いつものふれあいタイムと朝食
「はあ、いつもながら起きるだけでどうしてこんな毎回大騒ぎになってるんだよ」
ため息と共にそう呟き、くっついてくる従魔達を順番に撫でたり揉んだりしてやる。
従魔達とのスキンシップを堪能していると、最後に遠慮がちにセーブルがくっついてきたので力一杯抱きしめてやる。それから、セーブルの大きな顔を両手で捕まえて心置きなくモミモミさせてもらった。
うん、今日も皆元気だな。よし!
「じゃあ顔洗ってくるよ。ふああ、まだちょっと眠いぞ」
立ち上がって大きな欠伸をしながらそう言って、顔を洗いに水場へ向かう。
「ううん、ここの水場は床に高そうな絨毯が敷いてあるから水遊びは程々にな。濡らしたらちゃんと後片付けするんだぞ」
水遊び大好きチームが揃って目を輝かせてついてくるのを見て、水場の床を見た俺は苦笑いしながらそう言って、とにかく手と顔を洗った。
「ご主人、綺麗にするね〜〜!」
洗い終えて顔を上げたところで、いつものサクラの声と同時に一瞬だけ全身を包まれてすぐに解放される。
もうその時には、濡れた顔も手もサラッサラだし、ちょっと生えていた髭もツルツルになってる。
もちろん、少し汗ばんでいた体もサラサラだ。
「いやあ、いつもながらグッジョブだぞ」
サクラを捕まえてもう一回おにぎりにしてやり、そのまま水槽にフリースローで放り込んでやる。
順番に跳ね飛んでくるスライム達を全員、こちらもフリースローで水槽に放り込んでからマックス達に場所を譲った。
あいつらも一応遠慮しているみたいで、跳ねる水飛沫の量がいつもよりもかなり控えめだったよ。
ベッドへ戻って、とにかく身支度を整える。今日はフル装備だ。
「せっかくの新装備なんだから、早駆け祭りが終わったらまたカルーシュ山脈の奥地へ行ってみてもいいかもな」
剣帯にヘラクレスオオカブトの剣を装備しながら、ふと思いついて思わずそう呟く。
「ああ、それはいいですね。我々があの地を去って以降、勢力範囲にかなりの変動が起こっているでしょうからね。もしかしたら、ご主人が好きそうなジェムモンスターや魔獣が新しく来ているかもしれませんよ」
笑ったセーブルの言葉に思わず手が止まる。
「あはは、それは楽しみだな。だけどもう冗談抜きでそろそろ従魔を増やすのは打ち止めにしないと、収拾がつかなくなりそうだ」
笑った俺の言葉に、従魔達がブーイングしている。何、お前らまだ仲間を増やすつもりなのか?
ジェムモンスターなら小さくなれるからもう少しくらいなら増えても大丈夫かもしれないが、体の大きさを変えられない魔獣は、もう増やしちゃあ駄目だと思う。
だって、今現在ですでにマックスにビアンカ、ニニにカッツェ、そしてマニの五頭だぞ。
マニは他の子達よりは小さめだけど、マックス達はちょっとしたワゴン車なんかよりも大きいくらいなんだから、もうこれ以上は物理的に無理な気がする。
まあ、もしもマックスとビアンカにも子供が生まれたら……それはその時に考えるよ。
側に来てくれたセーブルを撫でていると、頭の中に声が聞こえた。
『おおい、そろそろ起きてくれよ〜〜』
『もう皆、リビングに集合してるぞ〜〜』
『腹が減ったぞ〜〜〜』
ハスフェル達の声を聞いて思わず吹き出す。
『おはよう。もう起きてるよ。今準備が終わったところだからそっちへ行くよ。もうちょい待っててください』
『了解〜〜待ってま〜〜す』
笑った三人の返事が揃い、気配が消えていく。
「よし、じゃあまずは飯食ってマーサさん達待ちだな。おおい、飯食いに行くぞ〜〜そろそろ水遊びは終了です〜〜」
まだ遊んでいたマックス達に声をかけてやる。
「はあい、今片付けてま〜〜す」
元気なスライム達の返事が聞こえてくる。笑って大きく伸びをした俺は、全員集合したのを確認してからリビングへ向かった。
「おはようございます。ああ、お待たせして申し訳ない。すぐに出しますね」
従魔達を引き連れてリビングへ行くと、確かにもう全員集合していて俺はそう言って慌てていつもの朝食メニューを取り出して行った。
「おはようございます。じゃあこれもどうぞ」
リナさん達やアーケルくん達だけでなく、ランドルさんやボルヴィスさんまでが、また色々と手持ちを出してくれる。
まあ、俺が出すのとはまた違ったメニューだから、バリエーションが増えて有り難いよ。
ハスフェル達も色々出してくれていたんだけど、何故だか赤ワインのボトルが並んでいるのは気のせいじゃあないよな。
「飲むのは構わないけど、一応今日から新人講習が始まるんだぞ。忘れないでくれよな」
まあ、あいつらならワインくらいはお茶や水と変わらない感覚なんだろうけどさ。
さすがに俺は朝から飲むのは無理なので、自分用にホットコーヒーと温めたミルクも用意しておく。今日はオーレの気分だ。
シャムエル様用のタマゴサンドとオムレツサンド、それから自分用には鶏ハム入り野菜サンドと惣菜パン、ハスフェルが出してくれた美味しそうなスパイスたっぷりな串焼き肉も一本確保しておく。
「何、これもいるのか?」
俺が串焼き肉を取った途端、目を輝かせて高速ステップを踏み始めたシャムエル様をみた俺は、苦笑いしてもう一本確保したよ。
食事の間の話題は、当然今日来る新人テイマー達の事になる。
「まあ、どんな人なのかは会ってみないとわからないけど、大丈夫そうならとりあえず今日のところは、従魔をテイムする上での心得とか、一日の上限数とか、まずはその辺りの説明からかな。頼むから無茶はしないでくれよ。あ、この串焼き美味しい」
話をしながら齧った串焼き肉が思ったよりも美味しくて思わずそう呟く。
「おう、屋台で見つけて食ってみたら美味かったんで、お願いしてまとめ買いした一品だよ。酒のつまみに最高だぞ」
ドヤ顔のハスフェルにそう言われて、思わず吹き出した俺だったよ。
さて、この後はどうなるんだろうね。