レッツバーベキュータイム!
「じゃあ、バーベキューの開始だ〜〜〜! 岩豚だぞ〜〜〜レッドエルクだぞ〜〜ひれ伏せ〜〜〜!」
にんまりと笑った俺が、大きめに切った岩豚をはじめとする各種ジビエのお肉を笑顔で次々に取り出していく。
一つ出すたびに、大喜びの全員から拍手大喝采をいただいたよ。
「こっちの塊肉も、もうちょっとで焼けるからね〜〜〜!」
笑ったアーケル君達の大きな声に、もう一度拍手が沸き起こる。
そこからはもう大騒ぎで、草原エルフ三兄弟が塊肉を、ハスフェルとギイとランドルさんが主にバーベキューの台の面倒を交代で見てくれたので、俺はもうここからは何もしない宣言をして好きなだけがっつり美味しい肉や野菜を満喫させてもらった。
はあ、何もしないで食べるだけって最高だな。
もちろん冷えたビール各種も大量に用意してくれてあったので、真昼間から好きに飲む贅沢な時間を過ごさせてもらった。
ちなみに、俺が最初に焼けたお肉と塊肉の削いでもらったのを山盛りにして白ビールや地ビールの瓶と一緒にシルヴァ達にお供えしておき、あとは好きに食べてとお願いしておいたら、収めの手が何度も現れては俺のお皿やビールだけでなく、皆の食べているお皿も何度も何度も撫で回したり持ち上げる振りをしたりしていたよ。
もちろん収めの手はいつものように俺を何度も撫でてくれたし、リナさん達やランドルさん達のところにも不意に現れて彼らの頭も楽しそうに撫でてくれていたよ。
いつも思うが、手だけなのに一緒になってはしゃいでいるのが分かるって、凄いよな。
シャムエル様は、俺が肉の準備をしている間中お皿を片手にカリディアと一緒にずっと大はしゃぎで踊っていたんだけど、バーベキューパーティーが始まった後は、最初に俺のお皿から山盛りの肉を取って爆食して、そのあとはもう好き放題状態だったよ。
ハスフェル達のところへ行っては焼きたてのお肉を山盛りになるくらいに貰ってきたり赤ワインをグラスに並々ともらってきたり、俺がビールの栓を開ける度にグラスを取り出してここに欲しいと言っては、その度に高速ステップを踏んだりしていた。まあ、楽しそうでなによりだね。
皆も、もうずっと笑顔で何度も早駆け祭りの成功と勝利を祈って乾杯しては、自分が勝つんだって言っては大笑いしていた。
「焼肉パーティだと自分で焼くのがメインになるけど、こんな風に大きな焼き台を用意したら、まとめて焼いてもらえるから俺は楽でいいよ。ありがとうな」
おかわりの分厚い肉を山盛りにもらった俺の言葉に、ちょうどバーベキューの台を担当してくれていたギイがドヤ顔でサムズアップをしている。
「まあ、普段からお前には世話になりまくっているからな。こんな時ぐらい食べるのをゆっくりと楽しんでくれればいいさ。俺達も肉を焼くのを楽しんでいるから遠慮は無用だぞ」
笑ってそう言い、焼けていた肉を一瞬で取り出したナイフで切って、そのままナイフの先に肉を突き刺してワイルドに立ったまま齧って食べ始めた。
おお、マッチョなイケメンがこんなワイルドな食べ方をすると、まるで映画のワンシーンを見ているみたいだよ。カッケー!
密かに感動しつつ、こっそり真似をしようとナイフを取り出した俺だったけど、手にしたナイフの鋭利な先端を見て、無言で少し考えてから真似をするのを断念した。
だって俺があれをやったら、間違いなくナイフの先でうっかり唇を切って流血の大惨事になる気がしたからさ。
「まあ、賢明な判断だね」
呆れたようなシャムエル様の言葉に、吹き出してからちょっと涙目になった俺だったよ。
「はあ、もう腹一杯だ。もう食えねえ〜〜」
お皿に残っていた最後の一切れを白ビールと一緒に飲み込んだ俺は、そう言ってアクアとサクラが合体した椅子にうつ伏せに倒れ込んだ。かなり酔っ払ってきているので、若干世界が回っているぞ。
「いかんいかん、うつ伏せだと息が出来ないって。ふああ〜〜それにしても良い天気だねえ」
顔面に張り付くスライム椅子に小さく吹き出し、仰向けになってよく晴れた空を見上げて欠伸をした。
「なんだ、もう終わりか? 相変わらず少食だなあ」
バーベキュー台を担当してくれていたハスフェルの呆れたような声に、笑って顔の前で手を振る。
「いやいや、もう充分過ぎるくらい食ったって。お前らの食欲と一緒にしないでくれ」
「何言ってるんですか。もっと食べてくださいよ〜〜!」
「そうですよ〜〜、もうそろそろ焼けますから取りに来てくださ〜〜い!」
「こっちはもう焼けてますよ〜〜!」
最初の三分の一くらいの大きさになった塊肉をくるくると火の上で回しながら、アーケル君達が笑って手を振りながらそう言ってくれる。
「有難いけど、マジでもう限界なんだって。ああ、ありがとうな」
腹筋だけで起き上がってスライム椅子に座ったままそう言ったんだけど、うっかり横から差し出された白ビールの入ったグラスを受け取ってしまう。
「じゃあ乾杯しましょう! 愉快な仲間達バンザ〜〜イ!」
俺に白ビールを渡してくれたランドルさんが、にっこり笑ってそう言って高々とグラスを掲げる。
「愉快な仲間達にカンパ〜〜イ!」
流れでそう言って、俺も一緒に乾杯する。
「はいどうぞ! 美味しく焼けましたから食べてくださいね」
満面の笑みのアーケル君が、これまた山盛りになった削ぎ切りのお肉のお皿をわざわざ持ってきて渡してくれる。
「ああ、受け取ったら食わないわけにはいかないよなあ」
白ビールを飲みながら、受け取った山盛りのお皿から行儀悪く指で肉を一切れ摘んで口に放り込む。
「おお、赤ワインソースの染み具合が絶妙だな。うん、完璧な焼き具合だぞ!」
口に広がる赤ワインソースと肉の旨みを味わって、そう言って満面の笑みでサムズアップする。
不意に現れた収めの手が俺の真似をして一緒になって俺の横に並んでサムズアップするのを見て、思いっきり吹き出した俺は、うっかり赤ワインソースが鼻に入ってしまい、予想以上の刺激と痛みに悶絶する羽目になったのだった。