この後の予定!
「さてと、それじゃあ一通りの説明も終わった事だし、あとはもう実戦で理解してもらうしかないからなあ」
俺が教えられる事なんてたかが知れている。
あとはもう彼ら自身が従魔達と共に学んで成長していくだけだ。
「どうだ? 天気もいいみたいだし、このまま一緒に郊外へ出て、何かテイムさせてみるか? せっかくだから、シェルタン君も魔獣使いにしてあげたいしさ。なんなら強い従魔をテイムする手伝いくらいは出来るだろうからさ」
せっかく早駆け祭りで多くの人の目に触れるんだから、出来れば紋章を刻んだ従魔に乗せてやりたい。
俺の言葉に、ハスフェル達が揃って頷いてくれる。もちろんランドルさん達やリナさん一家も目を輝かせて頷いてくれた。
「確かにこのあと旅に出るのなら、戦力強化は必須だな。出来ればそれぞれに強い従魔を、最低でも二匹は欲しい」
真顔のハスフェルの言葉にギイも頷き、二人が顔を寄せて相談を始める。それを見たランドルさんとボルヴィスさん、リナさん達まで加わり、顔を寄せて何やら真剣に相談を始めた。
ジェムモンスターの出現場所は、ほぼハスフェルに丸投げしている俺は相談には参加せず、ムジカ君からアワユキを受け取ってメタルカラーのジルバーンを捕まえて、くっつけて一緒にしてやった。
「へえ、スライムにはそんな事も出来るんですね」
興味津々のムジカ君とシェルタン君に、俺は笑って改めてアワユキと合体したジルバーンを見せてやった。
「成る程。もしも超レアなスライムを見つけたら、そんなふうにして隠せばいいんですね!」
手を打ったムジカ君の言葉に、思わず吹き出した俺だったよ。うん、マジで隠してるからな。
「まあ、まだまだこの世界にはいろんなスライムがいるみたいだから、是非とも頑張って集めてコレクションしておくれ。それで、俺が持っていないスライムだったら、どこにいたか是非とも教えてください!」
「了解しました〜〜〜!」
笑った俺の言葉に、揃って嬉しそうに頷く二人だったよ。
「じゃあ、このまま郊外へ出かけようと思うけど……マーサさんはどうしますか?」
クーヘンは、いつもの石付きの短剣と防具を身につけているので、このまますぐにでも狩りに出発出来る。俺達ももちろんいつもの装備を身につけているよ。
だけどマーサさんは、明らかに街の中で過ごすような普段着に薄手のマントを羽織っているだけだ。
「ああ、それなら装備は持って来ているので着替えてきます! 少しだけ待っていてください!」
俺の言葉に目を輝かせたマーサさんは、いきなり収納袋を引っ掴んで早足に部屋を出て行ってしまった。
まあ、鍵を一式持っている彼女だから、どこか空いた部屋で着替えをするつもりなのだろう。
「相変わらずだなあ。さすがは元冒険者だね」
笑った俺の言葉に、彼女が元冒険者だった事を知らなかったらしいボルヴィスさんとムジカ君達は、揃って驚きに目を見開いていたのだった。
「お待たせいたしました!」
以前も見た、いかにも冒険者の装備に身を包んだマーサさんが、そう言いながら部屋に駆け戻ってくる。
「おお、さすがに早いですね。では行きましょうか。ええと、何処か近くに良さそうな場所ってあるか?」
後半は、相談を終えたハスフェル達を振り返っての質問だ。
「ふむ、この顔ぶれなら正直言って何処へでも行けるぞ。ちなみに二人は、テイムしたい希望のジェムモンスターや魔獣はあるか?」
「今なら、どんな相手でも協力してやれるぞ」
ハスフェルとギイの言葉に、揃って目を見開いてポカンと口を開ける二人。
「だって、私達もこの子達をテイムする際にはケンさんや、皆さんに協力頂いたんですからね。新人さんが頑張るって言うのなら、もちろん喜んでお手伝いしますよ」
リナさんが、笑顔でルルちゃんの鼻先を撫でながらそう言って笑う。
ううん、美少女の素敵な笑顔いただきました〜〜〜! 五人の子持ちの男前肝っ玉母さんだけどね。
相変わらず、目から入る情報と脳内の情報が一致しなさすぎてバグるよ。
リナさんのその言葉に息を呑んだ二人は、顔を見合わせてこれまた真剣に相談を始めた。
「あの、ありがとうございます。最強の魔獣使いであるケンさんだけでなく、すごい従魔をたくさん連れた魔獣使いの皆様にまでそう言っていただけで、もう最高に嬉しいです」
俺達に向き直った二人が一礼したあとに、代表して嬉しそうなムジカ君が口を開き、シェルタン君も一緒に揃って深々と頭を上げる。
「気にしなくていい。君達が成長してもっと強くなった時には、今度は君達が後輩達の面倒を見てあげればいい。恩の順送りだよ」
笑ったオンハルトの爺さんの言葉に、揃って目を輝かせて大きく頷く二人だった。
「恩の順送りか。良い言葉だな」
俺も全く同じ気持ちだったので、そう呟いて拍手をしたのだった。
「それで、テイムしたい従魔に希望はあるか?」
ハスフェルの言葉に、まずムジカ君が手を挙げる。
「あの、俺は出来れば猛禽類をテイムしたいと思っているんです。でも、この子達だと万一反撃された時に怖くて手を出せなかったんです」
「ムジカ君は、やっぱり鳥を希望なんだな。じゃあ、何か探そう。シェルタン君は?」
予想通りの希望に笑って頷き、まだ真剣に考えているシェルタン君を見る。
彼は、まだスライムとウサギしかテイムしていないから、こっちの戦力強化は必須だからな。
「ええと、特に希望はないんですが……出来ればもうちょっと強い従魔が欲しいです。ピッピは、脚は確かに速いんですが、それほど強くはないので……」
そう言いながら、チラチラと横目で猫族軍団を見るシェルタン君。
「あれ、もしかして猫族が好き?」
思わずそう尋ねると、慌てたように俺を見てから何度もコクコクと頷いた。
「あ、あの、はい! 猫科の従魔は憧れなんです! すっごく格好良いですから! でも、さすがにまだ俺には無理だと思って諦めていたんですが……その……もしお手伝いいただけるなら、頑張ったら俺でもテイム出来るかなって思って……」
焦りつつも、真剣な様子でそう言って背筋を伸ばす彼を見て、俺は思わず右肩に座っているシャムエル様を見た。
『なあ、どう思う? 彼に猫科のジェムモンスターをテイム出来るかな?』
まだ、能力が開花していないと言っていたのを思い出して、念話でそう尋ねる。もちろんトークルーム全開なので、ハスフェル達にも聞こえている。
「まあ、いきなり猫科の猛獣は止めた方がいいと思うね。この子に関しては、もうちょっと経過見かなあ。ううん、何が遮っているんだろう?」
腕を組んで首を傾げるシャムエル様の言葉に、俺達は揃って顔を見合わせたのだった。
あれ? もしかして何か事情持ちだった?