表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1645/2070

ハンプールへ!

「ごちそうさまでした。美味しかったよ」

「おう、お粗末様」

 満足のため息を吐いて笑った三人の言葉に、俺も笑顔でそう返す。

 イモムシのいた木からかなり離れてようやく大丈夫だと思えたところまで走って止まった俺達は、平らな草地の足場のいい場所に机を出して作り置きの昼食を食べ終えたところだ。

「はあ、これからの時期は森に入る時には頭上に注意が必要だな。冗談抜きであのイモムシの大群はマジで無理だって」

 食後のコーヒーを飲みながらの俺の呟きに、またハスフェル達が大爆笑している。

 いや、幼い日のパーカーいっぱいのイモムシ事件は、マジでトラウマになる体験だったんだからさ!

「まあ、誰でも苦手なものの一つや二つくらいあるさ。その為に仲間がいるんだから、ここは頼ってくれて、いいんだ、ぞ……」

 大真面目な顔のハスフェルが慰めてくれたんだけど、後半は完全に笑っていて全然慰めになっていなかったよ。

「おう、頼りにしてるよ!」

 半ばやけになった俺の返事に、また揃って大爆笑している三人だった。

 覚えてろよお前ら! お前らが苦手なものが出た時には絶対に笑ってやるからな! 

 と、そこまで考えて思わず手が止まる……あれ? あいつらに苦手なものってあるのか?

「なあ、ちなみにお前らの苦手なものって何があるんだ?」

 ストレートな俺の質問に、コーヒーを飲んでいた三人が揃って手を止めて考え込む。

「さてなあ、嫌なものや嫌いなもの程度はあるが、悲鳴を上げて逃げるようなものは少なくとも俺には無いな」

「俺もそうだな。特に無いぞ」

「俺も無いなあ」

 三人の予想通りの返事に、ちょっとチベットスナギツネみたいな目になった俺だったよ。



 そんな無駄話をしつつ、手早く後片付けをして出発する。

「ところで、ここからハンプールまでって、どれくらいなんだ?」

 マックスの背の上に乗って走っていても、まだまだ周囲に見えるのは緑一色で、街道も街の城壁も見当たらない。

「まあ、従魔達の脚の速さなら夕方までには街へ着けるよ」

「そうなんだ。久々に皆に会うのが楽しみだよ。だけどまたすごい人出なんだろうなあ」

 後半はため息とともにそう言った俺の呟きに、三人も困ったように笑っている。

「まあ、すっかり有名人になっちまったからな。そこはもう諦めるしかないだろうさ」

「確かに嫌われるよりはずっと良いけど、やっぱり毎回のあの大騒ぎは勘弁してほしいよ」

 思わずしみじみとそう呟いてため息を吐く。

「だけど今年は自前の別荘があるんだから、郊外への避難はしなくていいかもな」

「ああ、確かにそうだな。あそこなら門を閉めてしまえば大丈夫だからな」

「確かにその通りだ。広い家を買って良かったじゃあないか」

 笑った三人の言葉に俺も笑顔で頷いたよ。

「確かにそうだよな。あそこなら従魔達を思いっきり走らせて遊ばせてやれるし、食事の心配もしなくていいからな」

 笑った俺の言葉に、マックスが得意そうにワンと吠えた。

 ちなみにアクアが確保している肉食従魔達用のお弁当は、今ではかなりのバリエーションになっているらしく、補充も今のように郊外を移動中なんかに、主に猫族軍団がスライムの誰かと一緒に狩りに出掛けて大小の獲物を大量に確保しているんだって。

 なのでもう肉食の子達の食事は、おやつ代わりに時折俺の手持ちの肉をあげる程度で、ほぼ自給自足してくれているんだよな。

 うん、スプラッタ苦手でヘタレの俺は、その辺りの管理については従魔達とスライム、それからベリーに一任している。

 これに関しては、異世界バンザイだよ。マジでさ。

「なあ、あれって街道かな?」

 ぐだぐだとそんな話をしながら進んでいると、はるか前方に街道と思しき等間隔に並んだ明らかに人の手が入った背の高い木が見えてきた。

「ああ、ようやく街道に突き当たったか。さて、また大騒ぎ再びかな?」

 面白がるように笑ったハスフェルの言葉とほぼ同時に、のんびりと並足ぐらいで進んでいた従魔達が一斉に駆け出した。

「目指せ三連覇だな!」

 俺もそう叫んで、駆け出したマックスの手綱を力一杯握りしめたのだった。

 ちなみに途中に見かけた白いオオカミに乗ったあの冒険者らしき人は、少なくとも見る限りこの辺りにはいないようだ。俺達がのんびり飯食っている間に、先に街へ入っちゃったかな?



「あはは、やっぱりこうなったか」

 街道沿いの草原を走りながら、もう笑うしかない俺達だった。

 何しろ街道近くまで走って来た俺達の姿を見た途端、街道を歩いてた人達全員が一斉に声をあげて立ち止まり大騒ぎになったのだ。

 口々に、おかえりと言ってくれるし、中には頑張って三連覇してくれ。あるいはハスフェル達を応援する声もあり、もうとにかく一気にお祭り状態。

 結局俺達は街道に入るのを諦めて、街道沿いの草原を人が来られないくらいの距離を保って街へ向かっているところだ。



 城壁近くまで来たところでようやく街道に入り、ここからはもう完全にパレード状態のまま城門まで進んだのだった。

 いきなりこれはマジで勘弁してくれ。

 俺的には、もうちょっとモブの村人その一くらいの軽い扱いでいいんだからさ……。


挿絵(By みてみん)

2023年12月15日、アーススターノベル様より、もふむくの第六巻が発売となりました!

引き続き表紙とイラストは、れんた様が素敵に描いてくださいました。

新しく仲間になった、カラフルなお空部隊の子達がご機嫌で飛んでいる表紙が目印です!

どうぞよろしくお願いしますm(_ _)m

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