焼肉最高〜〜〜!
「よし、後は好きに食え! 焼肉パーティー開始だ〜〜〜〜!」
俺の宣言に大歓声が上がり、ほぼ全員が岩豚とレッドエルクの赤身肉に突撃する。
「うああ、出遅れた〜〜〜〜!」
慌ててそう叫んだ俺も、空のお皿を手に争奪戦に参加したのだった。
「よし、これだけあれば第一弾は完璧だな」
両手に一枚ずつ持った大きなお皿には、岩豚の肉をはじめ用意した各種お肉が山盛りになっている。もちろん、これは俺とシャムエル様の二人分だよ。
一旦、自分用に決めたコンロの前に山盛りになったお肉の皿を並べておき、今度は野菜を取りに向かう。
「お、案外減ってる。よしよし、しっかり野菜も食え」
いつもならちょっと玉ねぎが減っているくらいでそれ以外はほぼそのまま残っているのだが、今回は先ほどの俺の説明が効いたのだろう、玉ねぎとキャベツ、それからとうもろこしや下茹でした温野菜もそれなりの量が全体に減っている。
なんだか嬉しくなってそう呟いて笑った俺は、新しいお皿に串に刺した輪切りの玉ねぎとキャベツを山盛りに取り、とうもろこしや温野菜、それからスライスしたさつまいもも取ってから席に戻った。
ちなみに味付けは、師匠のレシピで作り置きしてあった焼肉のたれと、すりおろした玉ねぎメインのステーキ用のタレだ。後は岩塩と肉用の配合スパイスがあれば大丈夫だろう。あ、師匠特製ポン酢も出しておくか。
ちょっと考えて追加のポン酢も取り出して、取り皿にいろんなタレも取って運んだ。
「やっき肉! やっき肉! やっき肉〜〜〜〜! 美味しい美味しいやっき肉〜〜〜フォウ!」
ちょっと奇妙な新作焼肉の歌を歌いながら、両手で持った大きなお皿を左右に振り回しつつ下半身だけで高速ステップを踏むシャムエル様。
当然のようにカリディアがすっ飛んできて、こちらも当然のようにシャムエル様のダンスを完コピして踊り出す。もちろんカリディアの手にも同じくらいの大きさのお皿があるよ。
最後は、左右対称の決めのポーズでフィニッシュだ。
「お見事〜〜〜!」
笑って拍手をした俺は、カリディアにお皿から大きめのブロッコリーを一つ取って渡してやった。
「ありがとうございます。ブロッコリーも好きなんです」
その場でさっそくブロッコリーを両手で持って齧り始めたカリディアはたまらなく可愛い。
こっそりもふもふな尻尾を撫でてやり、シャムエル様を振り返った。
「先にシルヴァ達にお供えするから、ちょっとだけ待ってくれよな」
「はあい、待ってます〜〜〜〜!」
笑ってさっきとは違うステップを踏み始めたシャムエル様を見て、慌てたようにその場にブロッコリーを置いたカリディアが即座にすっ飛んでいって横に並び、これまた完コピして踊り始めた。
「じゃあ、これはこっちに並べてっと」
スライム達が用意してくれたいつもの簡易祭壇に、取ってきたお肉と野菜を一通り並べる。
「あ、しまった。ビールを取ってきてないじゃんか!」
不意に重要な忘れ物に気がつき、慌てて立ち上がってお酒のコーナーへ行って冷えた白ビールと地ビールの瓶を適当に取って早足で戻る。
ビール用のグラスも取り出して瓶の横に一緒に並べてから手を合わせて目を閉じる。
「ええと、今夜は焼肉パーティーです。最初のこれはお供えしますが、後はどうぞお好きに取ってください。白ビールと地ビールもよく冷えていますので、一緒にどうぞ」
今回のように好きに焼いて食べるような時は、こう言っておくと出しているものを好きに取ってくれるからな。
時々、リナさん一家やランドルさん達も撫でているから、もしかしたら彼らにも祝福とやらを贈ってくれているのかもしれない。
いつもの俺の頭を撫でる感触に小さく笑って顔を上げると、山盛りのお肉と野菜を何度も撫でた収めの手がお皿ごと持ち上げ、ビール瓶も順番に撫でてから持ち上げていた。俺の視線に気がついたのだろう。最後にOKマークを作ってから消えていく収めの手を見て小さく吹き出す。
「まあ、喜んでくれているみたいだから良いか。さて、焼くぞ〜〜!」
鉄板を載せたコンロの横で、空の皿を手にキラッキラに目を輝かせて俺を見上げているシャムエル様と目が合う。
「で、どれから行く?」
「おまかせで沢山ください!」
雄々しい宣言に吹き出した俺は、少し考えてまずは鉄板の右側に岩豚を並べて真ん中に玉ねぎとキャベツを盛り、温野菜とさつまいもを適当に取って並べておく。空いている反対側には真っ白な脂身を落としてまずはそれを焼いていく。脂身が溶けて脂が出てきたところで、こっちには肉用スパイスを振ったグラスランドブラウンブルの肉を並べる。もうこれも見るだけで美味しそうな、サシと呼ばれる脂身が入った高級肉だよ。
あっという間に岩豚からもがっつり脂が滲み出してきたので、慌ててキャベツと玉ねぎの方へ脂を寄せて混ぜ、野菜には軽く塩胡椒をしておく。
「うああ、めっちゃ脂の良い匂い」
思わずそう呟いて深呼吸をすると、シャムエル様まで一緒になって深呼吸していて笑っちゃったね。
豚肉はしっかり焼かないと駄目なので、岩豚の肉はしっかり焼くよ。とは言ってももう一つも野生肉だから、こっちもしっかり焼くよ。
真ん中の野菜も時折混ぜながら、まずは焼けたグラスランドブラウンブルのお肉をシャムエル様のお皿に並べてやり、残りを自分のお皿に取ってから空いた場所にハイランドチキンとグラスランドチキンの肉を並べた。
「じゃあ乾杯な」
いつもの白ビールをまずは開けてグラスに注ぎ、シャムエル様用のショットグラスにも入れてやる。
「かんぱ〜〜〜い!」
両手でショットグラスを持ったシャムエル様と笑顔で乾杯して、まずはぐいっと半分くらいを一気に飲み干す。
「ううん、冷えたビール美味〜〜〜」
大きなため息を一つ吐いてそう言った俺は、少し冷めたお肉を一口で頬張り残りのビールを飲み干した。
「うああ、冷えたビールと焼肉って最高の相性だよな」
「だね〜〜〜焼肉最高〜〜〜!」
二本目のビールの栓を開ける俺を見て、さっそくおかわりを要求するシャムエル様の空になったショットグラスにもビールを入れてやり、もう一回乾杯した俺だったよ。
ううん、焼肉最高〜〜〜〜!