ナポリタンとコーンクリームコロッケ!
「ううん、やっぱりタマゴサンドは美味しいねえ」
俺が出してやったタマゴサンドを両手で持って齧りながら、ご機嫌で尻尾を揺らすシャムエル様はたまらなく可愛い。
「まあ、好きなだけ食ってください」
俺はご飯が食べたい気分だったので、焼きおにぎりと味噌汁、それからだし巻き卵とおからサラダを食べながら、時々シャムエル様のもふもふな尻尾をこっそり突っついていたよ。
食事が終われば、また料理の続きだ。
もう一回ジビエハンバーグとチーズインハンバーグを作り、今度は普通に焼いておいた。
ケチャップや大根おろし照り焼き味など、ここまで作っておけばいろいろアレンジ出来るからな。
それから、思いついたのでジビエミンチで平たい丸と四角のパテを大量に作って焼いておいた。
これは朝食や昼食の自分で作るメニュー用だ。こうしておけば、自分でバーガーとかサンドイッチなんかを作れるだろうからな。
「あとはサイドメニューを作っておくか。あ、マカロニサラダとかシルヴァ達好きそうだな」
乾燥スパゲッティやパスタもいろいろ買い込んであるんだけど、考えてみたらパスタメニューってあまり作った覚えがない。
ミートソーススパゲッティと、冬場にマカロニグラタンを作ったくらいだ。
「あ、ナポリタンとかも良さそうだよな。あれなら付け合わせにも使えそうだし、作っておくか」
って事で、寸胴鍋にお湯を沸かしてパスタを茹でていく。
「誰か、砂時計二回分測ってください。それからスライス玉ねぎと、ピーマンは細く切ったのを作っておいてくれるか。あと、このポークウインナーを斜め削ぎ切りにお願い」
サクラに取り出してもらった材料を並べながらお願いして、パスタを茹でている間に材料を準備してもらう。
「はあい! じゃあ切りま〜〜す!」
嬉々として集まってきて材料を飲み込んだスライム達が、一斉にモゴモゴし始める。
それからサクラに調味料をいろいろ出してもらって、ナポリタンの味付け用ソースを作っておく。
「これは定食屋でも作っていたから覚えてるぞ。味付けは、ケチャップとウスターソースにコンソメスープ少々、それからミルクと砂糖、塩胡椒っと。これでよし!」
計量に使っているスプーンで、量を計りながらボウルに入れて混ぜ合わせておく。
「じゃあ、炒めていくとするか」
大きめのフライパンにオリーブオイルをまわしかけて火にかけ、スライス玉ねぎを軽く炒める。そこに細く切ったピーマンと斜め削ぎ切りにしたウインナーを投入。
ひと通り火が通るまで炒めて軽く塩胡椒をしておく。
「ご主人、時間だよ〜〜〜」
砂時計を担当してくれていたデルタの声に、一旦火を止めて茹でたパスタを金属製のザルを使って引き上げ、もう一回火をつけたフライパンに投入。
そしてここにさっき作った合わせ調味料を全体に回しかけ、フライパンを揺すりながら全体を混ぜ合わせる。
最後に味見をして塩胡椒で味を整え、バターをひとかけら。軽く混ぜてバターが溶ければ完成だよ。
「手際いいねえ。見惚れちゃったよ。って事で! あ、じ、み! あ、じ、み! あ〜〜〜〜〜〜〜っじみ! ジャカジャカジャン!」
大皿にまとめて山盛りにしたナポリタンを見上げて、そんな事を言いながらいつもの味見ステップを踏みつつ目をキラキラさせるシャムエル様。
「あはは、まあこれだけ毎回大量に料理していれば手際も良くなるって」
笑ってそう言いながら、出来上がったナポリタンを小皿に綺麗に盛り付けてやる。ついでに自分用にもちょっと取り分けてから残りはサクラに収納しておいてもらう。
「はい、どうぞ。味見だよ」
「わあい、美味しそう!」
