おはようと朝食
「おはようございます!」
「おはようございます! 今朝もいい天気みたいですね」
「おはようございます! 今日は何をして遊びますかね?」
身支度を整えた俺が従魔達を引き連れて屋根裏部屋の階段を降りて一階のリビングへ向かおうとしたところで、丁度従魔を引き連れて廊下ヘ出てきた草原エルフ三兄弟が俺を見て笑顔で挨拶をしてくれる。
「おはよう。今日はせっかくだから例の新人教育をちょっと考えてみようかと思っているんだ。よかったら手伝ってくれよな」
「もちろんです! 俺なんかでよければ、なんでもお手伝いしますよ!」
満面の笑みのアーケル君の言葉に、俺も笑顔で頷く。
それから彼らの連れている従魔達にも順番に挨拶をして、一緒にリビングへ向かった。
「そういえば、三人は一緒の部屋を使っているんだよな。別に部屋はたくさんあるんだから、一人一部屋使ってくれても、全然構わないんだぞ?」
なんとなく思いついたのでいい機会だしと思ってそう言ってみたんだけど、三人は揃って笑顔で首を振った。
「寝る時はそれぞれの従魔達にくっついて寝ていますけど、一人だと味気ないですからね。馬鹿言って笑い合えるこいつらが一緒だと毎日楽しいですよ」
オリゴー君の言葉に、そんなもんかと納得をする。
遠慮なく好きな事を言い合って喧嘩もして、それでもすぐに仲直りしている彼らの兄弟ならではの良い関係性は、一人っ子だった俺にはちょっと憧れだ。
「いいなあ、俺も兄弟が欲しかったなあ」
思わずそう呟くと、何故かシャムエル様が突然マックスの頭の上から俺の頭の上に現れて、俺の頭をよしよしと撫でてくれた。
べ、別に泣いてなんかないぞ!
「あれ? どうかしましたか?」
こういう事には目敏いアーケル君が、ちょっとだけ心配そうに俺を見上げるもんだから、誤魔化すように笑って首を振った。
「なんでもない、仲が良いなって思って感心していただけだよ」
「「「まあ、遠慮なく喧嘩もしますけどね!」」」
仲良く三人の声が揃い、思わず吹き出した俺だったよ。
「それを含めての仲が良いだね!」
負けじと言い返してやると、三人も揃って吹き出していたよ。
「おはよう、おお、珍しく起こす前に起きてきたな」
「おはよう。確かに珍しいなあ」
「おはようさん。まさに今、そろそろ起こそうかと話をしていたところだったぞ」
アーケル君達とそんな馬鹿話をしつつリビングへ入ると、もう全員集合していてちょっと慌てたよ。
「おはようさん。ああ、お待たせしてごめんよ。じゃあ、すぐに出すから待ってくれよな」
そう言いながら大急ぎでいつもの朝食メニューを色々と取り出していく。それを見て、ランドルさんやアーケル君達もまた色々と出してくれたよ。
シルヴァ達と別れてここへ来るまで、ハスフェル達三人と俺だけの間は出す料理も本当に少しでよかったんだよな。
すっかり大人数がデフォになっていたから、少ない料理が並んだテーブルはなんともいえない寂しさみたいなものがあったんだけど、すっかり元に戻ったよ。
ランドルさんやアーケル君達も色々と出してくれたおかげで賑やかになったテーブルの上を見て、なんだか嬉しくなって笑っちゃった俺だったよ。
「ええと、俺は若干まだ昨日のお酒が残っている気がするから……うん、かぼちゃスープが飲みたい。これは弱った胃腸に優しいからな」
そう呟きながら、鞄に入ってくれたサクラからかぼちゃのポタージュスープの入った寸胴鍋を取り出し、適当に片手鍋に取ってコンロにかけておく。今は火はつけないよ。取る人が温めたければその時に火をつけてもらう用だ。
自分用に取り出したお椀に、たっぷりのかぼちゃのポタージュスープを取り、あとは野菜が不足している気がするので野菜たっぷりの鶏ハムサンドとシャムエル様用のタマゴサンドを取っておく。カットしたトマトと温野菜を色々別のお皿に取り、作り置きの胡麻ドレッシングを軽くかけておく。
飲み物は、少し考えてアイスオーレを用意したよ。そろそろ気温も上がってきているからね。
「あ、じ、み! あ、じ、み! あ〜〜〜〜〜〜っじみ! ジャカジャカジャン!」
横っ飛びステップをカリディアとシンクロ状態で豪快に踏みつつ、久々の味見ダンスを踊るシャムエル様。
最後はカリディアと並んでキメのポーズだ。
「お見事〜〜〜! それでシャムエル様は何がいるんだ?」
拍手をしつつそう聞いてやると、一瞬で取り出したお皿とお椀とグラスを置いたシャムエル様は、笑顔で俺のお皿を見た。
「えっと、タマゴサンドはここにください! かぼちゃのポタージュスープはこっちに、アイスオーレはここにください! 温野菜はカリディアにね!」
「さりげなく野菜をカリディアに押し付けようとするんじゃねえよ。ほら、野菜も食え」
呆れたように笑ってそう言うと、タマゴサンドは丸ごと渡してやり、先にブロッコリーをカリディアに渡してやってから、シャムエル様のお皿にもブロッコリーとトマトを並べた。
「あ、これも欲しかったか? はいどうぞ」
カリディアがトマトを見て一瞬何か言いかけたのに気がついた俺は、笑ってトマトも一切れカリディアに渡してやった。
「ありがとうございます」
目を細めて嬉しそうにそう言ったカリディアは、ブロッコリーをあっという間に食べ終えて、いそいそとトマトを齧り始めた。
ううん。シャムエル様と同じ姿なのに、こっちの方がなんというか食べ方が優雅な気がする。
神様なのに色々とガサツで大雑把なシャムエル様を見てちょっと遠い目になった俺だったよ。
まあ良い、とりあえず食べよう!