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夕立とただいま!

「はあ、ニニのもふもふはやっぱり最高だなあ……」

 年齢イコール彼女いない歴の俺は、今あった出来事を全部まとめてふんじばって明後日の方角へ全力でぶん投げると、ニニのもふもふに顔を埋めて現実逃避しながら大きなため息を吐いてそう呟いた。

 しかし、そのままニニのもふ毛に埋もれてまた寝落ちしかけたところで、不意に誰かに後頭部を軽く叩かれた。

「ほら起きろ。このまま放っておいたらまた寝そうだな。ちょっとひと雨来そうだから、寝るならお城の部屋に戻ってから寝ろ。子猫達も散々遊んで満足したようだし、一旦撤収して戻ろう」

 ハスフェルの笑った声に慌てて空を見る。

 確かに寝る前まではよく晴れた青空が広がっていた記憶があるんだけど、今見上げた空は、真上にどんよりとした灰色の分厚い雲がゆっくりと広がっているところだった。

 地平線の辺りには雲がないので、ピンポイントでこの辺りだけの曇り空みたいだ。

「ああ、確かに今にも降りそうな空になってるな、じゃあ一度戻るか。おおい、お城へ戻るから全員集合〜〜!」

 草地に、好き勝手にバラバラになって転がっていたスライム達が、俺の声に反応して慌てたように一斉に跳ね飛んでそれぞれのご主人の所へ戻ってくる。

 へそ天状態でくつろいでいた猫族軍団も、仕方がないなあって感じに起き上がって、それぞれ好きに伸びたり欠伸(あくび)をしたりし始めた。

 一番最後に起きた子猫達も、一丁前(いっちょまえ)に大きな欠伸をしながらビヨ〜〜ンと伸びて、ちょっと毛繕いなんか始めたよ。

 仲良くお互いをちょっと舐め合ってから立ち上がって、従魔達が全員揃って俺のところへ集まって来る。

 手早くマックスの背中に鞍を乗せて手綱を首輪に取り付ける。

 ハスフェルとギイが、スライム達に手伝ってもらってあっという間にテントを片付け、オンハルトの爺さんが敷いてあった大きな敷布を回収して収納した。転がっていた空瓶は、ギイが全部まとめて収納していたよ。

 敷布とテントの下敷きになってちょっとペシャンコになった草は、すぐに元に戻るだろうからこのまま放置……と思ったら、手の空いたスライム達が、軽く草を起き上がらせてちゃんとケアしていたよ。

 ううん、スライム達が相変わらず優秀すぎだって。

 撤収が完了したところでマックスの背に飛び乗り、全員が騎乗するのを待ってからお城まで一気に走って戻って行ったよ。



「うああ、もうちょっとだけ待ってくれ〜〜〜! あと十秒!」

 しかしもう間も無くお城へ到着というところで、ポツポツと降り始めた大粒の雨が一気に叩きつけるように降り出した。

「ぎゃ〜〜〜〜!」

 あっという間にびしょ濡れになった俺達が、悲鳴を上げながらお城の玄関の屋根のあるところへ飛び込んでいく。

「待って待って。今扉を開けるからな」

 マックスの背から飛び降りながら、即座に収納していた扉の鍵を取り出して鍵を開ける。

「よし、開いた!」

 真冬と違ってすぐに空いた扉の中へ全員が一斉に駆け込んでいく。

 しかし、さすがに全員同時は無理があったみたいで、扉部分に糞詰(ふんづ)まってしまい、動けなくなった全員から揃って悲鳴が上がる。それから、顔を見合わせて大爆笑になったのだった。



「もう、せっかくあんまり濡れなかったのに、びしょ濡れになっちゃったじゃない!」

 シルヴァが怒ったようにそう言いながら塊から抜け出して来る。

 同じく抜け出して笑ったグレイが、全員のびしょ濡れだった体を一瞬で綺麗にしてくれたよ。さすが水の神様!

「じゃあ、もうこのままリビングへ行くか」

 スライム達に綺麗にしてもらいながらそう言うと、全員から同意の声が上がる。まだ夕食にはちょっと早いけど、多分あれは腹が減っている声だ。

 まあ、朝昼兼用でお粥食っただけだもんな。あとは酒ばっかり飲んでいたし。

 って事でのんびりと廊下を歩いてリビングへ向かって歩いていると、ちょうどタイミングよくリナさんとアルデアさんが開いた扉の前で立っているのと鉢合わせした。

「おや、静かだからてっきりお休みなんだとばかり思っていましたが、何処かへお出掛けでしたか?」

 アルデアさんの言葉に、俺は笑って側にいたマニを撫でた。

「寝るつもりだったんですけれどね。子猫達が外で遊びたいって言うもんだから、庭の南側にある岩と砂場のある所へ行ってひと遊びしてきたところです。ついでに一杯やって昼寝もね。今、ちょうど雨が降り出しましたよ」

「ああ、確かに音がしていますね。それでは、もうこのままリビングへ行きますか? 我々は少し前に起きて、リビングに誰かいるかと思って見に行ったんですが、誰もいなかったので戻ってきたところです。ちなみにアーケル達もランドルさんも、揃ってまだ熟睡中でしたよ」

 笑ったアルデアさんの説明に、リナさんも笑いながら頷いている。

「ああ、そうだったんですね。じゃあもうこのままリビングへ行きましょう、ちょっと小腹が空いてきたところなんで。何か摘もうかと思っていたんですよね」

 俺の言葉に二人も笑顔になる。

「それなら、今夜はまた皆で買い置きを色々出して好きに食べましょう」

「ああ、それは良いな。是非やろう」

 笑ったハスフェルの言葉に神様軍団も揃って頷いている。

 笑顔で手を叩き合った俺達は、従魔達もそのまま全員引き連れてのんびりと話しながらリビングへ向かったのだった。


挿絵(By みてみん)

2023年8月18日、アーススターノベル様より、もふむくの五巻が発売となりました!

表紙とイラストは引き続き、れんた様が素敵に描いてくださいました。

どうぞよろしくお願いしますm(_ _)m

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