もふもふ総攻撃とスライム達の新技!
「きゃあ〜〜待って待って! ルルったら! 無茶しないでって!」
ルルちゃんに押し倒されたリナさんの歓喜の悲鳴が聞こえたが、またしても従魔達に揉みくちゃにされてティグに舐めまわされている俺には助けに行く余裕なんてない。まあ、別に助ける必要なんてどこにもないんだけどさ。
「どわあ! ティグ、だからちょっと待てってば。顔! 俺の顔がベタベタなんだってば!」
ティグの大きな顔に抱きついて舐められるのをなんとか防いで顔を上げると、俺と似たような状況でルルちゃんとミニヨンの集中攻撃を受けて床に転がり、顔どころか腕や足まで舐め回されてまたしても歓喜の悲鳴を上げているリナさんが見えて思わず吹き出す。
「ご主人、ベタベタだったら綺麗にするね〜〜〜!」
気の抜けるようなのんびりしたサクラの声が聞こえて、一瞬でティグごと包まれてから即座に解放される。
もうその時には身体中サラッサラになっていたよ。
「いやあ、相変わらずサクラはいい仕事するな。ありがとうな」
笑って、俺の膝の上でドヤ顔になっていたサクラをおにぎりにしてから床に転がしてやる。少し離れたところに一瞬で集まってきたソフトボールサイズのスライム達の塊にサクラが勢いよくぶつかり、まるでビリヤードの球が散るみたいに四方八方に転がっていく。それを見て、同じく一瞬でソフトボールサイズになって集まったそれぞれのスライム達が、転がってきた子にぶち当たってまた散らばって転がっていく。見事なまでの玉突き状態だよ。
「あはは、よし、ナイスショットだな」
ガッツポーズを取った俺の呟きに、同じように従魔達に揉みくちゃにされている皆から笑う声が聞こえた。
「隙あり〜〜〜!」
「ご主人確保!」
しかし、なんとか起きあがろうとした次の瞬間、飛びかかってきたヤミーとマロンに背後から襲われて、側にいたティグごと一回転して床を転がる。
その結果、俺は巨大化したヤミーとマロンとティグの三匹に完全に確保された状態で止まる。
「はなせ〜〜〜〜!」
笑いながらもがいていると腕の力が緩んだので、慌ててすり抜けるみたいにして転がって逃げ出し、立ち上がったところでもう一回即座に三匹に捕まってまた床に押し倒される。
もちろん本気じゃあないから爪も牙も無しだけど、冷静に考えたら今の俺って完全に獲物扱いだよな、これ。
「ぎゃあ〜〜〜また捕まった〜〜〜〜!」
笑いながらそう言って、俺にのしかかってくるマロンとヤミーの顔を交互におにぎりにしてやる。
ご機嫌で喉を鳴らしながら、俺の腹の辺りに額を押し付けてグリグリしてくるティグ。
「ご主人を返せ〜〜!」
「そうだそうだ〜〜!」
「ご主人はマニをおにぎりにするのがお仕事なのにゃ!」
ニニとカッツェの完全に面白がっている声の後に、割と本気なマニの宣言が聞こえて堪えきれずに吹き出す。
そしてそれと同時に、巨大な魔獣三匹に襲い掛かられてもふもふの海に沈む俺。
「だからちょっと待てってば! 順番だって!」
笑いながらそう言って、ニニとカッツェとマニも腕を伸ばして順番におにぎりにしてやる。
「ご主人、私も〜〜〜!」
「混ぜてくださ〜〜い!」
ソレイユとフォールが横から突っ込んできて、マニをおにぎりにしていた俺の腕の間に左右から頭を突っ込んでくる。
「こらこら、ちょっと待てって。落ち着け、お前ら。どわあ〜〜! だから落ち着けってば〜〜〜!」
またしても俺の従魔の猫族軍団が全員揃って飛びかかってきて、もう何が何だか分からないくらいに周り中もふもふの海だ。
そんな感じの嬉しい悲鳴をあげながら猫族軍団と戯れ合っていると、嫉妬したらしいマックスとビアンカ、それからテンペストとファインのイヌ科の子達までが揃って突っ込んできて、さらにもふ度がパワーアップしたよ。
「ご主人ご主人!」
鼻息荒く尻尾扇風機状態なマックスが鼻先を突っ込んできて、仰向けになった俺の顔や腕を舐めまくる。そして当然、それを見てビアンカと狼コンビまでもが俺の身体中至る所をお構いなしに舐め始める。
「ぶわあ、待て待て! ステイ!」
残念ながら、ステイが効くのはマックスだけ。
我に返って即座に離れて良い子座りになったマックスだったけど、他の子達がお構いなしに俺を舐めているのを見て、嬉々としてまた飛びかかってきた。
「だからステイだって! ぶわあ! 待て! ステヒ〜〜〜〜!」
もう全身ベッタベタのローションまみれ状態。一体何のプレイですか、これは?
