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またしてもジェムの大量買い取りと八百屋で発見!

「ここが西アポンのギルドの本部だよ」

 ハスフェルとギイが連れてきてくれたのは、シンプルな石造りの大きな建物で、東アポンのギルドよりも、真新しい感じがした。

 建物はまだピカピカだし、向こうの建物が重厚な造りの古くて立派な建物って感じなのに対して。こっちは実用重視のシンプルイズベスト! って感じだ。


 やっぱり、入った瞬間に大きなどよめきが起こり、殆どの冒険者達が立ち上がって武器を構えた。

「もうやだー! 毎回毎回、同じ反応しやがってー!」


 ニニの首に抱きついて叫んだ俺は、間違ってないよな?


 しかし、そんな皆の反応を無視して、嬉しそうな声がカウンターから聞こえた。

「おお、ケン。こっちにも来てくれたのか。上位冒険者の魔獣使いが来てくれて嬉しいぞ」

 態とらしいレオンさんのその言葉に、皆苦笑いして武器を納めてくれた。


 そう、銀行のカウンターみたいな受付の奥にいて騒ぎを収めてくれたのは、ディアマントさんの旦那のレオンさんだったのだ。


「あれ、こっちも見ておられるんですか?」

 こっちに向かって手を上げてくれたレオンさんに、一礼して俺は話し掛けた。

「それじゃ改めまして、西アポンのギルドマスターをしている、レオンだよ。ちなみに、こっちの副ギルドマスターがディアマントなんだ」

 差し出された右手を改めて握り返し、俺は驚いてハスフェルを振り返った。

 笑って頷く彼を見て、俺はカウンターに座った。

 ちなみにここは、ギルドの登録受付のカウンターだ。

 俺が座ると、担当の女性が急いで中の席に座ってくれた。

「ええと、登録をお願いします」

「あ、私もお願いします」

 俺とクーヘンがギルドカードを差し出すのを見て、受付のお姉さんは、満面の笑みになった。

 手早く登録を済ませた時、後ろにいたレオンさんがにっこり笑って席を交代した。

「登録感謝するよ。これは西アポンの居酒屋や飲食店で使える金券だ。入り口に、ギルドの文字がある店ならどこでも使えるぞ。全部で銀貨五枚分あるから好きに使ってくれ。一枚ずつ使ってもいいし、一気に五枚使うのも有りだぞ」

 差し出されたそれは、俺の知るお札くらいの大きさのやや分厚い紙のようで、表面には西アポンの冒険者ギルドの文字が見えた。その上には、虹色に光る西アポンの文字の判子が押されていて、裏面の使用店舗名の欄は未記入になっている。

「会計の際にこれを出してくれれば良い。金額によっては、ギルドカードの提出を求められる場合もあるが、出来れば応じてやってくれ。使えるのは西アポンのみだから間違わないでくれよな」

「ああ、こっちでは初回登録プレゼントは金券なんだ。了解。じゃあ、遠慮無く使わせてもらおう」

 金券を受け取る俺を見てレオンさんはまた笑顔になった。

「買い取りしたジェムの管理は東西共通だけど、何かあるならここでも喜んで買うぞ」

「どうする? クーヘンの分のトライロバイトのジェムはまた全部買い取って貰うのか?」

 横に座ったクーヘンに小さな声でそう尋ねる。

 結局、クーヘンの分のジェムは、俺が一旦預かる形になっているのだ。

「ええと、ちょっと考えている事があるので、ブラックトライロバイトのジェムを100個だけ出して頂けますか」

「じゃあ、また大量にありますんで、ここで出しますか?」

「有難い。それなら奥へどうぞ」

 満面の笑みのレオンさんに別室へ案内されて、俺達は従魔達と一緒に全員揃って移動した。



「さあどうぞ、好きなだけ出してくれたまえ」

 大きな机には分厚い布が敷いてあり、奥からこれまた大柄な年配の人達が出て来た。全部で六人だが、そのうちの二人は女性だった。ディアマントさんとは違って、二人とも小柄な年配の初老の女性だ。

 にっこり笑ってレオンさんの後ろに並ばれたよ。


 皆笑顔だけど、何と言うか……期待の圧が凄いです。


「じゃあ、まずこれは彼の分です」

 クーヘンの預かり分から、トライロバイトのジェムを100個だけ取り出す。

「おお、トライロバイトだな。これは素晴らしい」

 年配の、おそらく元冒険者のスタッフ達も、大喜びでジェムを見ている。

 もう一度数を確認して、預かり表をクーヘンが貰う。


「俺の方は、トライロバイト以外にも色々有るんですけど、どうしますか?」

「何が有るか、聞いても良いか?」

 身を乗り出すレオンさんに気圧されて、無意識に後ろに仰け反る。

 レオンさんの圧が凄い。ちょっとマジで背中が痛いです。


「ええと、順番に言いますね。まずブラックトライロバイト、これは亜種も有ります。素材は角。それからブラックイグアノドン、ブラックラプトル、この二つの亜種の素材は爪です。それからブラックステゴザウルスですね。これの亜種は大小色んなサイズの背板になります」

