豪華ないつもの昼食タイム!
「ふわあ、なにこれ。めっちゃ美味い!」
「だよな。なあなあ、このカツサンドもめちゃくちゃ美味いぞ」
「ええ。どれだよ。これ? じゃあせっかくだからもう一ついただきます」
「俺も、そっちの鶏肉の入ったのも食べてみようっと」
最初は遠慮して少ししか取らなかった二人だけど、ハイランドチキンの照り焼きサンドと岩豚トンカツのソースカツサンドをそれぞれ一口食べるなり感激の声を上げ、お互いが食べているサンドイッチを見て慌てて追加で取っているムジカ君とシェルタン君だった。
「しっかり食べろよ。ちなみにそれはどちらもケンが作ってくれたサンドイッチなんだぞ」
笑ったハスフェルの言葉に、二人が揃って目を輝かせて俺を振り返る。
「ケンさんは、魔獣使いの料理人なんですね」
「凄い! 俺、料理は壊滅的に駄目なので、料理が出来る方って尊敬します!」
シャムエル様みたいなキラッキラの目で見られて、小っ恥ずかしくなってそう言いながら顔の前で手を振る。
「料理人なんてたいそうなものじゃあないよ。所詮は素人料理だし、これは、俺が単に不味いものを食いたくないから作っているだけだって。それに食事は皆で食った方が美味しいだろう? 美味しいのは皆と一緒だからだよ。俺はそんな大した事はしていないって」
笑った俺の言葉にあちこちから笑いが起こり、ケンさんが店をしてくれたら毎日通うぞ! って言ったアーケル君の声に拍手が起こる。
「まあ、そのおかげで俺達もいつも美味い食事にありつけるから、感謝しているよ。ちなみにお前らが食っているこれはな……」
笑ったハスフェルとギイが、そう言って二人の耳元に口を寄せて小さな声で何やら話している。
まあ、今食っているこれが何の肉なのか教えているんだろう。
なんとなく皆も食べる手を止めてそんな彼らを見ている。
「うええ! ハイランドチキンの肉ですって!」
「ひええ〜〜〜! い、岩豚? 岩豚って、あの岩豚ですか〜〜〜?」
予想通りの反応に、聞いていた全員が揃って吹き出す。
「ちなみに、こっちにあるのはグラスランドチキンの胸肉で作った鶏ハムサンドで〜す!」
「こっちにあるのは、グラスランドブラウンブルのステーキサンドだぞ〜〜!」
「でもってこっちは、グラスランドブラウンボアの味噌漬け肉サンドだぞ〜!」
「こっちには、グラスランドブラウンブルの肉巻きお握りもありますよ〜!」
「レッドエルクの赤身肉のカツサンドもあるよ〜」
草原エルフ三兄弟とリナさんとランドルさんの笑いながらの声に、ムジカ君とシェルタン君の悲鳴が重なる。
「い、一体幾らしたお肉なんですか! うわあ、俺知らずに食っちゃったよ。そんな金持ってません! 幾ら払えばいいんでしょうか!」
「俺も貧乏ですから払えるお金なんてありませんって! そんな高級肉、俺達みたいな貧乏人のガキに食わせちゃ駄目ですよ〜〜〜!」
慌てる二人の言葉にまた笑いが起こる。
「大丈夫だって。代金を請求するような事はしないから安心して食っていいぞ。ちなみにこの肉は、全部こいつらが狩って来てくれた獲物の肉なんだよ。俺が払ったのは、ギルドに解体をお願いした時の費用だけだって」
揃って呆気に取られる二人を見て、笑って頷いた俺は、マックス達を振り返った。当然、全員がドヤ顔でこっちを見ている。
「これを、あの従魔達が狩ってきてくださった?」
「ええ、従魔にそんな事が出来るんだ……」
自分達がお皿に取ったサンドイッチを呆然と見つめながら、そう呟いて無言になる二人。
「まあ、俺の従魔達は相当知能も高くて賢いし強いからね。そう簡単な事ではないと思うけど、頑張って強い従魔を手に入れれば、いつかは君達にも出来るかもね」
この辺りは従魔達が自主的にやってくれた事だから、どんな従魔でも絶対出来ると断言するのはちょっと違う気がして一応そう言っておく。
「そ、そうですよね。でも、ウサギとか水鳥とかなんかを狩って来てくれたら、ちょっと嬉しいかも……」
ムジカ君がそう言ってハイランドチキンの照り焼きを見つめる。
「俺、ウサギや野鳥程度の小物なら自分で捌けるよ。さすがに牛や豚みたいな大物は無理だけどさ」
笑ったシェルタン君の言葉に、彼の従魔になったオオワシのアセロの目がキラリと輝く。あ、今アセロのやる気スイッチが入ったっぽい。当然、ムジカ君の従魔達も揃ってやる気満々になっている。
「もしかして、その辺りの事も教えた?」
俺の左肩に留まってるファルコに、小さな声でそう質問する。
「一応、人の子が食べられる肉が取れる獲物の種類と一通りの狩り方は教えておきましたよ。鳥達には、幾つかの獲物の生息地域も教えておきましたから、これから先、彼らが旅をしてその地域に近付けば従魔達が頑張ってくれるでしょうね。ですがその為には、もう少し強い従魔をテイムしないといけませんね。まだ今の彼らの従魔達だけでは明らかに戦力不足です。あの中では一番簡単なハイランドチキンであっても、こちらの被害無しに狩るのはかなり難しいでしょうね」
「やっぱりそうか。となると犬科か猫科の従魔はやっぱり必須だなあ」
ファルコの言葉に俺も頷いてちょっと考える。
「まあ、あの鳥好きな子なら、私のような猛禽類をもう少しテイムさせれば従魔達の戦力的にはかなりのものになりますから、ハイランドチキンやグラスランドチキン程度なら大丈夫だと思いますが、グラスランドブラウンブルやブラウンボアなどの重量級の獲物は、鳥達だけではちょっと荷が重いかと思われますね」
ファルコも少し考えてからそう教えてくれた。
成る程。狩る相手と自分側の重量差は、やっぱり狩りを成功させる意味では重要な要素なんだ。
「となると、やっぱり二人には犬科か猫科の従魔が欲しいよなあ。これは、祭りが終わってから改めて狩りに連れて行った方が良さそうだな」
どうするべきか考えて、俺は小さくそう呟く。
この子達だけでなく、まだこの後には一応指導予定になっている白いオオカミを連れていた上位冒険者のアルクスさんって人や、例の暴力テイマーの女性もいる。
早駆け祭りまでまだ日はあるけど、出来れば暴力テイマーの一件は祭りまでには片付けておきたいからなあ。
「うん、これは後でハスフェル達に要相談だな」
嬉しそうにカツサンドを頬張る二人を見ながら、一つため息を吐いた俺も肉巻きおにぎりにかぶりついたのだった。
うん、やっぱり肉巻きおにぎりは美味しいよな!