内心で真顔で突っ込んだ俺だったけど、またしてもサクラが一瞬で俺を包んで綺麗にしてくれる。
「ご主人確保〜〜〜!」
しかし、先ほどと違って綺麗になった後も俺の下半身は大きくなったサクラに完全ホールドされたままだ。
「へ?」
驚いた俺がそう言った瞬間、ポヨンポヨンと跳ねたサクラが俺を捕まえたままその場から逃げ出したのだ。当然のようにそこら中に転がっていたスライム達が一瞬で集まってきてサクラに合体する。
一応、ボルヴィスさんがいるので、金色合成などはしないで単にくっ付いただけだよ。
「よし、このまま逃げるぞ〜〜〜!」
状況を理解した俺の声に、跳ねる速度がグッと上がる。
「逃すか〜〜〜!」
笑ったニニとカッツェ、それからマニが突っ込んできて即座にスライム達に確保される。
「待て待て〜〜〜!」
歓喜の叫びを上げつつ突っ込んでくるマックスとビアンカと狼コンビ、その後をウサギトリオも追いかけてくる。
「きゃ〜〜〜大変〜〜〜〜!」
ニニとカッツェとマニを吐き出したスライム達が、俺だけを確保してまた逃げ出す。
あっけに取られて見ていた俺の他の従魔達も、目を輝かせて逃げるスライムと俺を追いかけ始めた。
右に左に、器用に跳ね飛んでは方向転換をしつつ従魔達から逃げるスライム達と俺。
しかし、広いリビングもこれだけの数の従魔達に追いかけられると、あっという間に壁際に追い込まれてしまう。
「大丈夫だもんね〜〜〜〜!」
まさにマックス達が揃って飛びかかってきたその瞬間、嬉しそうにそう宣言したスライム達はなんと壁を登り始めたのだ。
「あはは、お前らには壁も天井も変わらないってか!」
笑った俺の声に、それぞれ自分の従魔達と戯れていた仲間達の吹き出す音が聞こえた。
「ううん、なかなか見られない眺めだぞ、これは」
完全に天地がひっくり返って天井から床を見下ろす状態になった俺は、笑顔でこっちに向かって手を振る皆に手を振り返しながら、遠慮なく吹き出して大笑いしていたのだった。
「あの、スライムの皆さん。君らは平気みたいだけど、俺は頭に何だか血が上ってきたから、いや、これは頭に血が下がってきたと言うべきか? 要するに頭に血が集まってクラクラしてきたから、そろそろ下ろしてもらいたいんですけど〜〜!」
しばらくの間天井からぶら下がる状態で安全確保されていた俺は、しかし若干血圧が上がってきたのを感じて慌ててスライム達にそうお願いしたのだった。
床に降りた俺が、待ち構えていた従魔達に押し倒されたのは、言うまでもない。