いつもの賑やかな朝の一幕
「それじゃあ今夜はこのままここで休んで、明日はもう一度狩りに行って、そのあとは一旦街へ戻ってレッドエルクをギルドにお願いして捌いてもらい、マニ達は地下洞窟へ行って恐竜の相手をする、と。うん、良いんじゃあないか」
今回は、とにかく子猫達に色んな狩りを体験してもらうのが狩りの第一目的だ。
最初はスライムやウサギみたいな弱いのを相手にしていたんだけど、俺が留守番して料理を作っている間に、行った狩りで色んなジェムモンスターや普通の動物達の相手をさせてみたが、どの子もハスフェル達の予想以上にかなり優秀だったみたいだ。
なのでもう、このまま地下洞窟の恐竜のところへ連れて行くって事で、今後の予定が決定した。
って事で、明日は俺も狩りについて行くよ。
だって、せっかくだから子猫達が戦っているところを俺だってもっと見たい!
「さてと、それじゃあ休むとするか」
それぞれのテントへ戻る皆を見送ってから机の上を綺麗に片付けた俺は、スライムベッドの上で待ち構えているもふもふ軍団の真ん中へ両手を広げて飛び込んで行った。
「いやあ、いつもながら素晴らしいもふもふですなあ……はあ、めっちゃ気持ちいい……」
若干酔っ払っている俺は、小さくそう呟いて腕の中へ飛び込んできたフランマを抱きしめてふわふわな後頭部に顔を埋めた。
「ううん、フランマの尻尾は別格だよなあ。いやあ、これは良きもふもふだよ……」
マニとミニヨンの間に収まった俺は、腕の中のフランマに抱きついてもふもふ尻尾を無意識に撫でつつ、そりゃあもうあっという間に眠りの海へ墜落して行ったのだった。ドボン!
ぺしぺしぺし……。
ぺしぺしぺし……。
ふみふみふみ……。
ふみふみふみ……。
ふみふみふみ……。
カリカリカリ……。
カリカリカリ……。
つんつんつん……。
チクチクチク……。
ショリショリショリ……。
ショリショリショリ……。
ショリショリショリ……。
ショリショリショリ……。
ふんふんふんふん!
ふんふんふんふん!
ふんふんふんふん!
「うん、起きるよ……」
翌朝、いつもの如く従魔達のモーニングコールに起こされた俺は、半ば無意識で返事をしつつそのまま気持ちよく二度寝の海へ落っこちていったのだった。
ぺしぺしぺしぺし……。
ぺしぺしぺしぺし……。
ふみふみふみふみ……。
ふみふみふみふみ……。
ふみふみふみふみ……。
カリカリカリカリ……。
カリカリカリカリ……。
つんつんつんつん……。
チクチクチクチク……。
ショリショリショリショリ……。
ショリショリショリショリ……。
ショリショリショリショリ……。
ショリショリショリショリ……。
ふんふんふんふん!
ふんふんふんふん!
ふんふんふんふん!
「ふぁい、起きてるって……」
「相変わらずだねえ。あれだけ寝ていてどうして起きてるなんて言えるんだろうねえ」
「まあ、ケンですからねえ」
笑ったシャムエル様とベリーの声が聞こえる。
「起きてるって、言ってる、だろう……」
一応頭の中は起きてるんだから、口答えしてみる。
「どう見ても寝てるのに、起きてるとか言わないの! よし、構わないからサクッと起こしちゃってちょうだい!」
いやいや、だからどうして毎回シャムエル様が許可してるんだよ!
脳内で俺が力一杯突っ込んだ直後、バサバサと羽音がして俺の瞼の上辺りと鼻、それから上顎と脇腹の辺りを、それぞれ思いっきりペンチで摘んでねじられたような激痛が走った。
「痛った〜〜〜〜〜〜い! げふう!」
そして悲鳴と同時に、腹を蹴っ飛ばして逃げていくフランマ。
だからこれも毎回毎回、絶対にわざとだよな!
しかも今回は腹とその下の俺の大事な場所の上辺りを思いっきり蹴っ飛ばされて、割と本気で星が散って気が遠くなった俺だったよ。
「ちょっと待て……ここはマジで洒落にならんから……蹴るの禁止だって……」
あまりの痛みに気が遠くなり、腹を押さえて悶絶しながらそのまま転がって、ぐるっと一回転してスライムベッドから転がり落ちる俺。
「危ないよ〜〜ごしゅじ〜〜ん!」
気が抜けるようなマイペースなアクアの声と同時に、優しく触手に受け止められてまたスライムベッドへ逆戻りする。
さすがに今回は俺が本気で悶絶しているのが分かったらしく、放り投げて返却されなかっただけよしとするよ。
結局振り出しに戻ってニニの腹毛にもう一回潜り込んだ俺は、大きなため息を吐いてから側にいたマニに抱きついた。
「ご主人、もう起きにゃさいにゃの!」
笑ったマニが、俺の腕の中でそう言って顎の辺りをベロンと舐める。
「うひゃあ! やめてくれ〜〜〜!」
笑いながらもう一回マニを抱きしめ、胸元の柔らかな毛に顔を埋めて悲鳴を上げる。
マニは毛が短いからニニみたいに腹毛も長くはない。とはいえ背中側よりは遥かに柔らかい毛に俺は幸せを噛み締めて顔を埋めた。
そしてそのまま、二度寝ならぬ幸せの三度目の海へゆっくりと沈んでいったのだった。
ぶくぶくぶく……。