朝食と今日の予定?
『おおい、そろそろ起きてくれよ〜〜』
『皆起きてるぞ〜〜』
『腹が減ったぞ〜〜〜』
スライムベッドに座ってマニとティグをおにぎりにして和んでいると、笑ったハスフェル達の念話が届いて思わず吹き出す。
「そうだ、リビングへ行こうとしていたんだった。お前らといると時間を忘れるよな」
俺の癒しの手の心地よさにすっかり脱力して溶けているマニとティグをもう一回おにぎりにしてから、そう言って立ち上がる。
「じゃあ行くか」
笑った俺の言葉に側で寛いでいた従魔達も立ち上がり、揃ってリビングへ向かった。
「おはようございます!」
「おはようございます!」
リビングには本当に全員集合していて、満面の笑みのムジカ君とシェルタン君が揃って元気よく挨拶してくれた。
続いて挨拶してくれた皆と笑顔で挨拶を交わし、大急ぎで作り置きのいつもの朝食セットを取り出していく。ハスフェル達やリナさん達、ランドルさん達も手持ちを色々と出してくれるのを見て新人コンビが慌てている。
「良いから気にせずしっかり食え。育ち盛りなんだからさ」
恐縮する二人に笑って手を振ってから、何を取ろうか考える。
自分が食べたかったのでおにぎり各種を盛り合わせた大皿も取り出してから、和食のおかずも色々と取り出しておいたよ。
って事で俺の今日の朝食は、高級梅干しを贅沢に入れたおにぎりと肉巻きおにぎり、ワカメと豆腐のお味噌汁、そしてだし巻き卵と西京漬の焼いたのだ。
うん、朝から和食ってなんだかすっごく贅沢した気分になるよ。
もちろんシャムエル様用に、いつものタマゴサンドと厚焼きタマゴサンドをそれぞれ一切れずつ確保している。
「飲み物はどうする?」
温かい緑茶をマグカップに入れながら尋ねると、少し考えたシャムエル様はいつものお椀を取り出して差し出した。
「じゃあ、ここにそのお味噌汁をください!」
シャムエル様もパンとお味噌汁でも大丈夫らしいので、笑った俺は受け取ったお椀に俺のお椀からワカメと豆腐のお味噌汁を入れてやった。
「うん、俺の分が無くなったからもう一回入れてこよう」
ほぼ具が無くなり味噌汁も半分以下になったお椀を見て小さく笑ってそう呟き、もう一回味噌汁を入れに行った俺だったよ。
「おはようございます。今日は和食の朝食です。ええと、多分今日次の新人教育のアルクスさんが来ると思いますので、上手く指導出来ますようお守りください」
一応あれでも神様なんだから、このお願いは間違ってないよな?
若干不安になりつつもそう考えてお願いしておく。
いつもの収めの手が俺を撫でてから料理を一通り撫でてお皿を持ち上げる振りをするのを黙って見ていると、何故か収めの手はその後にムジカ君とシェルタン君を何度も撫でてから俺の方に向かってOKマークを作ってから消えていった。
「ん? 今のはどういう意味だ? 彼らが成功したから、次も大丈夫だよって意味かな?」
首を傾げながら小さくそう呟いたが、特に収めの手が現れ直すような事もない。
「まあいいや。じゃあいただくとしよう。ああ、待っていてくれたんだな。ごめんよ」
顔を上げると、まだ全員が食べずに待っていてくれたのに気付いて、慌てて謝ってお皿を持って席に着く。
「いただきます」
手を合わせた俺の言葉に、ハスフェル達やリナさん達だけでなく、ボルヴィスさんや新人二人まで一緒になっていただきますを言ってくれた。
元々この世界にはいただきますを言う文化は無かったはずなのに、当たり前のように俺に合わせてくれる皆を見てなんだか嬉しくなってしまい、ちょっと不意に浮かんだ涙をこっそり誤魔化した俺だったよ。
「ごちそうさまでした。ううん、いつもながらケンが作ってくれるタマゴサンドは最高だね!」
かけらも残さずにタマゴサンドと厚焼きタマゴサンドを全部綺麗に平らげたシャムエル様が、ご機嫌でそう言いながら尻尾のお手入れを始めている。
「はい、お粗末さま。まあ、それだけ喜んで食べてくれれば、俺も作り甲斐があるってもんだよ」
笑って尻尾の先をこっそり突いてやると、嫌そうに取り上げられた。
「良いじゃん、ちょっとくらい」
「大事な尻尾の毛が減るから駄目です!」
そう言って軽く空気に叩かれてしまい、慌ててのけ反った俺だったよ。
「さてと、今日はどうするかねえ」
食後のお茶を飲みながら小さくそう呟く。
「ちなみにアルクスさんは、今冒険者ギルドでマーサさんと合流しているところだね。今日はクーヘンは別注対応で忙しいから、来られないみたいだね」
俺の呟きを聞いたシャムエル様がそう教えてくれたので、思わず緑茶を飲んでいた手が止まる。
「そっか、じゃあアルクスさんが来てくれたらまずは座学からだな」
「そうだね。まあ頑張ってくれたまえ!」
何故かドヤ顔でそう言ったシャムエル様は、それっきり知らん顔でまた尻尾のお手入れを始めている。
「じゃあ、とりあえずは待機だな」
「そうだな。あいつなら、来るなら朝一番から来るだろうから、午前中に来なければ今日は休みで良いんじゃあないか?」
俺の呟きが聞こえたらしいハスフェルの言葉に、ギイも苦笑いしつつ頷いている。
彼をこっそり苦手だと言っていた二人を見て、俺もちょっと困ったように笑っていたのだった。
『一応マーサさんが冒険者ギルドで合流していて、彼を連れてきてくれるらしいぞ。残念ながらお休みはまた後日だな』
さっきのシャムエル様の言葉が聞こえていなかったみたいなので、一応念話で伝えておく。
『おう、そうか。まあ手伝いくらいはするが……俺達は当てにしないでくれよな』
『悪いがよろしく頼むよ』
完全に逃げ腰な二人の念話が届き、思いっきり不安になる俺だったよ。
ええ? あいつらがそこまで言うって、そのアルクスさんって一体全体どんな人だって言うんだよ???