからご一緒しましょう。アルクスさんの再出発祝いのお肉ですよ」
「よろしいのですか?」
「言ったでしょう? せっかく臨時とはいえ同じチームにいるんですから、食事くらい一緒に食べましょうよ。ってか俺が嫌なんですよ。せっかく一緒にいるのに一人だけ別の食事をするなんてね」
「ありがとうございます。では厚かましくもご一緒させていただきます」
嬉しそうにそう言って頭を下げてくれる。
「ええと、準備が出来たら肉焼き手伝ってくれる人募集〜〜」
「はあい、お手伝いしま〜す!」
「おう、手伝うぞ」
「じゃあ、今回は人数も多そうだし、俺も手伝おうか」
いつも肉を焼くのを手伝ってくれるアーケル君とギイが手を上げてこっちへ来てくれたんだけど、オンハルトの爺さんが笑顔でそう言って一緒に来てくれた。
確かに、カレーを作る時に肉を焼くのを手伝ってくれていたな。
「おう、じゃあお願いします。準備するからちょっと待ってくれよな」
笑ってそう言い、並んだテーブルに手持ちの簡易コンロとフライパンを取り出して並べていく。
今回焼くのは、いつものステーキ用のグラスランドブルの熟成肉と、ハイランドチキンとグラスランドチキンの胸肉だ。
熟成肉は分厚く切って軽く筋を切ってから肉用スパイスと黒胡椒をがっつりふりかけておく。ハイランドチキンとグラスランドチキンは、同じく肉用スパイスと、こっちにはハーブ塩を振りかけておく。
これ、ハーブの香りが鶏肉にピッタリなんだよな。
準備が出来たところで、いつもの付け合わせを色々と別のテーブルに取り出しておく。こっちは自分で準備してもらう用だ。
新人コンビは、ハスフェルと一緒に飲み物の準備をしてくれている。
「ケン、忙しいところを悪いんだが、肉を焼く前に先に氷を作ってもらえるか。もう手持ちがあまりないんだ」
今日はちょっと蒸し暑いみたいだから、あいつらも冷たい飲み物が欲しいみたいだ。
「ここにお願いします!」
ムジカ君が、両手で抱えるくらいの大きな木桶をいくつも積み上げて持ってきてくれたので、先に飲み物用の透明な氷を大量に作って渡しておいたよ。
冷えたビールと吟醸酒は俺も飲みたいからな。
スライム達に手伝わせて、俺が作った大量の氷が入った木桶をせっせと運ぶムジカ君はとても良い笑顔だ。
ううん、保護者モードがまた全開になるよ。
よし、頑張る良い子には大きなお肉を入れてあげよう! 成長期なんだから、しっかり食べないとな!