いつもの朝の光景と朝食タイム!
ぺしぺしぺし……。
ぺしぺしぺし……。
ふみふみふみ……。
ふみふみふみ……。
ふみふみふみ……。
カリカリカリ……。
カリカリカリ……。
つんつんつん……。
チクチクチク……。
しょりしょりしょり……。
ふんふんふんふん!
ふんふんふんふん!
「うん、起きるよ……」
翌朝、いつものモーニングコールに起こされた俺は、眠い目を擦りつつなんとかそう答える。
だけど相変わらず寝汚い俺の体は、全然起きてくれないよ。
腕の中のもふもふのフランマのしっぽを無意識に撫でさすりつつ、俺は気持ちよく二度寝の海へ落っこちて行ったのだった。
ぺしぺしぺしぺし……。
ぺしぺしぺしぺし……。
ふみふみふみふみ……。
ふみふみふみふみ……。
ふみふみふみふみ……。
カリカリカリカリ……。
カリカリカリカリ……。
つんつんつんつん……。
チクチクチクチク……。
しょりしょりしょりしょり……。
ふんふんふんふん!
ふんふんふんふん!
「うん、起きてるって……」
「相変わらずだねえ」
「そうですねえ。でもまあ、これはもはや朝のお約束、様式美と言ってもいいですからねえ」
笑ったシャムエル様とベリーの会話をききながら、内心で様式美ってなんだよ! と、力一杯突っ込んでおく。
「じゃあ起こしますね〜〜〜!」
「は〜い!」
得意げなローザの声に、お空部隊の面々が機嫌良く返事をする。
おい待て! ファルコまで一緒になって、可愛らしくは〜いとか言ってるんじゃねえよ!
力一杯突っ込むも、俺の体は起きてくれず……軽い羽音と同時にあちこちに激痛が走って俺は情けない悲鳴をあげる羽目になったのだった。
マジで、お空部隊の最終モーニングコールは反則だって……。
「全く〜〜怪我したらどうしてくれるんだよ〜〜〜〜!」
なんとか起きた俺は、ただいまベッドに座ってお空部隊を順番におにぎりの刑に処している真っ最中だ。
とはいえ、どの子も嬉しそうな悲鳴を上げているのでお仕置きの意味は皆無なんだけどね。
それ以外の子達も順番に撫でたり揉んだりくすぐったりしてやり、最後に大きな欠伸をした俺は立ち上がって顔を洗いに水場へ向かった。
「ここの屋根裏部屋は、部屋の広さと住み心地はバッチリなんだけど、水場とトイレが部屋の中にないのが欠点だよな。これって留守の間にお願いすれば、水道工事みたくやってくれたりするのかな?」
顔を洗ってサクラに綺麗にしてもらってから、不意に思いついてそう呟く。
「よし、これはマーサさんに相談案件だな」
笑ってそう呟き、屋根裏部屋に戻って身支度を整える。
『おおい、起きてるか〜〜?』
『リビングに集まってるぞ〜〜〜』
その時、ハスフェルとギイの念話の声が聞こえてカバンを持ち上げようとしていた手が止まる。
『おう、おはようさん。準備を終えて今からそっちへ行くところだよ。もう少々お待ちくださ〜〜い』
『了解。じゃあリビングで待ってるよ』
笑ったハスフェルの声と同時に気配が消える。
「じゃあ、まずは朝飯だな。今日はどうしようかねえ」
スライム達の入った鞄を手に、従魔達を引き連れてリビングへ向かったのだった。
「おはようございま〜〜す。じゃあ出すから、好きに食ってくれよな」
リビングへ駆け込み、口々に挨拶してくれる皆と手を叩き合ってから、俺はサクラが入った鞄を手にそう言って買い置きや作り置きをいつものようにたっぷりと取り出していった。
やっぱり、食事は大人数で食べる方が良いよな。
すると、それを見てリナさん一家とランドルさんもそれぞれの収納袋からせっせと取り出し始める。
しかも何とそれを見たボルヴィスさんまでが、屋台飯や串焼きなんかを収納袋から色々と取り出し始めたのだ。おお、海苔巻きっぽいのとか、和食の丼っぽいのもあるぞ。もしかしてボルヴィスさんって和食派なのか?
「ケンさんと少しの間ですがご一緒させていただいて、美味しい食事の重要性を思い知りましたからね。幸いな事に、最近収納袋の値段が全体に少し下がっているんですよ。ウォルスの街で、二百倍の収納力で時間経過が二百分の一という、普通なら到底手が出ない倍率の収納袋が予算内で手に入ったんですよ。なので、これは水と食料入れにする事にしました。早速ウォルスの街で色々と買ってきたので、よければ食べてください。これ以外にも、かなりの倍率の収納袋をいくつか手に入れたので、手持ちの倍率の低いのを幾つか手放しました。まあ、いつもよりは買い取り金額も安かったんですけれどね」
驚く俺を見て、にんまりと笑ったボルヴィスさんが手にしていた収納袋をこっちへ向ける。
うん、とっても何処かで見た覚えのある収納袋だねえ……でもまあ、冒険者の皆様の役に立っているみたいだからいい事にしよう!
「ですよねえ。俺も、もう干し肉と水だけの食事なんて、緊急事態以外は絶対にごめんですよ。ちなみに俺が今食料品入れに使っている収納袋は五百倍で、時間経過も五百分の一なんですよ〜〜」
ドヤ顔のランドルさんの言葉にボルヴィスさんが目を見開き、まだまだ山ほど収納袋を持っている俺達も揃って吹きだしたのだった。
「はあ、ごちそうさまでした。いやあ、どれも最高に美味しかったです」
笑顔のボルヴィスさんの言葉に食べ終えた俺達も揃って笑顔になる。うん、食事が美味しいのって大事だよな。
「さてと、ここで過ごす間って何をすればいいかなあ。バイゼンのお城と違って、ここの庭にはダンジョンなんてありませんからねえ」
大きく腕を伸ばして伸びをしたアーケル君の言葉に、ボルヴィスさんが驚いて目を見開く。
「ご存知なかったですか? ケンさんが、バイゼンにも家を買ったんですよ。家というか、広大な敷地のあるお城です。しかも城壁付きの!」
「ええ、ここだけでも凄いと思っていたのに、バイゼンにお城? しかも庭にダンジョン付き?」
ドヤ顔のアーケル君の言葉に、そう呟いたきり真顔になったボルヴィスさんは、何故か無言で考え込む。
アーケル君、そこは俺がドヤるところじゃあないか?
「バイゼンのお城、しかも広大な敷地にダンジョン付き……もしかして……もしかしてそれって、アッカー城壁に囲まれた、貴族の別荘地の奥にある、あのお城ですか?」
ボルヴィスさんの言葉に、ハスフェルとギイが思いっきり吹き出す。
「おう、そのもしかしてだよ。冬中お城で過ごさせてもらったが、最高の住み心地だったぞ。何しろ、雪で郊外へ出られない真冬でも、敷地内にあるダンジョンに潜り放題だったんだからな」
「なんですか! その最高な環境は!」
拳を握って立ち上がるボルヴィスさんの叫びに、大爆笑になった俺達だったよ。
うん、今年の冬にはボルヴィスさんも、バイゼンのお城へ招待してあげよう。