新人達の名前!
「よし! じゃあその段取りでいこう!」
「お任せください! バッチリやってやりますよ!」
「ちょっと楽しみになってきたぞ。暴力野郎に鉄槌を〜〜!」
「お〜〜〜〜〜!」
何やら一致団結して大盛り上がりな仲間達を見て、俺までなんだか胸が一杯になったよ。
なんだかんだ言って、皆自分の従魔を本当に可愛がってくれているからな。
そして、そんなご主人を見てこちらも大いに張り切っている従魔達。
まあ今回は、場合によってはお前らにも頑張って働いてもらわないといけないから、張り切ってくれるのは大歓迎だよ。
「なんだよ、その盛り上がりっぷりは。言っておくけど、あくまでも、今回は脅しが大前提なんだからな。暴力反対だぞ」
盛り上がりすぎて本当に物理で直接攻撃なんかしたら駄目なので、ここは一応釘を刺しておく。
「い、いやだなあ、ケンさん。俺達を信用してくださいよ。そんな無茶はしませんから。大丈夫ですよ」
「そうですよ、大丈夫だから安心してください!」
「どうしてだろう。大丈夫だって言われるたびに不安が増えていくんだけどなあ。俺が間違っているのかな?」
わざとらしく胸を押さえながらそう言ってため息を吐くと、何故か俺以外の全員が大爆笑になった。
そこ! 確かに! とか言って頷いてるんじゃあねえよ!
そのあとは、午前中はなんとなくリビングで寛いでダラダラと過ごし、いつもの作り置きや買い置きで昼の食事を済ませたところで玄関のベルの鳴る音がした。
「お、誰か来たな。マーサさんかな?」
ニニとマニの間で寛ぎすぎてうたた寝していた俺は、ベルの音に慌てて飛び起きて急いで玄関へ向かった。
「はあい、どちら様ですか?」
扉の覗き窓から外を見ると、笑顔のマーサさんとクーヘンがこっちに向かって手を振っていた。
「ああ、いらっしゃい。どうぞ入ってください」
急いで扉を開けて二人と挨拶を交わした俺は、彼らを連れてリビングへ戻った。
笑顔で部屋にいた皆と挨拶を交わしたマーサさんとクーヘンは、一つ深呼吸をしてから頷き合い、マーサさんが持っていた収納袋から数枚の書類を取り出して俺に渡してきた。
「ん? 何の書類ですか?」
マーサさんからそれを受け取り、机の上に置いてから書類を広げた。
「ああ、これが新しいテイマー達ですか。へえ、なかなかに豪華な顔ぶれだなあ」
書かれていたのは、新しいテイマー達の名前や連れている従魔達の種類や名前。それから彼らからの簡単な質問事項が書き出されたものだった。
「へえ、この人は鳥好きなんだ。インコの種類までは書かれていないけど、どんな羽色の子がいるんだろうな」
一番上にあった書類に書かれていた内容を見て思わずそう呟く。
エミューで参加するのだというまだ十代の冒険者の子の名前はムジカ。エミュー以外は全員インコでなんと六羽も連れているんだって。
「あれ、って事は、この子は魔獣使いなんだよな? でも講習会には参加希望なんだ」
「この子は、魔獣使いの紋章を手に入れたばかりだからね。それで意思の疎通がまだまだ下手みたいだね。良い子達だから、この二人は心配ないね」
ムジカって子の書類と、次に書かれていた同じく十代の少年であるシェルタンって名前の書かれた書類を叩いたシャムエル様が、嬉しそうにそう言って俺を見上げる。
「へえ、そうなんだ。ああ、この二人がまず一番最初に一緒に来るみたいだな。ここにメモが貼ってある」
金属製のクリップみたいなので留められたメモには、明日マーサさんが用意したのだという郊外の屋敷にこの二人が行くので、まずは指導をして欲しいとのエルさんの字で走り書きがしてあった。
ちなみに、この二人はハンプールへ来てから初めて会ったらしいんだけど、すぐに意気投合して二人でチームを組んだんだって。
チーム名は。自由なる翼。
うん。良い感じの厨二病的名前だよ。
他の人達の厨二病的チーム名も思い出して苦笑いしつつ書類をめくる。
次に書かれていた白いオオカミを連れた上位冒険のアルクスって人は、ハスフェル達やランドルさん達とは仲が良いって訳ではないが、顔くらいは知っているみたいだ。
アルクスさんは、シェルタンとムジカの二人の講習が済めば、いつでも来てくれるらしい。
シャムエル様は、アルクスって人の書類も見てから笑顔で俺を見上げた。
「この人も信用して良いね。結構真面目な人みたいだから、逆にもっと肩の力を抜く方法を教えてあげるべきかもね」
笑ったシャムエル様がそう教えてくれたので、なんだか嬉しくなった俺はその三人の書類を机の上に並べて置いた。
「なんとなくなんだけど、この三人は、信用出来る人な気がするなあ」
俺の言葉にハスフェル達は笑顔で頷く。彼らはシャムエル様の声が聞こえているからね。
「へえ、ケンさんがそう感じるのなら、そうなんでしょうね。まあ一応俺達は最初は少し離れて彼らの為人を確認させてもらいます。それでもしも暴力野郎側だとしたら……」
「その時は容赦しませんからね!」
これ以上ないくらいの笑顔のアーケル君達の言葉に、もう笑うしかない俺だったよ。
残りの一枚が、例の暴力野郎の友人のテイマーだ。
読んでみて驚いた。名前はレニス。なんと女性だったよ……女性なのに従魔に暴力振るうって、マジか。
東アポンのディアマントさんみたいな筋骨隆々なアマゾネスみたいな人ならどうしよう。
まさかの展開に、冗談抜きで遠い目になった俺だったよ。
ううん、冗談抜きで大丈夫かなあ、俺……。