今日の予定!
「さてと。それじゃあ、いい天気みたいだし少し庭で遊びませんか? もちろん従魔達と一緒に!」
食事を終えて一休みしたところで俺がそう言うと、部屋の端っこで寛いでいた従魔達が一斉に跳ね飛んできた。
「行きましょう行きましょう! 今なら南側の平地が見事な花畑になっていますよ!」
嬉しさのあまりそう言って尻尾扇風機状態で飛び跳ねるマックスの言葉に、俺も笑って立ち上がる。
「童心に帰って従魔達と一緒に遊ぶのも、たまにはいいでしょう?」
笑った俺の言葉に、ボルヴィスさんもハスフェル達と頷き合って笑顔で立ち上がる。
「いいですね。行きましょう!」
ご機嫌なアーケル君の言葉にリナさん達やランドルさんも頷き、全員の従魔達を引き連れて外へ出た。
「ううん、バイゼンのあの広大な庭を見慣れたあとにここを見たら、大した事ない広さだって思っちゃうけど、それって思いっきり比較対象が間違っているよな。ここも充分すぎるくらいに広いって」
外に出たところで庭を見渡しながら思わずそう呟くと、ハスフェル達が揃って吹き出していた。でも、あいつらも頷いていたから、多分考えている事は俺と同じだったんだろう。
「ご主人、ほら乗ってください! 花畑へご案内しますよ!」
「分かったからちょっと落ち着け。ステイ!」
大興奮状態で尻尾扇風機状態なマックスを捕まえてまずは大人しくさせてから、取り出した鞍と手綱を手早く装着する。
全員がそれぞれの騎獣に鞍を乗せてから飛び乗るのを見て、ボルヴィスさんもセラスの背に鞍を、それから首輪に手綱を装着してから飛び乗った。
「セラスを譲ってもらった時に、一緒に祖父から貰った鞍はかなり古くてボロボロだったので、それを馬具屋に持ち込んで参考にしてこれを作ってもらったんです。少々高くつきましたが、なかなかいい仕事をしてくれましたよ」
俺の視線に気がついたのだろうボルヴィスさんが、鞍を叩きながら笑ってそう教えてくれる。
「確かに従魔の背に鞍を乗せようとしたら、ある程度技術のある方でないとかなり難しそうですからねえ」
俺達の会話が聞こえたらしいアーケル君の言葉に俺も笑って頷き、それを聞いたハスフェルが、以前クーヘンの騎獣であるイグアノドンの背中に鞍を乗せる際、頼んだ店のスタッフの皆様方がどれだけ興奮して大激論になっていたかを話して大爆笑になったのだった。
「ううん、もうすっかり春の日差しだなあ」
よく晴れた真っ青な空を見上げて、大きな深呼吸をしてからそう呟く。
ちなみに、ここの庭は広いんだけどバイゼンのお城の庭と違って全体に高低差がかなりあり、場所によっては巨大な岩がそのまむき出しになっている部分もある。
だけどそれでもいくつか広くて平らな場所があり、マックスが言っていた花畑があるのもそんな平らな場所の一つらしい。なので俺達は、まずは揃ってそこへ向かっているところだ。
「あの後、ケンさんと別れてからスライム達をテイムして街へ戻り、魔獣使いの紋章を授けてもらいましたが、その後に真っ先に向かったのが道具屋でした。俺も大きなテントを買いましたよ」
セラスに乗って隣を進む笑顔のボルヴィスさんの言葉に頷きかけた時、小さくなってセラスの頭に並んでいた三匹のスライム達がその言葉を聞いてビヨンと伸びあがるのが見えて、俺は咄嗟に吹き出しそうになるのを腹筋を必死に締めて堪えた。
俺には分かるぞ。今のはドヤ顔だ。
「もしかして、スライムベッドも体験しましたか?」
笑った俺の言葉に、ボルヴィスさんが堪えきれないかのように大きく吹き出す。
「ええ、もちろんテイムしたその日の夜に宿泊所の部屋でやってもらいました。あれは本当に最高ですね。当然、翌日には宿を引き払ってそのあとはもうずっとテント暮らしです。もちろんセラス達とくっついて寝ていますよ。毎日夜が来るのが待ち遠しいくらいです。いやあ、今まであれを知らなかったなんて、本当にもったいない事をしましたよ。教えてくださり感謝します」
少し恥ずかしそうにそう言い、腕を伸ばしてスライム達を順番に撫でてやるボルヴィスさんはとてもいい笑顔だ。
「お役に立てて俺も嬉しいですよ。良かったな」
最後はごく小さな声でそう呟くと、セラスをはじめとした彼の従魔だけでなく、周りにいた俺の従魔達までもが顔を上げて嬉しそうに鳴いたり飛び跳ねたりし始めた。
「はいはい、分かった分かった。ほら、行くぞ! よし、あの花畑まで競争だ!」
ご機嫌で飛び跳ねるマックスの首元を叩いてやり、遠くに花畑が見えてきたところでそう叫んで一気に駆け出す。
「ああ、ずるいぞ!」
笑ったハスフェルとギイの叫ぶ声とアーケル君達の雄叫びが聞こえ、当然のようにそこから花畑までいきなり全員参加の駆けっこが始まり、先頭を走る俺は声を上げて一気にマックスを加速させて花畑に飛び込んでいったのだった。