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デコレーションと全員への課題!

「さてと、ではまずはパンケーキを積み上げていきますよ〜〜〜」

 焼き上がったパンケーキは、一枚の大きさが直径10センチくらいだから、多分ほぼ全員が一口で食べられる大きさだ。焼き上がったそれを何枚かずつ重ねて収納しておいたので、まずはそれを出してから大きめのお皿の真ん中に、出来るだけまっすぐになるように全部で十枚積み上げていく。



「なあ、サクラ。こんなのって出来るか?」

 今手が離せないので、小さな声で作って欲しいものを詳しく説明してお願いしてみる。

「ええと、これでいいのかな?」

 少し考えてサクラが作ってくれたのは。長い竹串の尖っていない方に細長い紙を二つに折って糊付けした、いわゆるお子様ランチに立てている旗みたいなものだ。

 少し大きめの紙にしてもらったので、旗はちょっとした名刺くらいの大きさがある。

「じゃあ。ここで全員に課題だ! たまには自分でやろうな」

 にんまりと笑った俺の言葉に、全員が不思議そうにしている。

「では、まずはシルヴァとグレイに描いてもらおうかな。ほらこっちへ来てくれるか」

 笑顔の俺の手招きに、不思議そうに首を傾げつつ若干ビビった二人が揃ってすぐ側まで来る。

「この旗に、ああ、この四角い紙のところに、言葉でも良いし何かの絵とか紋章とか記号とか、なんでも良いから好きに描いてくれるか。それをパンケーキに飾るからさ」

 俺の言葉に、二人の目が見開かれる。

「な、何でもいいの?」

 二人の声が揃う。

「おう、なんでも良いぞ。一応ここにインクとペンがあるから、好きに使ってくれ。あ、もし誰か色インクとかを持っていたら提供よろしく!」

 俺が持っているのは、普段のメモ書きなんかに使っている黒と青、それか茶色と赤くらいだ。

「それなら俺達は、いっぱい持っていますから出します! どうぞ、好きに使ってください!」

 目を輝かせたアーケル君達草原エルフ三兄弟が、即座に折りたたみ式の机を取り出して組み立てると、何やら次々に収納袋から取り出して並べ始めた。よく見ると、なんとそれは全部画材だった。

 しかも何色もの色鮮やかなインクだけじゃあなくて、クレヨンみたいなカラフルな色の棒がぎっしり入った箱や、太さの違うペンや筆まで出し始めたのだ。

「ええ、画材を持ち歩いているの?」

 ちょっと予想外の量に驚いてそう尋ねると、三人は揃って苦笑いして肩をすくめた。

「最初の頃は、ジェムモンスターや魔獣の絵を描いて、三人それぞれに自分用のジェムモンスター図鑑と魔獣図鑑を作っていたんですよ。だけど途中から絵を描く事そのものが楽しくなってしまって、色々と画材を買い足していたらこんな事になっちゃったんですよね」

「図鑑はもう完成しているんですけど、地域によって色が変わったり、形や大きさにも変化があるので面白いんですよね」

「いくら描いても描き足りないって言うか、なので、今は図鑑の第四集を製作中です!」

 ドヤ顔の三人が、揃ってそう言い胸を張る。

 絵心なんてかけらも無い俺はもう、ただただ感心するしかないよ。

「へえ、そりゃあすごい。じゃあ今度、その出来上がった図鑑を見せてくれよ」

 サクラが取り出してくれた、飾り切りの果物の在庫の数を確認していた俺は、そう言って本を開くふりをする。

「あはは、残念ながら作った本はここには無くて、王都にいる姉が持ってくれているんですよね。じゃあ王都へ行ったら一旦取り返してきますので、次にハンプールでお会いした時に見てください。会心の出来栄えの絵と、正直言って絶対描き直したいような下手な絵があるんですけどね」

 恥ずかしそうなその言葉に首を振る。

 図鑑そのものを自分で作るなんて凄い! しかも手書きでなんて、ちょっと草原エルフ三兄弟を尊敬したよ。いやマジで。



「へえ、じゃあ三人は絵が上手いのね」

 シルヴァとグレイが目を輝かせるのを見て俺は呆れたように二人を見る。

『おいおい、神様がどうして自分でするべき事を人にやらせようとしてるんだよ。良いから好きに描けばいいんだって』

 今にも描いてって叫びそうになっていたので、一応念話で釘を刺しておく。

「うう、分かったわ。じゃあ……自分で描くから教えてもらえるかしら?」

 ちょっと上目遣いなシルヴァの言葉に、草原エルフ三兄弟の目が輝く。

 よしよし、じゃあこっちはお任せしておこう。

 話をしている間にも、サクラはせっせと新しい旗を作ってくれている。

 一応人数の五倍まで作ったところでストップしてもらい、旗を描く指導は三人に任せて俺はデコレーションを開始したよ。



 お皿の中央に聳え立つパンケーキのタワーの周りにぐるっと一周、まずは1センチ角くらいのサイコロ切りにしたフルーツ色々をぎっしりと盛り付け、それからパンケーキの右横に生クリームをたっぷりと落とす。その生クリームの後ろ側にはアイスクリームディッシャーで丸くすくったバニラアイスを二段に積み上げ、一番上にはイチゴとリンゴの花の形の飾り切りを並べる。

 ちなみにアイスクリームディッシャーって、丸い大きなスプーンのようなので、アイスをすくってお皿に落とすと綺麗な丸い形になるやつだ。クリームソーダとか、テンション上がるよな。

 それから、買い置きのお菓子から葉っぱの形のパイを大小三種類取り出し、適当にアイスクリームや生クリームに突き刺してデコレーションする。

 これで、イチゴとリンゴの花に葉っぱが付いたよ。

 パンケーキを挟んだ反対側には、もう一回生クリームと粒あんをスプーン一杯盛り付ける。それから、ここにはマロンアイスを同じくディッシャーで丸くすくって落とし、上には栗の甘露煮の黄色いのと渋皮煮を並べておく。

 抹茶と粉砂糖を混ぜたのを生クリームと、お皿の空いている辺りに振りかける。

 それから、反対側のバニラアイスの横に、バニラアイスをちょっとだけ溶かしてから、お皿の余白部分に点々と落とし、こちら側にはココアを薄く振りかける。

 仕上げに楊枝の先で落としたバニラアイスの溶けたのをゆっくりと引っ掻いて弧を描くみたいにする。こうすれば、ちょっとしたデコレーションになるんだよな。



「よし、出来たぞ。それで旗は描けましたか〜〜?」

 顔を上げてそう聞いたがどこからも返事は無くて、無言で眉間に皺を寄せながら何やら真剣に描いている神様軍団とリナさん夫婦、それからランドルさんの姿があった。うん、まだ終わっていないみたいだね。

 小さく吹き出して一旦作った二つのお皿を収納した俺は、とりあえず人数分のお皿を取り出して、同じデコレーションでどんどん作っていったのだった。

 さて、皆の旗はどんなのになるんだろうな。

挿絵(By みてみん)

「もふもふとむくむくと異世界漂流生活〜おいしいごはん、かみさま、かぞく付き〜」

コミックアース・スター様にてコミックス第一巻が、八月十日に発売となりました!

作画の担当は、エイタツ様。

生き生きと動くマックスやニニ。そしてシャムエル様が、画面いっぱいに所狭しと走り回っています。

最高に可愛くて美味しそうな、もふむくコミカライズ第一巻をどうぞよろしくお願いしますm(_ _)m

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