 レオンさんだけでなく、周りにいた人達までが、全員揃ってあんぐりと口を開けて俺を見つめている。



 ……沈黙。



「ええと、要りませんか?」

 困った俺がそう尋ねると、金縛りから解けたレオンさんがいきなり机に手をついて立ち上がった。

「いや、もちろん喜んで買うぞ! 数は? どれくらい有るんだ? ケンが良いだけ買うぞ」

 勢い込んで言われて、俺は小さく笑った。

「ブラックトライロバイトは、正直言って好きなだけ買い取って頂けます。あ、東アポンの船舶ギルドでは、二百と亜種は百、素材の角は混ぜて二百買い取ってもらいましたね」

「そんなに有るのか。じゃあ同じだけもらっても構わないか?」

「もちろんです。待ってくださいね」

 まずはブラックトライロバイトのジェムをガンガン取り出していく。

 それを見て慌てたスタッフの人達が、奥から大きなトレーとワゴンを持って来て、一緒に数を数えながらジェムをトレーに積み上げていく。


「ブラックイグアノドンは、船舶ギルドでは五十と亜種は三十、爪は六十買ってもらいましたね」

 レオンさんはそれを聞いて真剣な顔で頷いた。

「同じだけ貰えるか?」

「了解です、ちょっと待ってくださいね」

 また順番に取り出していく。


「ええと、ブラックラプトルは、三十ずつ買い取ってもらったんですが、亜種と素材の数が少ないですね。残りが二十八個と、爪が五十七個ですね」

「全部もらっても構わないか?」

 真顔でそう言われて。全部売るのをどうしようかと思って一瞬躊躇ったら、突然頭の中にベリーの声が聞こえた。

『気にせず全部お売りください。また集めて差し上げますから』

 嬉々としたその声に、俺は吹き出しそうになり、咄嗟に咳き込んだ振りをして誤魔化した。

「分かりました。じゃあ出しますね」

 また机に積み上げていく。


「ステゴザウルスは五十個ずつと背板も二百貰おう」

「あ。船舶ギルドと同じですね。じゃあ出しますね」

 これまた巨大なジェムと、大小様々な背板を取り出して並べていく。


 うん、恐竜のジェムは何度見てもデカいよな。


 嬉々として、せっせと数えてはトレーに積んでいくスタッフ達。

 全部数え終わって、預かり明細をもらってから立ち上がった。

「明日までには準備しておく。買い取り金は口座に振り込みでいいか?」

「あ、それでお願いします」

 ギルドカードを渡して、こっちでも入金の手続きを取ってもらう。

「じゃあ、明日以降の時間のある時に、明細をもらいに来てくれよな。本当にこんなに沢山のジェムを感謝するよ、ありがとう」

 満面の笑みのレオンさんとスタッフに見送られて、俺達はギルドを後にしたのだった。



「はあ、何だか疲れたよ。少し早いけど、何か食べてから武器屋へ行くか?」

 ギルドの建物を出て、大きく伸びをして深呼吸をする。振り返ってそう言うと、皆頷いてくれた。

「確かに少々腹が減って来たな。じゃあ屋台にするか? だけど、屋台だと貰った金券は使えないぞ」

 ギイが大通りを指差してそう言う。

 この大通りの先に、屋台のある広場があるらしい。

「ああ、あれは夕食に使うから構わないよ」

「そうか。じゃあ見にこう」

 って事で、そのまま全員揃って広場へ向かった。



「ああ! トマト発見!」

 途中の八百屋っぽい店の店頭には、大きなカゴに山積みになったトマトが並んでいたのだ。

 さり気なく聞いてみると、これは生食用で、別の山を見せてくれて、こっちは煮込み用だと言われた。

「ちょっと買い物しても良いか?」

 振り返ってそう言う俺に、ハスフェル達は笑って頷いてくれた。

 二種類のトマトをどちらも大量にお買い上げ。

 よし、これでサラダに彩りが出たぞ。

 これで、ベーコン、レタス、トマトの三種類が揃ったので、BLTサンドも出来るな。あ、クラブハウスサンドも出来るじゃんか。よしよし。

 頭の中でレシピを思い出しつつ、トマトを見つけた事に満足して広場に向かった。

 八百屋のおばさんによると、トマトはもう少し南の方で食べられているらしく、最近、人気が出て作る農家が増えてきて、店でも販売するようになったそうだ。

「食べ物も、どうやらかなり地域差がありそうだな。うん、旅をする楽しみが増えたぞ」

 思わずそう呟くと、いつの間にか姿を現していたシャムエル様も、嬉しそうに頷いていた。

「それを使って、どんな料理が出来るのかな? 楽しみ楽しみ」

 俺の頬に、もふもふ尻尾を叩きつけながら、シャムエル様は期待のダンスを踊っていた。

 なにこの素晴らしきもふもふ尻尾は。


 いいぞ、もっとやれ。

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