いつもの朝の光景プラスアルファ！
ぺしぺしぺし……。
ぺしぺしぺし……。
ふみふみふみ……。
ふみふみふみ……。
ふみふみふみ……。
カリカリカリ……。
カリカリカリ……。
つんつんつん……。
チクチクチク……。
こしょこしょこしょ……。
ふんふんふんふん！
ふんふんふんふん！
「うん、起きてる、よ……」
翌朝、いつもの従魔達総出のモーニングコールに起こされた俺は、眠い目を擦りつつ何とかそう答えた。でもまあ、目は全然開いていないんだけどね。
「相変わらず寝汚いねえ」
「寝ているのに起きているとか言うのも、毎朝のお約束の展開ですからね」
笑ったシャムエル様とベリーの声が聞こえて抗議しようとしたんだけど、そのまま俺はあっという間に二度寝の海へ落っこちて行ったのだった。二度寝最高〜〜！
ぺしぺしぺしぺし……。
ぺしぺしぺしぺし……。
ふみふみふみふみ……。
ふみふみふみふみ……。
ふみふみふみふみ……。
カリカリカリカリ……。
カリカリカリカリ……。
つんつんつんつん……。
チクチクチクチク……。
こしょこしょこしょこしょ……。
ふんふんふんふん！
ふんふんふんふん！
「うん、起きてるって……」
完全に寝ぼけた状態の俺がなんとかそう答えた直後、耳元ですごい鼻息が複数聞こえた。
おい、ちょっと待て！ 今朝の最終モーニングコールはソレイユとフォールの最強コンビのはずだけど、鼻息の数が絶対多いし、全員巨大化しているだろう！
起きろ俺。これは割とマジで洒落にならないって！
冷や汗ダラダラで頭の中は完全に目が覚めているんだけど、残念ながら寝汚い俺の体の方はようやく薄目が開いた状態だ。
「ご、しゅ、じ、ん」
「お、き、て」
「起きないと」
「大変な事に」
「な、る、わ、よ」
聞こえてきたのはソレイユとフォール、それからティグとマロンとヤミーの声だ。
全員、語尾にハートマークが付いていそうなくらいに甘い声だけど、言っている内容は絶対甘くないぞ。
「ご主人起きるのですにゃ！」
「そうですよ。起きてください」
反対側の耳元から聞こえてきたのは、何故か若干赤ちゃん言葉になっているマニと、笑いを堪えた声のカッツェだ。
あれ、って事は今俺が抱き枕にしているのは……うん、この立派な尻尾はフラッフィーだな。いつもながら良き尻尾だ。
「うん、だから起きてるってば……」
最終モーニングコールを回避しようと起きているアピールをしようとしたんだけど、やっぱり俺の体はほとんど動いてくれない。
「じゃあ、遠慮なく起こしてやりたまえ」
絶対ドヤ顔だと分かるシャムエル様の声の直後、上向きに寝ていた俺の両頬と額それから喉元、そして両手の甲と手首の辺りを思いっきり舐められた。
ザリザリザリ！
ザリザリザリ！
ジョリジョリジョリ！
ジョリジョリジョリ！
ゾリゾリゾリ！
ザリザリザリ！
ベロ〜〜〜〜ン！
「うぎゃ〜〜〜〜！ げふう！」
予想以上の衝撃と痛さに、情けない悲鳴を上げ俺は、鳩尾にフラッフィーのキックを受けて悶絶する。そのまま勢い余ってニニの腹から転がってスライムベッドからも落っこちた。
「ご主人危ないよ〜〜」
気が抜けそうなくらいののんびりとしたアクアの声の直後、俺は地面に激突寸前に伸びてきたスライムの触手に受け止められた。
「確保からの〜〜〜お返し！」
しかし、お礼を言う間も無くそのまま放り投げられる。
「だから、返さなくっていいって〜〜！」
空中を飛んだ俺は、悲鳴を上げながらニニの腹の上にうつ伏せになって落っこちた。
「ふ、振り出しに戻った……」
ずり落ちないようにニニの毛を掴んだ俺は、思わずそう呟いて吹き出す。
「ご主人起きた〜〜〜！」
「おはようなの〜〜〜」
「ああずるい！ マニも行くのにゃ！」
ソレイユとフォールの嬉しそうな笑い声の直後に、マニまで一緒になってそう言いながら飛びついてくる。
「おはよう。今朝も元気だな」
ようやく開いた目で飛びついてくるマニ達を見て、笑いながら両手でマニ達をまとめて抱きしめてやる。
「ご主人の先生。おはようなの〜〜〜！」
「ご主人の先生。おはようです〜〜〜！」
その時、聞き覚えのない声がして巨大化した誰かが俺に飛びついてきた。
笑ったマニ達がするりと俺の腕から抜け出していく。
その謎の二匹は、空いた俺の腕に飛びかかってきて体当たりしてきた。
「ええ、誰だよこれ？」
手を伸ばして抱きしめてみるとソレイユみたいなちょっと短めの毛の子達で、体はかなり大きめだ。
「ええ、マジで誰だよ？」
驚いて腕の中の子を改めて見てみる。
そこには二頭の見覚えのないサーバルがいて、驚きのあまり一気に目が覚める。
その時、背後からハスフェルの吹き出す声が聞こえて慌てて振り返る。
そこにいたのは大爆笑しているハスフェルと、必死になって笑いを堪えているギイとムジカ君とシェルタン君の三人だった。
巻き上げたテントの垂れ幕の向こうには、同じく笑いを堪えたオンハルトの爺さんの姿もある。
「ああ、リベルターとリリスか。あはは、お前らも起こしに来てくれたのか。ありがとうな。ううん、これまた最高に気持ちの良いもふもふだぞ」
どうやら、ハスフェルの入れ知恵でこの二匹がモーニングコールに乱入してきたらしい。
確かに、変にお金やジェムで食事代だと言って渡されるより、俺的にはこっちの方が何倍も良い。
ハスフェル、俺が喜ぶツボを心得ているな。グッジョブだ。
笑った俺は、もうそのあとは遠慮なく新入りサーバル達を撫で回してやったのだった。そんな俺を見て、途中からはムジカ君とシェルタン君も遠慮なく大爆笑していたのだった。
そして、他人の従魔と仲良くしている俺を見て嫉妬に燃え上がった猫族軍団がそこへ飛び込んできて俺を揉みくちゃにする。
なされるがままの俺は、もう遠慮なく歓喜の叫びをあげてもふもふの海へ沈んでいったのだった。
朝から、これは一体何のご褒美ですか？
2024年三月十五日、アース・スターノベル様より発売となりました「もふもふとむくむくと異世界漂流生活」第七巻の表紙となります。
今回も引き続き、れんた様が表紙と挿絵を最高に素敵に描いてくださいました。
もう、この表紙のセーブルの表情が全てを物語っていますよね！
今回は珍しくケンも頑張って戦っていますので、どうぞ貴重なケンの勇姿を見てやってください！
どうぞよろしくお願いしますm(_ _)m
