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夕食準備だ!

「ふああ〜〜……あれ? 私、どうしてたんだっけ?」

 心置きなくシャムエル様のもふもふ尻尾を堪能させて頂いた俺は、側に来てくれたマックスの頭の上にこっそりとシャムエル様を置いて、さりげなくマックスには俺から離れてもらった。

 予想通り、しばらくして我に返ったシャムエル様が起き上がって不思議そうにキョロキョロしながら首を傾げている。

「どうかしたか?」

 素知らぬ顔でそう言った俺を見て、ハスフェル達がこっそり吹き出していたよ。



「さてと、そろそろ夕食の準備をしておかないとな。お前らはどうする? 部屋に戻るか?」

 自分の部屋状態で、ソファーやこたつで寛いでいるハスフェルとギイとオンハルトの爺さんを見る。

「迷惑でなければ、このまま休憩させてもらうよ。少し体が冷えていたので、コタツが最高だ」

 コタツに潜り込んで寛ぐオンハルトの爺さんの言葉に笑って頷く。

 ちなみにこのコタツは、俺が収納してバイゼンから持ってきたやつだ。

 春とはいえ、まだ朝晩は冷える事もあるからね。

 それに、クーヘン達にもコタツの幸せ感を知ってもらいたいからさ。



「お好きにどうぞ。じゃあ、俺はこっちのキッチンで下準備をしているから、好きなだけ寛いでてくれよな」

 そう言って手を振り、いそいそとオンハルトの爺さんの所へ行って一緒にこたつで寛ぎ始めたシャムエル様を見て笑った俺は、スライム達を引き連れて部屋に隣接するキッチンへ向かった。

「さてと、俺は野菜を食いたいから今日の鍋は野菜多めでいこう」

 そう呟いて、スライム達にいつもの定番野菜を大量に取り出してもらい下準備は任せておく。

「何味にするかなあ。豆乳鍋は野菜が甘くて美味しくなるから絶対作ろう。あとは岩豚でキムチ鍋と根菜類とかもたっぷり入れた味噌鍋も作っておくか。じゃあ、あとはシンプルに水炊きにしてポン酢とゴマだれで食べて貰えばいいな。よし、じゃあこれでいこう」

 お出汁の在庫を確認して、少し少なくなっていた豆乳鍋のお出汁を大量に作り、ついでに並べた大鍋で湯を沸かして、一番出汁と二番出汁も大量に作っておく。

 スライム達にはいつもの定番野菜以外に、朝市で見つけた水菜もどきも大量に切っておいてもらう。

 これは、水炊きや豆乳鍋にも入れるんだけど、岩豚肉と一緒にみぞれ鍋を作るぞ。

 ちなみにみぞれ鍋用のお出汁は、濃いめに出した二番出汁に醤油と味醂とお酒と生姜をすりおろしたのを入れて用意しておく。まあ大体この味付けで何でも美味しく出来るからな。

