トライロバイト戦の終了とお昼ご飯!
「もふもふとむくむくと異世界漂流生活〜おいしいごはん、かみさま、かぞく付き〜」
おかげさまで、コミックス第一巻が重版になりました!
これも、いつもお読みいただいている皆様のおかげです(^ω^)
本当にありがとうございます!
そろそろ書店様にも並びはじめているとの事ですので、見かけましたら、どうぞよろしくお願いしますm(_ _)m
「マニ! 前だけ見ないの!」
「ほら、後ろがガラ空きだぞ!」
「ミニヨン、言ったでしょう? 常に周囲に気を配らないと駄目なの!」
先ほどと違い、トライロバイトとの乱戦になった途端に、子猫達にはニニやカッツェ、それからルルちゃんの指導がビシバシと飛んでいる。
さらに驚いた事に、子猫達の背後を防御しているスライムが、敢えてトライロバイトをスルーして子猫達のところまで行くのを防がない時があるのだ。
もちろん、指導役のニニ達はしっかりとそれを把握しているので、子猫達がそれに気が付いて即座に防御や対応が出来ればちゃんと褒めるし、気付かずに襲われそうな時には、明らかにわざと直前まで待ってから叩き落として、すぐにしっかり指導しているのだ。
いやあ、何と言うか従魔達の指導の素晴らしさと効率の良さに、俺は横で戦いつつ、それはもう心の底から感心していた。
「成る程なあ。勉強になるよ」
実を言うと、俺が聞いてても参考になる事が沢山ある。
跳ね飛んでくるトライロバイトを槍で突きつつ、俺もマニと一緒にこっそりとニニの戦い方講習を聞いていたのだった。
一面クリアーした後、続けてマンツーマンでの指導の元、四面目までクリアーしたところで子猫達の戦い方がぐっと変わってきた。
最初の頃とは、周囲への気の配り方も戦い方も明らかに大きく違っていて、もう指導役達が手を出すような事はほぼ無くなっていた。何というか、レベルが上がった音が聞こえた気がしたよ。
いやあ、皆凄いねえ。乾燥したスポンジなんかよりもはるかに知識の吸収率が高いぞ。もうぐんぐん吸い込んでるなんてレベルじゃあない。一瞬だよ一瞬!
ううん、若い脳みそって凄いなあ……。
若干、脱線した感想を抱きつつ槍を自分で収納した俺は、スライム達が散らばったジェムと素材をせっせと拾い集めているのを眺めていた。
「どうする? そろそろ昼飯だけど、お城へ戻るか? それとも会議室で食べるか?」
疲労回復用の美味しい水を飲んだ俺は、同じく水を飲んでいるハスフェルにそう尋ねた。
「おう。確かにそろそろ昼時だな。この後、ステゴザウルスとトリケラトプスのところへ行こうと思っているから、城まで戻るよりグリーンスポットの会議室で食う方が近いから、そっちへ行くか」
確かに、食べるだけならそっちの方が早いのは確実だ。
「了解、じゃあ弁当を出すからそれを食って貰えばいいな」
笑った俺の言葉に、あちこちから歓声が上がる。皆、黙っていたけど腹が減っていたみたいだ。
相変わらず、地下にいても皆の腹時計は正確だねえ。
顔を見合わせて笑い合った俺達は、ジェムと素材を回収して戻ってきたスライム達と従魔達を引き連れてその場を離れた。
またしてもゾロゾロと湧いてきているトライロバイトに子猫達は未練があるみたいだったけど、この後何処に行くのかニニ達に教えられて、またしても大興奮状態になっていたよ。
「だから待てって。そこへ行くのは、俺達が飯を食ってからです〜〜!」
今すぐにでも駆け出しそうなマニの尻尾を捕まえ、なんとか首を押さえておにぎりにする。
「ええ、早く行きたいでしゅ〜〜〜」
「でしゅう〜〜〜〜じゃねえよ。人間は、一日三食飯を食う必要があるんです〜〜〜」
割と本気でそう言ったんだけど、周りで聞いていた神様軍団が揃って吹き出していた。
「そうよね! 食事は大事よね!」
「なんならおやつと夜食も大歓迎よ!」
「それは無理! 一日五食は食い過ぎだって!」
振り返った俺の叫びに、その場は大爆笑になったのだった。
元会議室の広いグリーンスポットは、通路や広場と違い天井に光苔があるので、逆にランタンが必要ないんだよな。
ややオレンジがかった白熱灯みたいな優しい光に癒されたのか、部屋に入ったところでほぼ同時に、全員が深呼吸をしたのには笑っちゃったよ。
ちなみにここの地下のグリーンスポットは、元が鉱山なだけに、全て元は会議室や食堂、鉱夫さん達の休憩室だった場所なんだよ。
なので、綺麗な水場はあるし床も平らだ。場所によっては机や戸棚がそのまま残されていた場所まであった。
ちなみにこの会議室は。小さいが三段になった綺麗な水場が壁面にあるだけで、他は何もないだだっ広いだけの空間だ。天井はびっしりと光苔が覆い尽くしている。
以前、街へ行った時に道具屋で買い込んだ横長の会議机と折りたたみ式の椅子を大量に置いてあるので、ここではそれを使うようにしている。
うん、仕事の合間に、会議室で弁当食ってる気分満喫だよ。
「はい、じゃあ好きなのをどうぞ〜〜」
鞄に入ってくれたサクラから、そう言いながら作り置きの弁当をいくつも取り出していく。
おにぎりメインの弁当をはじめ、サンドイッチや惣菜パンの入った包みも並べていく。ドリンクはホットコーヒーとミルク、それからいつものジュースいろいろと麦茶と緑茶を取り出して並べた。
新しく買った白木の平たい弁当箱に入っているのは、パンメインのランチセットだ。
蝋引きの紙を敷いてサラダ、ポテトなんかを彩り良く並べてあり、メインのサンドイッチやハンバーガー、ホットドッグや惣菜パンなんかは、食べやすいように蝋引きの紙で包んでから入れてあるよ。
これって、何となくカフェのテイクアウトっぽくて実は密かに気に入っている。
三段になった重箱をはじめ。曲げわっぱみたいな木製の大きな弁当箱も取り出して並べる。中にはやや小さめのもあるけど、誰も取らないのでこれはほぼ俺用……。
皆、目を輝かせて好きなのを取るのを見て、俺は自分用のやや小さめの弁当箱を手にしかけて、机の上で横っ飛びステップを踏み始めたシャムエル様を見る。
「ええと、シャムエル様はどうする?」
「タマゴサンド三種盛りの入ったのをお願いします!」
「はいはい、これだな」
白木の弁当箱をもう一つ取り、マイカップにホットコーヒーをたっぷりと注ぐ。
ものすごい勢いでステップを踏むシャムエル様を見て、オレンジジュースもグラスに注いでおいた。
「はいどうぞ」
包みを開けて蓋を取り、タマゴサンド三種盛り弁当はシャムエル様の目の前に置いてやる。
「ふわあ、美味しそう! では、いっただっきま〜〜〜す!」
目を輝かせてそう叫んだシャムエル様は、分厚いタマゴサンドに顔から突っ込んでいった。
「相変わらず豪快だねえ」
自分の弁当を開けた俺は、取り出したおにぎりを食べつつ、シャムエル様のもふもふ尻尾をこっそりと突っついて遊んでいたのだった。