地下洞窟へ!
翌朝、いつものモーニングコール総出で起こされた俺は、眠い目を擦りつつまずは子猫達と、それから他の従魔達とのスキンシップを気が済むまで思いっきり楽しんでから、顔を洗って身支度を整えた。
今日は俺も一緒に地下洞窟へ行くから、頭以外はフル装備だよ。もちろん、地下洞窟へ入る際には兜も被るよ。戦う時にはフルフェイスタイプに交換するよ。身の安全は最優先事項だからな。
『おはよう。そろそろ起きてくれよ〜〜』
『おはよう。腹減ったよ〜〜』
ちょうど準備を終えたタイミングで、ハスフェルとギイからのいつものおはようの念話が届く。
『お……おはようさん。ちょうど今、準備が終わったところだよ。それじゃあリビング集合な』
声に出して返事しそうになり、慌てて念話に切り替えて返事を返す。いつものトークルーム全開状態だったみたいで、神様達の笑った返事も聞こえた。
「よし、それじゃあ飯食いに行くか。それで、今日の地下洞窟へは、全員行くのかな? 誰か留守番する?」
顔を上げた俺はまだマックス達が賑やかに遊んでいる水場を見て、それから部屋で寛いている子達を見て少し大きな声でそう尋ねた。
「もちろん行きま〜〜す!」
部屋にいた子達だけでなく、水遊びをしていた犬族軍団とスライム達の全員揃った元気な返事が揃って返ってくる。お空部隊の子達や、非戦闘員の子達も今日は一緒に行くみたいだ。
子猫達はもう、今にも外へ駆け出して行きそうな勢いで飛び跳ねまくっている。朝から元気だねえ……。
「あはは、了解だ。それじゃあリビングへ行くから、そろそろ水遊びは終了してくださ〜〜い」
笑った俺の言葉にもう一回元気な返事が返り、スライム達が濡れたマックス達を一瞬で綺麗にしてくれる。それから水が飛び散った床や周囲も一瞬で綺麗にしてくれたよ。
ううん、いつもながら俺のスライム達が優秀過ぎる。
スライム達の入った鞄を手に、従魔達を全員引き連れてリビングへ向かう。
「ああ、お待たせ! ごめんよ。すぐに用意するからな」
リビングにはもう全員が集合していて、ちょっと慌ててそう言った俺はいつもの朝食メニューを色々と取り出す。
「いやいや、俺達も今来たところだから、そんなに慌てなくても大丈夫ですよ」
笑ったアーケル君がいくつかスープを出してくれたので簡易コンロを出しておき、あとは好きに取ってもらう。
「今日はしっかり食べておかないとな」
大皿を手にした俺は小さくそう呟いて、少し考えて岩豚カツサンドとタマゴサンドをそれぞれ二切れ取り、鶏ハムサンドも二切れ取っておく。
それからマイカップにはたっぷりのホットオーレを注ぎ、スープカップにしているお椀にはカボチャスープをこれもたっぷりと取った。
もちろん、シャムエル様に半分取られるのを予想しての量だ。
「ええと、あとは何かいるか?」
温野菜を少し取り分けながら、お皿の横でカリディアと並んで高速ステップを踏み始めたシャムエル様を見る。
「全部半分ください! それだけあれば充分だよ!」
予想通りの答えに小さく吹き出し、少し考えて激うまジュースミックスもグラスにたっぷりと注いだ。
「はい、半分こな」
差し出されたお皿にはサンドイッチを並べてやり、かぼちゃスープはお椀に、ホットオーレと激うまジュースミックスはそれぞれいつもの盃とショットグラスに入れてやった。完コピダンスを頑張ったカリディアには、いつもの激うまブドウだ。
俺以外は全員が、それぞれ手にした大きなお皿にあふれんばかりに山盛りに取るのを見て、ちょっと遠い目になったのは内緒だ。皆、朝からよく食うねえ……。
「まあいいや。では、いただきます!」
今は神様達全員と一緒にいるのでお供えは無しだ。
手を合わせてそう言うと、岩豚カツサンドに豪快にかぶりついた。
シャムエル様は、まずはタマゴサンドに突撃していき、顔中マヨ玉子だらけにしながら大はしゃぎで食べていたよ。
朝食を終え、少し休憩してから揃って地下洞窟へ入って行った。もちろん、俺は兜を被っているよ。
真っ暗な洞窟内部をランタンを手に一列になって黙々と進む。
「それで、どこから攻めるんだ?」
すぐ側を歩くハスフェルにそう尋ねる。
「おう、まずはトライロバイトのところへ行くよ。まずはそこで子猫達を戦わせてみる。トライロバイトは乱戦の戦い方の上手下手を見るのにはうってつけだからな」
「ああ、確かにそうだな。だけどあの子達って確か乱戦はまだまだ下手で、何度かカッツェ達に助けられていたけど、本当に大丈夫なのか?」
あの、自分がトライロバイトの角に太ももをブッ刺された時のことを思い出して慌てる。
万一、子猫達が俺の目の前であんな事になったら……冷静さを保てる自信無いよ。
「大丈夫だ。心配はいらんよ」
妙に自信ありげにそう言われても、心配なものは心配だ。
割と本気でどうするべきか考えていると、不意に頭の中でトークルームが開く感覚があり目を見開く。
『大丈夫だから心配するな。シルヴァ達がそれぞれの眷属を子猫達の護衛にこっそりつけてくれているから、万一本当に襲われるような事があっても眷属達が守ってくれるよ。ただし、油断させる事になったら意味がないから、護衛の事は子猫達には内緒だ』
驚いて神様軍団を振り返ると、全員揃ってドヤ顔になった。
『そっか、ありがとうな。ついでに俺の事も守ってくれると嬉しいんだけどなあ』
笑ってお礼を言った俺は、ふと思いついてそうお願いしてみる。
『それだけの装備をしていて、何の寝言を言ってるんだよ』
呆れたみたいなギイにそう言われて、誤魔化すように笑った俺だったよ。
確かにその通りだな。
まあ、それじゃあ俺もちょっと頑張ってトライロバイトや恐竜達と戦ってみるか!