もふ塊と愉快な仲間達!
作中の「もふ塊」は、読者の花丸インコ様の感想から命名させていただきました。
花丸インコ様、素敵な呼び名をありがとうございます!
「じゃあ、もう今日は休憩って事で、気合を入れてダラダラするぞ!」
「お〜〜!」
「お〜〜!」
笑った俺のダラダラするぞ宣言に、何故か大張り切りのアーケル君とシャムエル様の掛け声が重なる。
アーケル君にはシャムエル様が見えていないはずなのに、どうして毎回こうもシンクロするのかねえ。
「ダラダラするのに気合いが必要とは、初めて知ったな」
「確かに。でもまあ、それくらいしっかりダラダラするのもたまには良かろう」
「ふむ、では俺もこいつらと一緒にダラダラさせてもらうとするか」
ハスフェルとギイは、顔を見合わせて面白がるみたいにそう言って笑っている。
オンハルトの爺さんは、そんな彼らの話を横で聞きながら腕を組んでうんうんと頷いている。
「って事で、ダラダラするぞ〜〜〜!」
そんな彼らを置いて俺が駆け寄ったのは、当然だけど全員の従魔達が加わって出来た、部屋の一角を埋め尽くす勢いの超巨大猫団子だ。
いや、猫族だけじゃあなくて色んなもふもふが集まったこれは、もふもふの可愛いしかない塊だよ! まあ中にはもふもふじゃあなくてむくむくな子やふわふわな子とかツルツルの子達なんかもいるけどね。
「よし! これからは、全員の従魔達が全員集合している時のこれを『もふ塊』と呼ぶ事にしよう!」
新たな名前をつけた俺は、両手を広げてもふ塊の上に飛びかかっていった。
「きゃあ〜〜潰されちゃうわ〜〜」
ちょうど飛びかかった俺の真下にいたマニとカリーノの妙に嬉しそうな悲鳴が聞こえて、俺も思わず吹き出す。
「ふふふ、俺に捕まったらこうなるんだぞ〜〜〜」
どこの悪役だよって感じに笑った俺は、両手でそれぞれマニとカリーノを撫でまくってやる。
「きゃ〜〜〜〜!」
またしてもどう聞いても嬉しそうな悲鳴をあげたマニとカリーノに、俺は全身で抱きつきに行く。
ああ、最高に幸せなもふもふタイムだよ。
「前のご主人捕まえたにゃ〜〜〜!」
その時、ミニヨンがそう叫んで俺の上に背後から飛びかかってきた。
「ぎゃあ〜〜誰か助けて〜〜〜!」
記憶にあるよりも一回り以上大きくなったその体に押さえ込まれて、俺も歓喜の悲鳴をあげる。
「ご主人をお助けするのだ!」
「お〜〜〜!」
俺の悲鳴を聞いたもふ塊の一部がほぐれて、大型犬サイズに巨大化したウサギトリオが飛びかかってくる。
「ご主人は渡さにゃいのだ!」
リンクス三兄弟が、飛びかかってくるウサギトリオと楽しいバトルを開始した。
もちろん、爪無し噛みつき無しのお遊びバトルだよ。
とはいえ、ウサギ達の後ろ脚キックの威力はかなりのもので、抱きついていたマニごと何故か俺まで一緒に吹っ飛ばされた。
だけど、飛ばされた先は硬い地面ではなくニニとカッツェの間で、マニはするりと俺の腕から抜け出して、仰向けに倒れている俺はそのまま背中から二匹の間へずり落ちていく。
「なにこの幸せ空間」
最高のもふもふに埋もれて、さらには地響きのような二匹のゴロゴロの音を聞きながらあまりの幸せに目を閉じて寝落ちかけたその時、マニとカリーノとミニヨンが三匹揃って歓声をあげながら俺の鳩尾の辺りに並んで突っ込んできた。
「「「ご主人確保〜〜〜!」」」
「げふぅ!」
三匹の体重が鳩尾に全部まとめてかかって完全に決まって、割と本気の悲鳴をあげる俺。うん、よくゲロらなかったな。偉いぞ俺。
「あ、ごめんね前のご主人」
「ちょっと痛かった?」
「ご主人大丈夫?」
吹き出すハスフェルやリナさん達の声と無邪気な三匹の謝罪の声を聞きつつ、あまりの衝撃にそのまま意識を飛ばした俺だったよ。
ぺしぺしぺしぺし……。
ぺしぺしぺしぺし……。
「うん、起きてるって……」
額と頬を叩かれて半ば無意識に返事をした俺は、違和感を覚えて慌てて起き上がろうとして吹き出した。
「ああそっか。ここで寝落ちしたのか」
両横をニニとカッツェに挟まれた状態で、体を完全にホールドされている。
ちなみに足元には大型犬サイズのセーブルが収まって俺の足置き役になってくれている。
「待って、起きるよ」
もう一回ぺしぺししようとするシャムエル様とカリディアをまとめて両手で捕まえてやり、腹筋を総動員してなんとか起き上がった。
ちょっと踏ん張るのにセーブルを力一杯踏んづけてしまったけど、がっしりと硬い体のセーブルは全然揺らぐ事なくしっかりと支えてくれたよ。
「ありがとうな」
ニニとカッツェ、それからセーブルも順番に撫でてやってから、すぐそばで目を輝かせて俺を見ていたマニとカリーノとミニヨンを振り返る。
「お前ら〜〜自分の体の大きさを考えて遊んでくれ。マジで死ぬかと思ったぞ〜〜〜!」
「ごめんなさいにゃの」
俺におにぎりされて嬉しそうに喉を鳴らすマニ。
左右からもカリーノとミニヨンに頭突きをされて、交互に三匹を撫でまくってやった俺だったよ。
「ご主人私も〜〜〜!」
「私も私も!」
その時、ずずって感じにニニとカッツェが動き、次々に巨大化した従魔達が俺に飛びかかってきた。
「ちょっと待て! ルルちゃんとか俺の従魔以外の子達まで一緒になって飛びかかってきてるんだけど、どういう事だよ!」
巨大化した従魔達総出で揉みくちゃにされてしまい、またしても歓喜の悲鳴を上げた俺だった。
「相変わらず従魔達に大人気だなあ」
「だよなあ。しかも自分の従魔達以外からもあそこまで懐かれるって、もうこれは才能だな」
「確かに才能だな。しかも嫉妬するレベルだなあ」
笑ったギイとオンハルトの爺さんの言葉に、ハスフェルが大笑いしながらそう言ってまた吹き出している。
「確かにこれはハーレムだな」
「だな、確かにこれはちょっと嫉妬するレベルだなあ。いやあ、見習いたいものだ」
二人揃ってしみじみとそう言って吹き出して大爆笑しているランドルさんとボルヴィスさん。
リナさん達はもう一家全員、さっきから揃ってずっと大爆笑している。
「じゃあ、皆も来いよ! 最高のもふ塊にさ!」
「いいですねそれ! もふ塊! 確かにその通りだ! では遠慮なく〜〜〜!」
俺の呼びかけに真っ先に反応したのはアーケル君で、次々に歓声を上げて飛びかかってくる愉快な仲間達。
当然のように飛びかかってきた全員を迎えうつ、もふ塊。
歓喜の叫びがあちこちから聞こえて、俺も堪える間もなく吹き出して声を上げて笑ってニニに抱きついたのだった。