水鳥鍋は最高〜〜〜!
「お待たせ〜〜〜!」
出来上がった鍋を一旦全部自分で収納した俺は、鞄を手にリビングへ戻った。
「お待ちしておりました〜〜〜〜!」
そして、何故かすでに出来上がっているアーケル君達。
「ああ、ずるいぞ! 人が準備している間に飲んでる〜〜!」
机の上に並んだ大量のお酒の瓶を見て、堪える間も無く吹き出す俺。
「いやあ、こいつらが喉が乾いたとかいうもんだから、何か出そうと思ったんだけどさあ」
「俺達が収納して持っているのって、酒ばかりだったんだよなあ」
ハスフェルとギイが、揃ってわざとらしくそう言って笑っている。
嘘つけ。お前らだってジュースやお茶くらい用意して持っているだろうが。
思わず内心でそう突っ込みつつ、自分用のビールグラスを取り出す。そして自分で収納していた冷えた白ビールを取り出す俺。
「はい、どうぞ!」
ハスフェルとギイが同じく冷えた白ビールの瓶を取り出すのはほぼ同時だった。
顔を見合わせて揃って吹き出し、ハスフェルが栓を抜いたよく冷えた白ビールを俺のグラスに注いでくれた。
「子猫達の無事の成長と狩りの成功を祝って、かんぱ〜〜〜い!」
笑顔の俺の言葉に笑顔の全員が揃って唱和してくれて、改めて乾杯して冷えた白ビールをぐいっと飲み干した俺だったよ。
ああ、労働のあとの冷えたビール美味〜〜〜!
「はい、では解説します! 右から、豆乳鍋、濃厚出汁鍋、赤味噌鍋です! 追加のスープは、こっちの鍋からそれぞれ取ってください。追加の肉は全部共通なので、喧嘩しないように分ける事。追加のハイランドチキンとグラスランドチキンの手羽先団子と野菜その他は、ここから取ってください! 以上! あとは好きに食え!」
鍋の時のお約束、大きい方の携帯用の鍋を手にした俺は、大きな声で順番に鍋の説明をして、その後ろにそれぞれの追加のスープがたっぷり入った寸胴鍋を並べ、スライム達が用意してくれた水鳥の肉と手羽先団子や野菜を示してそう言うと、真っ先に豆乳鍋に突撃して行った。
目を輝かせた全員がそれぞれの携帯鍋を手に好きな鍋に突撃していく。
一応アドバンテージを取れた俺は、自分の分とシャムエル様の分としてガッツリ二人前は確保する事が出来たのだった。よし!
「あ、じ、み! あ、じ、み! あ〜〜〜〜〜〜〜っじみ! ジャカジャカジャン!」
お椀を手に、味見ダンスの歌を歌いながら高速ステップを踏むシャムエル様。
そしていつものようにすっ飛んできて、完コピして踊り出すカリディア。
途中手を取り合って回転したり跳ね飛んだりして、最後は揃ってキメのポーズだ。
「ブラボ〜〜〜」
笑って拍手をしてやり、いつものようにカリディアには激うまブドウを一粒渡しておく。
「ここにたっぷりとお願いします! 白ビールはここにください!」
気のせいか、いつもよりも大きい気がするお椀とグラスを差し出され、受け取った俺は苦笑いしつつ水鳥の肉や野菜も一通りたっぷりと入れてやる。
「ううん、半分以上入った気がするんだけど、これも気のせいかなあ。まあいいや。熱いから気をつけろよ」
「気のせいです! ありがとうね。では、いっただっきま〜〜〜す!」
目を輝かせてお椀を受け取ったシャムエル様は、いつもの如く雄々しく宣言するとお椀に頭から突っ込んでいった。だから熱いって言ってるのに。
「熱っ! でも美味しい! でも熱っ! うわあ、この肉本当に濃厚だね。いやあ、水鳥最高〜〜〜!」
満面の笑みでそう言いながら、両手に持った骨付きの塊肉をガシガシと齧る肉食リス再び。
苦笑いしてため息を吐いた俺は、自分の分の薄切り肉を一つ箸で摘んで口に入れた。
「うわっ、本当だ。肉の味がめっちゃ濃厚。へえ、こりゃあ美味しいや」
ハスフェル達が、口を揃えて美味しいと言ったのが分かった。
俺を見てドヤ顔でサムズアップするハスフェルに、俺もドヤ顔でサムズアップを返してやったよ。
もちろんそのあとは別の鍋も順番に攻略していき、追加で用意した肉も手羽先団子もどんどん減っていくので、慌てて追加を用意した俺だったよ。
結局、今日捌いてもらった分の水鳥は、かけらも残さず綺麗に全員の胃袋に収まったのだった。
しかも、鍋に残ったお出汁がこれまた絶品で、豆乳鍋と濃厚出汁鍋にはたっぷりのご飯と卵を入れておじやに。赤味噌鍋にはうどんを入れて、こちらもお出汁まで残らず全部綺麗に完食したのだった。
「いやあ、ハイランドチキンやグラスランドチキンとはまた違った美味しさだったな、肉は確かに硬めだったけど、逆にしっかり噛めば噛むほど濃厚な肉の味が味わえて、これも良かったよな」
「ですよね〜〜〜! いやあ、今日も最高に美味しかったです!」
「ごちそうさまでした!」
「料理上手なケンさんに、かんぱ〜〜〜い!」
満面の笑みのアーケル君の言葉に、オリゴー君とカルン君も揃って笑顔で飲んでいたグラスを高々と掲げる。
「料理上手なケンにかんぱ〜〜い!」
笑ったハスフェルがそれに続き、何故か全員揃っての大合唱になる。
「あはは、ありがとうな! じゃあ、愉快な仲間達にかんぱ〜〜い!」
最高に美味しかったもんだから、食べながら白ビールをグビグビ飲んだせいで若干酔っ払っている俺は、笑いながら大声でそう言って新しい白ビールの瓶の栓を開けてこれまた高々とグラスを掲げた。
「愉快な仲間達にかんぱ〜〜〜い!」
もう何度目か分からない乾杯を大声で叫びつつ、また新しい白ビールの栓を開けた俺だったよ。
あれ、おかしいなあ……なんだか地面が揺れている気がするんだけど、きっと気のせいだよなあ……。