スライムのテイムとピルバグサッカー大会?
「ありがとうございます。おかげで新たな従魔を無事にテイムする事が出来ました」
嬉しそうに笑ったアルクスさんが、そう言ってスライムのピーチを手に乗せて俺に向かって深々と頭を下げる。
「いえいえ、アルクスさんが頑張ったからこそですよ。それに、皆も頑張ったみたいだな」
俺の言葉に、黄色のスライムをテイムしたシェルタン君とピンクの子をテイムしたムジカ君が、揃ってドヤ顔でこっちを見る。
シェルタン君の手の上には、イエローのスライムがちょこんと乗ってこっちに向かって伸び上がっている。俺には分かるぞ。あれもドヤ顔だ。
「レモンです。もうこの色を見たらこれしか出て来なかったんですよね」
そう言って苦笑いしながら、両手で豪快にレモンをモミモミする。
「きゃ〜〜揉まれちゃった〜〜〜」
どう聞いても嬉しそうにしか聞こえない悲鳴をあげたレモンは、シェルタン君の腕に触手を伸ばして甘えるようにそっと絡めた。
「ああ、ボルヴィスさんもテイムしたんですね」
その仲睦まじい様子を見て和んでいると、シェルタン君の後ろで同じく黄色のスライムをテイムしていたボルヴィスさんに気がついて、思わずそう言って駆け寄る。
「ええ、俺も黄色の子が欲しかったので、ちょうどこっちへ来てくれたので捕まえてテイムしましたよ。名前はシトラスです」
「シトラスで〜〜す! よろしくで〜〜す!」
「そうか、よろしくな」
嬉しそうにそう言ってビヨンと伸びた黄色のスライムを、俺も笑って撫でてやる。
皆、なんとなく黄色の子は柑橘系のイメージみたいだ。
「出来れば俺も、黄色のスライムも欲しいですね。もう一度お願い出来ますか」
ピンクスライムのピーチを撫でていたアルクスさんの言葉に、同じくピンクのスライムをテイムしたムジカ君も慌てたように頷いている。
ちなみにムジカ君は、ピンクスライムにモモって名前をつけていたよ。
俺のサクラと並べると、サクラとモモ。いいね、春って感じだ。
その後にもう一度スライムの巣に石を投げ込み、その結果アルクスさんとムジカ君も無事に黄色の子をテイムする事が出来た。
アルクスさんは黄色の子にレモネードと名前をつけ、ムジカ君はリモーネとつけていたよ。
やっぱり柑橘系。まあ、可愛いからいいよな!
ちなみにテイムしなかったスライム達は、退屈した従魔達によって全てジェムに変えられていたよ。
もう瞬殺レベル。スライム達、なんかごめんよって感じだ。
「ええと、日が暮れるまでまだ少し時間があるけど、この後はどうするんだ? ってか、今夜はどこで野営するんだ?」
テイムが一段落したところで、俺はまだ暮れるには早い青い空を見上げてハスフェルとギイにそう尋ねる。
「ああ、野営地はこの前と同じところでいいだろう? あそこは水源の無いのが難点だったんだが、この顔ぶれなら水の心配は要らないんだからさ」
笑ったギイの言葉にリナさん達とムジカ君がドヤ顔になっていたよ。今日はドヤ顔が多いな、おい。
って事で、散らばっているジェムをスライム達に集めてもらい、ここは撤収して全員揃って野営地へ向かう。
「じゃあ、サーバルは明日だな」
マックスの背の上で、まだ青い空を眺めながらそう呟く。
『お任せください!』
『また見つけて追い込んで差し上げますからね!』
姿を隠して一緒についてきているベリー達が、サーバルと聞いてまた張り切ってくれている。
『いやいや、もうそんなに数はいらないからね。今回はアルクスさんの為の分だけでいいぞ』
慌ててそう言っておく。
「ご主人、その前にちょっとピルバグの巣へ寄っていきませんか?」
その時、上空を飛んでいたローザが俺のすぐ側まで降りてきてそう言ってくるっと空中で一回転した。それを聞いて、マックスもやる気満々な声でワンと吠えた。
どうやらスライムごときでは従魔達のストレス発散にならなかったらしく、皆やる気満々でこっちを見ている。
「あはは、了解。なあ、従魔達がちょっと暴れたがっているみたいだから、野営地へ行く前にピルバグの巣へ行って欲しいってさ」
笑った俺の言葉に俺の従魔達だけでなく、他の人の従魔達までがそうだそうだって感じに鳴いたり跳ね飛んだりして自己主張している。
「了解だ。じゃあこっちだ!」
笑ったハスフェルがそう言っていきなり加速する。
即座に反応した全員が一気に加速して追いかけ、そこから当然全力疾走の駆けっこ状態になる。
今回は猫族軍団もやる気満々だったらしく、一気に巨大化してものすごい勢いで俺達と並走している。
ううん、猫族軍団もマジで走るとめっちゃ速いんだよな。まあ俺と同じで持久力無いから、長距離は無理なんだけどね。
今回はゴールを決めずに走り出してしまった為、結局ピルバグの巣にそのまま突っ込む形になってしまった。
しかもちょうど出現したばかりのタイミングだったらしく、地面に掘られた幾つもの巣穴から地面を埋め尽くす勢いで吹き出すみたいにして出てくるピルバグを見て、テンションマックスになった従魔達がそのまま全員揃って突っ込んでいき、またしてもピルバグサッカー大会が繰り広げられたのだった。
ちなみに俺達はもう狩りは諦めてそれぞれの従魔の背の上でのんびりと休憩していたのだった。
だって、迂闊に背から降りようものなら、絶対俺達まで一緒に蹴られそうなくらいのもの凄い勢いだったんだからさ。うん、君子危うきに近寄らず! だよな。あれ、ちょっと違うかな?