今度はトリケラトプス戦!
「うわあ、また亜種だけの出現回に当たるとか、マジかよ」
しかし、亜種のトリケラトプスを見てドン引きしているのは俺だけだったようで、目を輝かせて俺達から離れるリナさん一家とシルヴァとグレイを見て、俺は諦めのため息を吐いてヘラクレスオオカブトの剣を抜いた。
マニ達はまたど真ん中最前線に進み出て揃って身構えている。
もちろん、今回もニニとカッツェとルルちゃんによる完璧なマンツーマンフォロー付きだ。
「気をつけるんだぞ。怪我なんて絶対に駄目だからな!」
「その台詞、そのままケンに返させてもらうわ!」
「そうよ! 怪我なんて絶対に駄目なんだからね!」
笑ったシルヴァとグレイの大きな声に、ヘラクレスオオカブトの剣を構えていた俺は、思わず吹き出した。
「おう、気をつけるよ! 怪我は俺も嫌だからな!」
大きな声で言い返すと、シルヴァとグレイは揃って大爆笑していた。
まあ、色々やらかした自覚はあるので、ここは言い訳せずにグッと堪えておこう。
うん、冗談抜きで俺も気をつけよう。
「って事で、背後は任せた! 行くぞ〜〜!」
すぐ近くにいたアクアゴールドを見てそう叫んだ俺は、ハスフェルと頷きあってからすぐ近くを悠々と歩いていた大きなトリケラトプスに向かって同時に駆け出して行ったのだった。
「これで、十匹目!」
ハスフェルとコンビを組んで、タイミングを合わせて左右から同時に攻撃を加えていく。
トリケラトプスと戦う際には、あの巨大な三本角の攻撃を受けるので絶対に正面側に立たない事。二人以上で同時に別方向から攻撃する。フリルへの攻撃は禁止。脚への攻撃が有効等々、これは前回ここでヘラクレスオオカブトの剣のデビュー戦の時に教えて貰った戦い方だ。
それを思い出しつつ、ハスフェルと連携を取りながら順番に巨大な亜種を倒していく。
いやあ、マジで凄いよ。ヘラクレスオオカブトの剣。
あの見るからに分厚そうな皮膚であっても、まるでバターにナイフを突っ込むみたいにすっと通るんだからさ。
おかげで、俺は攻撃の際にはそれほど力を入れる必要がない為、以前と違って疲れの程度もかなり軽い。
持久力のない俺には、マジでありがたい武器だよ。
十匹目を倒した所で俺の息が切れたのを見て、ハスフェルが少し休むように言ってくれたので、お礼を言って下がる。
広場の入り口近くの安全圏まで下がった俺は、美味しい水の入った水筒を取り出してがぶ飲みしつつ、まだまだ張り切って戦う仲間達や従魔達の姿を眺めていた。
草食チームと非戦闘員は、俺が休憩している通路まで入って、そこに避難している。
うん、うちのパーティーは冗談抜きで戦力過剰だから、気にせず避難していてくれよな。
マックスとビアンカ、テンペストとファインの犬族軍団は、どちらもそのままのコンビで戦っているし、ティグとマロン、ヤミーと巨大化したタロンも仲良くコンビを組んで戦っている。
いやあ、どの子達もあの太い首や足に噛み付く長い犬歯を見ただけで、俺は走って逃げるレベルだね。
セーブルだけはコンビを組まずに一対一でトリケラトプスと戦っているけど、毎回ワンパンで勝負がついている。相手の大きさに関係なくどれも一瞬でジェム化させているから、そもそもの戦うレベルがここだけ違うんだよな。
子猫達は指導役のニニ達と見事な連携プレーで、自分の体よりも遥かに大きな亜種のトリケラトプスをこちらも見事に倒している。
とはいえ、牙を剥き出しにしてもの凄い形相で自分の倍以上ある巨大なトリケラトプスに飛びかかっていき、後ろ脚に噛み付いて見事に引き倒したカリーノを見た時には、正直言ってドン引きしたけどね。
トドメはカッツェが刺していたけど、引き倒したトリケラトプスを完全に確保していたんだよな。
いやあ、凄いなんてもんじゃない。
改めてこうやって戦う姿を見ると、子猫達の戦闘力が地下洞窟へ入って以降だけでも、メキメキと伸びているのを実感する。
「そんなに急いで強くなるなよ……もっとずっと、可愛くて小さな子猫のままでいてくれていいんだからさ」
俺の隣に寝転がって、無防備にへそ天で爆睡するマニ達の姿を思い出して、なんだか不意に寂しくなってきて、ちょっとだけ浮かんだ涙をこっそり拭った俺だったよ。