「ああ、みぞれ鍋用の大根おろしはここに用意しておいてくれるか」

 大きめのボウルを取り出して大きな大根三本と一緒に渡すと、ゼータとエータがボタンユキと一緒になって飲み込んでくれた。

「えっと、えっと……」

 ボタンユキの頑張る声を聞きながら、お出汁に味をつけておく。

 隣の作業テーブルでは、大量に切られた岩豚とハイランドチキンとグラスランドチキンのもも肉がそれぞれいくつものバットに山盛りに用意されている。

「ご主人、手羽先のミンチが出来たので味付けをお願いしま〜〜す!」

 アルファ達のチームにお願いしていた、手羽先つみれ用のミンチと材料がこちらも大量に出来上がっている。

 これも味付けだけ俺がやったら、あとは全部スライム達がやってくれるから超楽ちんだよ。

 今回は、食感がふんわりするように木綿豆腐をもみ込んだのと、ちょっと風味と食感を変えるように、乾燥湯葉を軽く揉んで砕いたのを入れたのも作ってみた。

 大量のつみれ各種も仕込みが完了したところで、一旦全部収納しておき部屋に戻る。

「おおい、下拵えも終わったからリビングへ行って鍋の準備をするぞ〜〜」

「は〜い」

 若干寝ぼけた声が返り、寝ていた三人がモゾモゾと起き出してくる。

 気が抜けたみたいな欠伸をする三人と従魔達も引き連れてリビングへ行くと、何故かリビングのソファーにランドルさんとボルヴィスさんがそれぞれ寝転がって熟睡中だった。

 当然のようにボルヴィスさんにはセラス達が、ランドルさんにも彼の従魔達が小さくなってくっついて一緒に寝ていたよ。

「あれ? 部屋に戻ってなかったんだ」

 でもまあ、わざわざ起こすのも可哀想なので、そのままスルーしてキッチンへ向かう。

「彼らはもともと仲が良かったみたいで、久しぶりに会って、お互いに話す事がたくさんあったみたいだね。お酒を片手に楽しそうに話をしていたよ」

 不意に右肩に現れたシャムエル様の言葉に、鍋を取り出していた手が止まる。

「へえ、そうなんだ。上位冒険者同士って、実は顔見知りが多い?」

「まあそうだね。人数はそれなりにいるけど、いわゆる住むところを定めない流れの冒険者には上位冒険者が多いんだよね。だから何かの依頼で知り合ったりすると、お互いに縁を大事にする事が多いね。意図的にギルドマスターが紹介したりする事もあるよ」

「成る程なあ。優秀な人同士は知り合っておいてもらった方が何かと都合がいいわけか」

 並べた土鍋に用意していたお出汁をそれぞれたっぷりと入れながら感心したようにそう呟く。

「まあ、俺だって気がつけば知り合いがあちこちに大勢出来ているもんなあ。こっちへ来てようやく一年なのにさ」

 ため息を吐きながらしみじみとそう呟く。

 だって、サラリーマン時代は一年なんて本当にあっという間だったのにさあ。

 この世界へ来てからの、一年の間のあまりにも濃厚な出来事の数々と知り合った人達の顔を思い出してしまい、ちょっと遠い目になる俺だったよ。



「さ、気を取り直して料理だ料理だ!」

 気分を変えるように大きめの声でそう呟き、別に取り出したフライパンでキムチ鍋用に岩豚のバラ肉と軽く切ったキムチをたっぷりと炒めておく。

 それが出来たらまずはがっつりキムチ鍋を作り、豆乳鍋や水炊き。それから岩豚入りの味噌鍋なんかも順番に大量に仕込んでいく。

「みぞれ鍋って、作った事あったっけな?」

 考えつつ、用意したお出汁を並んだ土鍋に入れて具材を入れていく。

「ああ、もうこのお出汁の香りの素晴らしい事!」

 煮立ったお鍋の前で思わず深呼吸をしたら、いつの間にかコンロの横に現れたシャムエル様まで一緒になって深呼吸をしていて、思わず吹き出した俺だったよ。

 さて、じゃあ準備も出来た事だし、そろそろ夕食の時間だぞっと。


挿絵(By みてみん)

2024年三月十五日、アース・スターノベル様より発売となりました「もふもふとむくむくと異世界漂流生活」第七巻の表紙となります。

今回も引き続き、れんた様が表紙と挿絵を最高に素敵に描いてくださいました。

もう、この表紙のセーブルの表情が全てを物語っていますよね!

今回は珍しくケンも頑張って戦っていますので、どうぞ貴重なケンの勇姿を見てやってください!

どうぞよろしくお願いしますm(_ _)m

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― 新着の感想 ―
[気になる点] みぞれ鍋の『映える』画像でよくある、大根おろしで作った猫や熊。 アレをお供えしたら、女神様ズが大はしゃぎしそうですね(笑)
[気になる点] こちらのお屋敷に、こたつはいつ搬入されたんでしょうか? 私が読み落としてたのかな?
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