サイドメニューのマカロニサラダ!
「よし、このままマカロニサラダも作ってしまおう」
そう呟いた俺は、もう一度寸胴鍋に水を入れて塩をたっぷりと振り入れてから火にかけ、乾燥マカロニのくるっと丸まった形のを瓶ごと取り出しておき、他の材料の準備を始めた。
使うのはきゅうりとニンジン、それからハムとゆで卵だ。
ちなみにこっちの世界のきゅうりは、俺の知るきゅうりよりも一回りはデカいし太い。お前はヘチマかと突っ込みたくなるような巨大なサイズのもあるのだが、味も食感も至って普通のきゅうりなんだよな。
なので、きゅうりもみを作る時には、縦に四等分にしてから薄切りにしている。
「誰かこのきゅうりを二本、いつもの四等分にしてから薄切りにしてくれるか」
「はあい、やりま〜〜す!」
跳ね飛んできた黄緑色のライムが、パクッと俺の手からキュウリを取って飲み込む。
「ああ、出遅れちゃった〜〜」
メタルスライムのレア、オリハルコンカラーのゲルプがそう言ってペシャンコになる。
「まだまだ仕事はあるよ。ほら、このハムも全部薄切りにしてから1センチ角な」
スライム達に頼む時、例えば1センチ角の角切りにして欲しい時、最初はこっちのサイズに換算していちいちお願いしようとしたんだけど、気が付いたんだよ。
俺のスライムなんだから、基本的に俺がやって欲しい事を全部俺が指示する。スライム達が勝手に何かする事はないからな。って事は、サイズなんて俺が分かっていればいいんだよ。
スライムには実際に切って見せて、これが1センチ角なんだって言えばそれで通じるもんな。
以来、もう気にせずメートル法でお願いしているよ。
「はい! やりま〜〜す!」
即座に復活したゲルプが、用意したハムの塊を飲み込んでモゴモゴし始める。
「それからこの人参も、薄くスライスしてから1センチ角で切ってくれるか」
「はあい! やります!」
そう言ってニンジンを飲み込んだのは、メタルスライムのもう一つのレアキャラ、アダマンタイトカラーのバーミリオンだ。
「それから、誰かゆで卵を十個、殻を剥いてみじん切りにしてくれるか」
「はあい!」
元気な返事と共に、残った子達が一斉に集まってくる。どうやら、何体かずつ合体して、一緒にお仕事しているらしい。
ここでお湯が沸いたので鍋にパスタを投入。いつも定食屋で作っていたののほぼ三倍量だよ。
「誰か、砂時計二回分計ってくれるか」
「はあい!」
砂時計を確保していたデルタが、触手でニョロっと敬礼してから砂時計をひっくり返した。
うちのスライム達は、やる事がいちいち可愛いんだよな。
笑って真っ赤なデルタを突っついてやってから、一番大きなボウルを用意する。
「ええと味付けはマヨネーズとお酢、それからケチャップと砂糖と塩胡椒。あとはオリーブオイルくらいだな。よし、全部ある」
マカロニサラダにはコーンを入れても美味しいんだけど、今回はコーンクリームコロッケがあるから、ここはシンプルな具でいくよ。
薄切りにしたキュウリには塩を振ってしばらく置いてからしっかりと絞って水切りしておく。ここは水が出ないようにしっかりな。
マカロニの茹で時間を見て、茹で時間の少し前に1センチ角に切ったニンジンをマカロニを茹でている鍋に投入。
こうすれば一緒にまとめて茹でられるから鍋が一つで済むんだよな。
時間より少し長めに茹でたニンジン入りマカロニをしっかりと水切りして、ボウルに放り込む。熱いうちに、くっつかないようにオリーブオイルを回しかけておく。
絞ったキュウリと、切ったハムとゆで卵も全部ここで投入〜〜!
全体に軽く混ぜたら、ここにたっぷりのマヨネーズとケチャップ少々、大きめのスプーンと箸の両方を使って満遍なく混ぜていく。お酢を加えてなめらかになったところで塩胡椒で味を整えれば完成だ。
これも、定食屋の定番メニューだったからな。作り方完璧に覚えてるよ。ありがとう店長! おかげで役に立ってるよ。
頭の中で定食屋の店長にお礼を言いつつ、トンカツ屋のマカロニサラダを思い出した。
「あっちはカニカマとか枝豆とかも入ってたんだよな。カニカマはさすがに無いもんなあ。ううん、あ! ツナを入れたのも作ってみるか」
こういうのって、具は何入れても美味しいんだよな。
結局、いろんな形のマカロニがあったので、具を変えてツナとゆで卵のマカロニサラダと、ゆで卵と刻んだレタスをたっぷり入れたサッパリ系マカロニサラダを作ったところで時間切れとなった。
タイミングよくここで腹ペコ神様達から帰るコールが届いたんだよ。
『今から帰るからね〜〜〜!』
『お腹ぺこぺこで〜〜す!』
『おう、リクエストのジビエハンバーグ、たっぷり作ってあるから、早く帰っておいで』
『きゃ〜〜〜〜〜〜〜!』
『ありがとうケン! 大好き〜〜〜!』
笑った俺の返事に叫ぶシルヴァとグレイの歓声の念話を聞きつつ、味見のマカロニサラダ盛り合わせを爆食しているシャムエル様の尻尾を突っついて遊ぶ俺だったよ。