魔獣使いの楽しみ?
「「ええ〜〜まさか創造神様の交換ですか!」
綺麗にシンクロした二人の叫びと、唐突に俺の膝の上に現れたシャムエル様がドヤ顔になるのを見て、俺はもう堪える間も無く吹き出してしまう。
「あはは、そうなんだよ。そのまさかの創造神様の交換です。朝、目が覚めて焦茶色だったはずの羽の色が変わっているのを見た時には、俺も本当に驚いたなんてもんじゃあなかったんだからな」
笑いながら腕を伸ばしてネージュを撫でてやると、ネージュは小さく鳴いて嬉しそうに目を閉じ、俺の手に額を擦り付けてきた。
おお、ネージュの遠慮がちなセルフよしよし、めっちゃ可愛いぞ!
我も我もって感じに遠慮なく突撃してくるのがデフォな従魔達を見慣れているので、その遠慮がちで控えめな様子が激ツボにハマった俺は、笑って両手でしっかりとネージュを抱きしめてやったよ。
いつもならはしゃいで次々に突撃してくる他の従魔達やお空部隊の子達も、この時ばかりは俺に思いっきり甘えるネージュの邪魔をする事なくじっとしていてくれた。
だけどしばらくしたら我慢の限界が来たみたいで、まずはお空部隊の面々が飛んできて俺の肩や頭の上、それから腕の上に留まって自己主張を始めた。
笑ってネージュを定位置の俺の背中側に乗せてやり、順番にお空部隊の子達を順番に揉みくちゃにしてやる。
そんな俺を、ムジカ君とシェルタン君はキラッキラに目を輝かせて見つめていたのだった。
「ああ、それから一つ魔獣使いならではの話を教えるから、シェルタン君も、早く自分の紋章を持てるようになってくれよな」
お空部隊の子達との若干激しめなスキンシップが一段落したところで、手を止めた俺はにんまりと笑って側にいたアクアを捕まえた。
「ええと、サクラは……ほら出ておいで」
「はあい、ここにいま〜〜す!」
俺の呼びかけに、小物入れの中に入っていたサクラが、ソフトボールサイズになって飛び出してくる。
二匹を両手の上に乗せて、二人の目の前まで持っていく。
「まず、この二色が一番定番のスライムでクリアーとピンク色。スライムの巣ならどこにでもいる一番よく見るスライムだな」
俺の言葉にシェルタン君が笑顔で頷き、胸元からスイミーを出してアクアの横に並べる。
「こんにちわ〜〜!」
「こんにちわ〜〜!」
ビヨンと伸びて仲良く挨拶を交わしている。まあ、さっき紹介の時に一度挨拶しているんだけどさ。
これ以上ないくらいのいい笑顔でスライム達を見つめている二人を見て、俺は後ろを振り返った。
当然、そこには俺のレインボースライム達が勢揃いしてドヤ顔で待機している。
その後ろには、当然だけどメタルスライム達も勢揃いしているよ。
ちなみに、雪スライム達はハンプールに来てからは一切人の目につかないように、他のスライム達とそれぞれ合体して、クロッシェのようにスライム達の中に隠れてもらっている。
小さくなって小物入れの中にずっと隠れていてもらう事も考えたんだけど、こうしておけば、外の気配も分かるらしいし、お手伝いは一緒に出来るらしいからさ。
「ええと、その前に一つ質問なんだけど、いいかな?」
「「はい、なんでしょうか!」」
またしても綺麗にシンクロしたその答えに、小さく笑ってアクアとサクラを二匹まとめておにぎりにしてやる。
「ええと、まずはムジカ君に質問だ。ムジカ君は、スライムをテイムする気はある? それとも今後も鳥だけをテイムするつもりなのかな?」
これは確認しておくべきだろう。
ムジカ君が鳥好きなのはもう間違いないので、もしかしたら鳥の従魔だけにするつもりかもしれないからさ。
笑顔の俺の質問に、ムジカ君は苦笑いしながらシェルタン君が連れているスイミーをそっと手を伸ばして撫でた。
「正直にいうと、最初は鳥だけを集めるつもりでした。でも、シェルタンが連れているスイミーは本当に可愛いんですよ。なので、俺も今後はスライムをテイムしようと思っています。まあ他の種類の子をどこまで集めるかは……ちょっと考えます」
彼の視線の先にレインボースライム達がドヤ顔で並んでいるのを見て、俺はもう一回小さく吹き出した。
「まあ、もちろんどのジェムモンスターや魔獣をテイムするかは本人の自由だから、俺がどうこう言うようなものじゃあないよね。でもこれだけは教えておくよ。クリアーとピンククリアー、それから七色のこの子達を全部集めると、きっと良い事があるよ」
俺の言葉に、レインボースライム達が一斉に跳ね飛んで彼らの目の前に整列する。アクアとサクラも、俺の手の上から飛び出してアルファ達の隣に並んだ。
「ええ? クリアーとピンククリアーに、この……ええと、この七色のスライムですか?」
不思議そうなムジカ君の言葉に、俺だけじゃあなく、ここにいる魔獣使い全員が満面の笑みで頷く。
「ええ? そんなにたくさんですか?」
シェルタン君も、同じように首を傾げつつレインボースライム達を見ている。
「あ! これって雨上がりとかに、たまに空に出る虹の色と同じですね!」
手を打ったシェルタン君の言葉に、ムジカ君も納得したように頷く。
「おう、俺はこの子達をまとめてレインボースライムって呼んでいるよ。数を集める気があるなら、まずはこの子達を集めてみるといいぞ」
「ええ、スライムをそんなに?」
ムジカ君の呟きに、俺が何か言うよりも早くシェルタン君が目を見開いて彼の腕を掴んだ。
「絶対に可愛いから、スライムをテイムする気があるなら超オススメするぞ。ムジカは鳥達の色をコレクションするとか言っていたけど、俺は誰になんと言われようとスライムのカラーをコレクションするつもりなんだよ!」
拳を握った彼のカラーコレクション宣言に、俺達は堪える間も無く吹き出してしまう。
顔を見合わせて揃って吹き出している彼らを見て俺は一つ決心した。
大丈夫だ。この子達は信用出来る。
「アワユキ、出てきてくれるか」
小さな俺の呼びかけに、メタルカラーのアイアンのジルバーンが膝の上に飛び跳ねて上がってきた。
撫でてやると、するりとアワユキがジルバーンから抜け出してくる。
「ほら、ちなみにこんなレアな子もスライムにはいるんだぞ」
両手に乗せた真っ白な雪スライムのアワユキを見て、もうこれ以上ないくらいに目を見開く二人だった。