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従魔達との関係は?

「スライムに出来る事……」

 キャンディを右手に乗せたアルクスさんは、何やら真剣に考え込んでいる。



 しばらくして顔を上げたアルクスさんは、一つ深呼吸をしてから俺を見て口を開いた。

「私はこいつをテイムしたあと、宿泊所にいた時に、床にいたこいつを寝起きにうっかり踏んだ事があります」

 アルクスさんが、俺に右手に乗せたキャンディを見せながら何やら突然の爆弾発言をしてくれたよ。

 咄嗟に言い返しそうになった新人コンビを慌てて止めてやり、とりあえず俺が前に出て対応する。

「ええ、いくら寝起きだったとしても、自分の従魔を踏むのは駄目でしょうが」

「もちろん驚いてすぐに下がりましたよ。でもその時に、こいつの上に俺の足跡がくっきりと残っていて靴の汚れが無くなっていたんです。それで、スライムの表面が妙にベタベタでくっつくのはこういう意味かと納得して、それ以来建物の中や部屋に入る時には、こいつを軽く踏んで靴の汚れを取っていたんです。最近では、俺が命じれば自ら足にくっついて汚れを取るようになりましたね」

 そのあんまりな言い方に、思わずアルクスさんの右手に乗るキャンディを見る。

「ええとね。ご主人に初めて踏まれた時はびっくりしたけど、わざとじゃあないのは分かったから別に平気だったよ。その後だって、いつも靴を軽く押し付ける感じだったから、キャンディはちゃんと靴を受け止めて汚れを取っていたんだよ。最近は、もっと伸びて靴全体を綺麗に出来るようになったんだからね!」

 ビヨンと伸びたキャンディの言葉をそのまま通訳してやると、アルクスさんは無言になった。

「そ、そうか。知らなかったとはいえ踏んだりして悪かったな。それに靴まで綺麗にしてくれていたのか」

 右手に乗せたキャンディに、真顔で謝るアルクスさん。

「他には、スライムにさせていた事って、何かありますか?」

 苦笑いした俺の質問にまた無言で考えていたアルクスさんは、しばらくして首を振った。

「さっき申し上げたように、スライムの役割はジェムモンスターと戦った際のジェムと素材集めだと思っていました。だから靴の汚れを取る事は、所詮はベタベタな体に靴の汚れがくっつくだけなので、そもそも自主的にスライムがしている事だなんて思ってもいませんでした」

 一応、素直に自分のやっていた事を白状してくれるのは、従魔達と向き合うって意味では進展しているんだろうけど、従魔そのものを軽く扱っていたのが分かるその内容に、聞いている新人コンビの眉間の皺がさらに深くなってるよ。

 うん、気持ちは分かるけどちょっと落ち着いてくれ。



「それから、ロッキーに乗っていれば郊外での危険は圧倒的に少なくなりますね。馬では進めないような足場の悪い茂みや岩場でも、こいつは平気で進みますからね」

 どうやら、それぞれの従魔達が自分にしてくれる事を順番に上げているみたいだ。

 そのアルクスさんの言葉に、当然だけどロッキーがドヤ顔になってる。尻尾はもちろん扇風機状態だ。

「確かに、郊外へ出ると騎獣の有り難みを思い知りますよね」

 俺の言葉に、頷いたアルクスさんがロッキーと自分の肩に留まっている黄色のセキセイインコをそっと撫でる。

「偶然スライムをテイムしてこれがテイムなのだと理解した後に、近くにあったセキセイインコのジェムモンスターの出現場所で試しにこのチッチをテイムしました。小さな出現場所なので、一度に出現するのは数十匹程度です。何羽か切り落とした後に、とりあえず近くに来たこいつをこうやって槍の柄で叩き落としたんです」

 棒を持って頭上を殴る振りをするアルクスさん。

 ええ、飛んでいるインコを棒で叩き落とすのは、リナさん以上に乱暴な気がするぞ。

 叩き落とされたチッチが翼を怪我したりしなくてよかったな。

「ですが、叩き落として捕まえたはいいが、この後にどうしたらいいのか分からなくて捕まえたまま困ってこう言ったんです。お前をテイムしたいが、どうすればいい? と」

 まさかのテイムするつもりの相手に質問すると言う、予想の斜め上の言葉に思わず吹き出す俺。すぐ横で一緒に話を聞いていた新人コンビも、思わず横を向いて揃って吹き出していたよ。

「ですがその直後に一瞬光って大人しくなったこいつを見て、ああ、これでテイム出来たんだなと理解しました。その後場所を変え、その途中で俺にはこいつらの言葉は分かりませんが、少なくとも俺の言っている言葉は通じているのを確認出来たので、チッチに囮役をやらせてこのロッキーを群から引き離して、少々痛めつけてから捕まえたんです。足になる騎獣はどうしても欲しかったですからね」

「ちなみにどうやって確保したんですか?」

 決して小さくはない真っ白なオオカミ、スライムとセキセイインコだけでは群から引き離したとしてもこの子達だけでは確保するのは難しいだろう。

「俺が戦いましたよ。この剣で前脚と後ろ脚の付け根の辺りを順に切りつけて倒れ込んだところで、投網を使って動きを封じたんです。ジェムモンスターは少々の怪我ならすぐに回復するのは分かっていましたから、そのまま槍に持ち替えて回復する間を与えないように力一杯数回殴れば大人しくなりましたよ」

 平然とそう答えるその内容に、ものすごくモヤっとしたものを感じていたのは俺だけじゃあなかったらしい。

 新人コンビは完全に怒り顔だし、ハスフェル達やリナさん達、それからランドルさん達やマーサさんまでがドン引きしている。

 そもそも、俺達とアルクスさんとの従魔に対するこの感覚の違いをどうやったら分かってもらえるのか、冗談抜きで本気で途方に暮れる俺だったよ。


挿絵(By みてみん)

2024年7月18日、アース・スターノベル様より発売となります「もふもふとむくむくと異世界漂流生活」第八巻の表紙となります。

どうぞよろしくお願いしますm(_ _)m


今回も引き続き、れんた様が表紙と挿絵を最高に素敵に可愛らしく描いてくださいました。

楽しそうなスライムトランポリン、私もやってみたい! と、仕上がった表紙のイラストを拝見して叫んだのは内緒です。

そして、中の口絵も最高に可愛いのでどうぞお楽しみに!

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― 新着の感想 ―
まぁ、「人間の脅威」として魔獣が存在する世界観から見れば、アルクスさんの感覚がスタンダードで、テイマーや魔獣使いの感覚の方がイレギュラーなんでしょうね(∀`;) 突発的にテイマーになっちゃった人の内…
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