目を輝かせてお皿を受け取ったシャムエル様は、やっぱり顔からお皿にダイブしていった。
「ケン! これちょっと甘くて美味しい! この前食べたミンチのとはまた違うね!」
尻尾が三倍サイズになっているので、どうやらナポリタンはお気に召したらしい。
「おう、それじゃあまた作るから、食いたくなったらいつでも言ってくれよな」
汚れたフライパンをアクアに綺麗にしてもらいつつ、次のメニューを考える。
「シルヴァ達もそうだけど、いわゆる洋食メニューって皆好きだよな。ナポリタンとかハンバーグとかさ。あ、それならまだ時間はあるし、クリームコロッケも作っておくか。あれも絶対シルヴァ達好きそうだもんな」
小さくそう呟いて小麦粉の袋を取り出しつつ、手が止まる。
「だけど残念ながらカニが無いな。ううん、仕方がない。コーンで作るか」
コーンは、粒を切り落として茹でた瓶詰めのをセレブ買いでまとめ買いしたのが大量にあるので使い放題だよ。
「よし、じゃあ作るか」
小さく笑ってまた玉ねぎを取り出し、みじん切りにしてもらう。
「これを焦がさないようにしっかり炒めてから、水切りしたコーンを投入して水気を飛ばしたら塩胡椒っと」
そこまでやって、火から下ろして冷ましておいてもらう。
別のフライパンにバターを溶かし、小麦粉を振り入れてダマにならないようにせっせとかき混ぜながら火を通していく。滑らかになってきたら少しずつミルクを加えてさらに混ぜて、少し硬めのホワイトソースにする。
「ここにさっきの炒めた玉ねぎとコーンを入れて、さらにとろけるチーズも投入!」
ちなみに、とろけるチーズは、刻んだモッツァレラチーズだよ。
綺麗に混ざったら用意していたバットに平らになるように広げて冷ましてもらい、冷えたらごく軽く凍らせておく。
ナイフで等分して軽くまとめたら小麦粉をまぶして卵液、それからパン粉をまぶせば準備完了だ。
「じゃあ、あとはよろしく!」
一つ見本を見せてやれば、あとは器用なスライム達が全部やってくれるので、その間に俺は揚げる準備だ。
楽しそうに下準備をしているスライム達を横目に見つつ、大きなフライパンに菜種油をたっぷり入れて火にかける。
「はい、どうぞ!」
準備出来た分から。別のバットに入れて持ってきてくれるのでそれを受け取り揚げていく。
「クリームコロッケは、極力触らないようにするのがコツなんだよな。突っつき回していたら、パンクするって」
小さく呟き、突っつきたくなるのをグッと我慢した俺は、パチパチと音を立てるクリームコロッケを黙って見つめていたのだった。
「うん、なかなかいい感じに揚がったな」
狐色になった俵形のコーンクリームコロッケが並ぶ様を見て、満足そうにそう呟く。
「あ、じ、み! あ、じ、み! あ〜〜〜〜〜〜〜っじみ! ジャカジャカジャン!」
大興奮状態のシャムエル様が、横で本日二度目の味見ダンスを踊ってるよ。
今日はベリーやカリディア達も一緒に狩りに行ったみたいで、残念ながらシンクロダンスは無しだ。
「はいどうぞ。熱いから火傷するなよ」
ちょっと形の崩れたのを箸で摘んで、小皿に入れてやる。
「わあい、美味しそう!」
目を輝かせたシャムエル様は、両手でコーンクリームコロッケを鷲掴みにして豪快にかぶりついた。
「熱っ! でも美味しい! でも熱い!」
またしても大興奮状態の尻尾を振り回しつつ、熱い熱いと言いながらもご機嫌で齧り付いている。
どうやら、コーンクリームコロッケもお気に召したみたいだ。
笑ってもふもふ尻尾をこっそり突っついた俺も、パンクして形が悪くなったのを摘んで口に放り込んだのだった。
「熱っ!」