表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1593/2066

大宴会と少食な俺

「おおい、そろそろ料理を運んでも大丈夫か?」

 ガンスさんと握手を交わした後、タイミングよく大声が聞こえて揃って扉を振り返ると、大きなワゴンが何台も並んでいて、さっき調理場にいた料理長が扉のところから笑顔で手を振っていた。

「はい、今終わりました。それではお願いします」

 笑顔のヴァイトンさんの声に元気よく返事をしたスタッフさん達が、何故かワゴンを置いたまま足早に部屋に入ってきた。

「失礼致します」

 立ったままだった俺達に向かって一礼したスタッフさん達は、即座に動いて壁際に寄せていたテーブルと椅子をあっという間にセッティングしてくれた。

 大きな円形のテーブルが合計三台。何やら大人数になっているけど、これなら全員が余裕をもって座れそうだ。



「では、ケンさんはこちらのテーブルへどうぞ」

 準備が出来たところでさりげなくヴァイトンさんに案内されて、俺は中央にある一番大きなテーブルに用意された席に着く。

 俺の隣にハスフェルとギイをはじめとした神様軍団の男性陣が座り、反対側にはシルヴァとグレイが並んで座る。その隣にギルドマスター達が並んで座り、それからフクシアさんとファータさん姉妹、それにヴォルカン工房の所長のジャックさんも座った。残り二台のテーブルにはリナさん一家とランドルさん、フュンフさんをはじめとした職人さん達とギルドのスタッフさん達が、分かれて若干窮屈そうに並んで座った。これで全員座れたよ。

 それを見て、スタッフさん達が何台ものワゴンを押して部屋に入ってきた。

 一気に部屋中に香ばしい香りが立ちこめる。

「そうそう、この肉が美味しかったんだよ」

 分厚いリブステーキがぎっしり並んだお皿が次々にテーブルに並べられていく。そしてこれまた手早く取り分けてくれるスタッフさん達。

 それ以外にも次々に料理が運ばれてきて、あっという間にテーブルの上は様々な料理で埋め尽くされてしまった。

 そして、俺の目の前に置かれたのはグラスに入った冷えたビール。

「では、乾杯はケンさんにお願いするとしようか」

 笑ったガンスさんの言葉に大きな拍手が湧き起こる。

 苦笑いした俺は、冷えたビールの入ったグラスを持って立ち上がった。全員がそれにならう。

「では、僭越ながら……バイゼンの全ての皆様に幸あれ! そして、最高に愉快な仲間達にも心からの感謝を! 乾杯!」

「乾杯!」

 満面の笑みの皆がそう言って手にしたグラスを高々と掲げる。そして一気にお酒を飲み干した。

 しばしの沈黙の後、もう一度起こる大きな拍手と笑い声。

 笑顔で顔を見合わせて座り、お互い空になったグラスに酒を注ぎ合った。

 そこからはもう、飲めや歌えの大宴会になったよ。

 いや、冗談抜きでどう見ても前菜ではない量の料理が無くなる頃、巨大な鍋に入ったこの店名物のチーズフォンデュがセッティングされ、そこからはもう好きに取って食べるスタイルになり、スタッフさん達はひたすら追加の具材と追いチーズを用意してくれている。

 いやあ、それにしても本当にここのチーズフォンデュは美味い。

 しかも、熱々のチーズのからんだ具は、どれも冷えたビールにもよく合うんだよな。これがさあ!



 それにしても、マジでこの世界の人達は食う量がおかしい。

 大興奮状態で高速ステップを踏むシャムエル様に、大量のチーズフォンデュをセッティングして、さらに自分の分も取っているんだけど、どう考えてもフクシアさんやファータさんよりも俺が食っている量の方が少ない気がするぞ。

「ほら、何してるの。追加の具と追いチーズが来たよ!」

 そろそろ腹具合が限界に近づいている俺は、ちびちびとビールを飲みつつ温野菜にちょっとだけチーズを絡めたのを食べていたんだけど、追加の具が出たのを見たシャムエル様は、目を輝かせて空になったお皿を手に俺の右肩にワープしてきた。

 そして、お皿を水平に持って俺の頬にグイグイと押し付けてきた。

「いや、だからそれは地味に痛いのでやめてくださいって。で、どれがいるんだ?」

 肉肉しい具材が並んだお皿を見ただけて、もう限界な俺は、諦めのため息を吐いて空のお皿を受け取る。

「一通りください! あ、チーズたっぷりでね!」

 キラッキラに目を輝かせたシャムエル様のリクエストに若干遠い目になった俺は、もう一回諦めのため息を吐いてからせっせと新しい具材にチーズを絡めていった。

 もうほぼ手が止まっている俺を見て、スタッフさんがさりげなく箸休め的な副菜を俺の近くへ持ってきてくれる。

 ああ、わかめと湯葉の酢の物っぽいのなら少しくらい食べられそうだ。

 まだまだ山盛りに取っている皆を横目に眺めつつ、もう一回ため息を吐いた俺は新しい小皿に酢の物を取り、いつの間にか満杯になっていた冷えた白ビールの入ったグラスをゆっくりと飲んだ。

「はあ、もう限界に近いぞ。でも、やっぱり美味しいんだよなあ」

 苦笑いしつつ、これもいつの間にか俺のお皿に並んでいた新しい温野菜にたっぷりのチーズがかかった一品を、少し考えてから口に入れたのだった。

「遠慮せずにもっと食べないと! ほら、次を早く早く!」

 あっという間に空になったお皿を手にしたシャムエル様の言葉に、俺はちょっと気が遠くなりつつまだまだ具材が追加されている机の上を見て、もう一回大きなため息を吐いたのだった。



 そのあとは、グラスを手に改めて挨拶に来てくれたフクシアさん姉妹や職人さん達ともお酒を手にのんびりと話をしながら、時折ちょっとだけ野菜にチーズを絡めたのをつまみつつ冷えたビールを飲む。

 まだまだご機嫌で山盛りに取ったチーズフォンデュを食べている皆を見て、大きなため息を吐いた俺だったよ。

 いや、マジで皆どれだけ食うんだよって突っ込んだ俺は、間違っていないと思う、多分……。


挿絵(By みてみん)

2023年8月18日、アーススターノベル様より、もふむくの五巻が発売となりました!

表紙とイラストは引き続き、れんた様が素敵に描いてくださいました。

どうぞよろしくお願いしますm(_ _)m

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] もう自分で取りに行けよシャムエル様w
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