皆で遊ぶぞ!
リナさん一家とランドルさんは、ここにはいませんでしたね。
作者の確認漏れです。
訂正しましたm(_ _)m
「お待たせ〜〜〜!」
ご機嫌な様子で走ってきたシルヴァとグレイに、玄関先で集合してからかなりの時間が経っていた男性陣は苦笑いするしかない。
「本当に待たされたぞ」
笑ったハスフェルの言葉に、揃ってにっこり笑って誤魔化すシルヴァとグレイ。
「まあ、女性にはきっと俺達には分からない、いろんな準備があるんだよ、きっと……」
「そうよね〜〜〜!」
「さすがはケンだわ! 女心を分かってくれてる〜〜〜!」
「いや、俺ほど女心から遠い位置にいるやつも珍しいと思うぞ。何しろ年齢イコール……さあ、行こう! ほら乗った乗った!」
うっかり余計な事を口走りそうになって慌てて誤魔化し、マックスの背中に飛び乗る。
「ふ〜〜ん。まあいいわ」
何故か揃ってニコリと笑ったシルヴァとグレイが、それぞれテンペストとファインの狼コンビのところへ走って行き、収納していた鞍と手綱を取り出して手早く装着する。
「またよろしくね!」
大きな頭に抱きついてキスするシルヴァを見て、ちょっとテンペストに嫉妬の炎を燃やしたのは内緒だ……って、ちょっと待て! こっちを向いたテンペストが、なんでそんなにドヤ顔なんだよ!
「じゃあ出発だにゃ!」
「行くのにゃ〜〜〜!」
「遊ぶのにゃ〜〜〜〜!」
ご機嫌な子猫達が先頭を走り、全員巨大化した従魔達が一斉にその後を追う。
一声吠えたマックスも、一気に加速して子猫達を追いかけて走り始めた。
とは言っても子猫達の全力疾走はマックス達の最高速度には到底及ばず、速さで言えば早駆け祭りのレースの前半、あの時の流して走るくらいの速さだ。
まあ、普通の馬とかだったら全力疾走なんだろうけど、うちの従魔達は色々と凄すぎるからね。
皆、必死で走る子猫達の周りを取り囲むみたいにして、のんびりと目的の岩場兼砂場まで走っていったのだった。
「到着なんだにゃ〜〜〜!」
「一番にゃ!」
「遊ぶのにゃ〜〜〜〜!」
先陣きって岩場に駆け込んだ子猫達が、一番だと言って大喜びして転げ回っている。
なんというか。その様子を見る周りの従魔達の視線が皆優しすぎる。
しかも、俺と神様軍団の連れている従魔達全員揃って子猫を見る目が完全に保護者目線なんだよな。
繁殖能力のある魔獣達ならいざ知らず、本来繁殖行動をしないはずのジェムモンスターの子達までもが完全に保護者目線なんだから、凄いよな。
なんなんだろう、この本来そういった事には無関心なはずのジェムモンスターである子達までも、全員魅了してしまう子猫達の庇護欲をそそる可愛らしさは。
「じゃあ行ってくるにゃ!」
「ご主人は休憩しててね!」
「いってきま〜〜〜す!」
そんなの知らないとばかりにご機嫌な子猫達は、さっそく岩場へ飛び込んで行った。
それを見て、巨大化した猫族軍団がその後を追って駆け込んでいく。
「うきゃ〜〜〜!」
「誰かたしゅけて〜〜〜!」
「捕まっちゃった〜〜〜!」
妙に嬉しそうな子猫達の声を聞いて、他の従魔達までもが目を輝かせて一斉に飛び込んでいく。
さほど広くない砂場は、転げ回る子猫達と従魔達で、そりゃあもう大変な状態になってる。
跳ね飛ばされた砂を、周りにいたスライム達が集めてはせっせと戻しているのがなんだかおかしくて、俺達は顔を見合わせて大爆笑していたのだった。
しばらくしてはしゃぎすぎたらしい子猫達が脱落して、砂場に寝転がってへそ天状態になって落っこちている。
おい、警戒心は何処に落っことしてきたんだ?
でもまあ、ここは俺の私有地の中で、周りにこれだけ大先輩達がいて、しかも空は、お空部隊プラスアルファ全員集合状態で旋回しているから、上空の制圧も完璧。
確かに襲われる要素はどこにもない。
「ふふふ、しかし慢心は危機を招くのだぞ〜〜〜」
にんまりと笑ってそう言った俺は、両手をワギワギさせながら近くにいたマニに飛びかかった。
「捕まえた〜〜〜〜!」
そう言ってふかふかのお腹に両手を広げて抱きついた。
「おお、お日様に当たっていつも以上にふかふかになってる〜〜〜ううん、最高だね!」
マニの胸元に顔を埋めて、すっかり大きくなった首を抱きしめる。
「ご主人、捕まえた〜〜〜」
目を開けたマニが、両手、じゃなくて両前脚で俺を捕まえてごく軽く猫キックをしてくる。
もう、力加減は完璧でこんな事をされても俺は全然怖くないよ。
「反撃のおにぎりの刑〜〜〜!」
笑って手を伸ばした俺は、マニのもこもこな頬の毛を両手で力一杯掴んで揉みくちゃにしてやる。
「うきゃ〜〜〜おにぎりされちゃった〜〜〜!」
妙に嬉しそうな声で悲鳴をあげるマニを見て、あちこちから吹き出す声が聞こえたのだった。
「マニだけずるいにゃ〜〜〜!」
「カリーノもハグしてほしいにゃ〜〜〜!」
マニと全力で戯れあっていると、そう叫んだミニヨンとカリーノが揃って飛びかかってきた。
「ご主人を守るにゃ!」
ご機嫌でそう叫んで、また前脚で俺を抱きしめるマニ。
「ああ、もうお前らどうしてこんなに可愛いんだよ〜〜〜!」
その上からのしかかられて、笑った俺は手を伸ばしてミニヨンとカリーノも順番におにぎりにしてやったのだった。
ああ、いつまでもこの子猫達と一緒の幸せな時間が続けばいいのに……。
確実に近づいている別れの時を思って、ちょっとだけ涙目になる俺だったよ。