さて、どっちでしょうか!
「うああ〜〜〜可愛い! 可愛いが過ぎる〜〜〜〜!」
お空部隊の面々に加えてムジカ君が連れていたインコ達までが一緒になって、ソファーの背にむぎゅむぎゅになって並んで留まっているのを見た彼の歓喜の雄叫びに、俺達は揃って吹き出し、彼はもう一回歓喜の雄叫びを上げてから膝から崩れ落ちていたよ。
そしてそんな彼を見て、ドヤ顔になるお空部隊の面々。
「あいつら、絶対ムジカ君がこうなるのを分かっててやったな」
笑った俺の呟きに、またしてもドヤ顔になったお空部隊の子達だった。
新人二人の自己紹介と彼らの従魔を紹介してもらったところで、せっかくだからと俺達の連れている従魔も順番に紹介した。
まあ、どれだけ時間がかかったかは、もう笑い話だ。
そして改めて一匹ずつ紹介していて、自分の連れている従魔の数の多さにちょっと感心したのは内緒だ。
でも、どの子も可愛いから問題なしだ! よし!
ムジカ君とシェルタン君は、初めて見る珍しい従魔達やオーロラ種の従魔達を見て、その度に歓喜の叫びを上げていたよ。ちなみに、従魔達がどれだけドヤ顔になっていたかは、俺達の腹筋の痛みが全てを物語っている。
そして最後のトドメが、俺達全員が連れているスライム達を、全員ソフトボールサイズになってもらって整列させた時だった。
定番カラーのレインボー達に始まり、メタルカラーの子達が大勢整列するのを見た時の彼らの大興奮っぷりは、そりゃあもう最高だったよ。
「噂には聞いていましたが、メタルカラーは初めて見ました。うわあ、これは欲しい……よし、あそこへ行けるくらいに強くなるのを目標にします!」
メタルカラーの子達が出るカルーシュ山脈の奥地の場所はギルドに報告済みなので、行こうと思えば誰でも行ける。ただし、めっちゃ危険な場所なので、行くのはあくまでも自己責任だ。
当たり前だけど、まだまだ冒険者としてもテイマーや魔獣使いとしても新人な彼らが行くには、あまりに危険な場所でもある。
当然彼らもその事は理解しているらしく、強くなったら行く宣言を聞いて密かに安心した俺達だったよ。
「へえ、それにしても俺のメイプルとムジカ君のメイプルは、こうやって見ると本当にそっくりだなあ」
今はむぎゅむぎゅではなく、なんとなくバラけてソファーの背や椅子の背に好きに留っている鳥達だが、ちょうど俺のメイプルとムジカ君のメイプルが並んで留まっているのが目について思わずそう呟く。
「確かにそっくりですね。ええと……どっちが俺のメイプルだ?」
俺の呟きが聞こえたらしいムジカ君が駆け寄ってきて、二匹並んだダブルメイプルを見て焦ったようにそう呟く。
「あの……ケンさんは、分かりますか?」
上目遣いにそう聞かれて、堪えきれずに吹き出す。
「そりゃあ分かるよ。あれ? もしかして分からない?」
からかうようにそう言ってやると、悔しそうに笑って小さく頷く。
なんだよ、男子なのにこの可愛さは、ちょっと今、胸がキュンってなったぞ。
脱線しそうになった思考を明後日の方向へ力一杯蹴り飛ばしておき、一つ深呼吸をしてからダブルメイプルを見る。
「右が俺のメイプルで、左がムジカ君のメイプルだよ」
「「はあい、正解で〜〜〜〜す」」
二羽の嬉しそうな答えに、俺は笑って手を伸ばしてメイプル達を撫でてやった。
「す、凄い! 全然分からなかったです」
目を輝かせるムジカ君の言葉に、彼のメイプルがちょっと悔しそうにしているのが分かってまた吹き出す。
「じゃあ、どっちでしょうか〜〜〜〜!」
その時、二羽がまるで競い合うかのようにそう言って飛び上がり、俺達の頭上をクルクルと入れ替わるかのように回って飛び始めた。
「え? え? え〜〜〜〜?」
しばらくして、また二羽が並んでソファーの背に留まるのを見て、ムジカ君が焦ったようにそう言って俺を振り返った。
当然俺には自分のメイプルが分かっているので、苦笑いしつつ頷く。
「ええと……右が、俺のメイプル……?」
ものすごく迷ってから、恐る恐るそう言って右側の子を指差す。
「残念でした〜〜〜〜私のご主人はこっちで〜〜〜〜す!」
メイプルがそう言って、俺の方に羽ばたいて留まる。
「あ、ごめん」
残った彼のメイプルを見て、ムジカ君がものすごく申し訳なさそうに謝る。
「もう、ご主人ったらダメダメね」
呆れたようなムジカ君のメイプルの言葉に、またしても吹き出した俺は笑いを堪えつつ通訳してやり、彼は顔を覆ってもう一回謝ってから膝から崩れ落ちたのだった。
ううん、ムジカ君は、まだほとんど言葉も分からないみたいだし、まだまだ魔獣使いとしての修行が必要そうだね。