午後の昼寝とピルバグ戦
「はあ、ごちそうさま〜〜ううん、お腹いっぱいだ」
大満足のアレンジ弁当を平らげた俺は、弁当箱を片付けてそのまま仰向けに寝転がった。
他の皆も、それぞれ好きに寛いで寝転がっている。
見上げたよく晴れた空には、まるで絵に描いたみたいな真っ白な雲がポツポツと浮かんでいる。
気温はまだまだ冷んやりはしているが、差し込む日差しはもうすっかり春めいていて暖かい。
深呼吸をして目を閉じた時、俺の左右にふわふわがくっついてきた。マニとカリーノだ。顔を上げて見るとミニヨンはニニとカッツェを独り占めしてご満悦だ。
「ああ、子猫のもふもふに埋もれて昼寝なんて、最高だよ……」
大きな欠伸を一つした俺は、そのまま気持ち良く昼寝の海へ落っこちていったのだった。
はあ、幸せ……。
ぺしぺしぺし……。
ぺしぺしぺし……。
「うん、何だよ……あれ?」
不意に目を覚ました俺は、違和感を感じて腹筋だけで起き上がった。
「ああ、あのまま寝ちゃったのか。あはは、気持ちよかったぞ〜〜〜!」
俺の左右にくっついてまだ寝ているマニとカリーノを両手を伸ばして撫でてやる。二匹ともへそ天状態だ。
「ううん、どちらの腹毛も良き腹毛ですなあ」
笑って二匹のもふもふな腹毛を交互に満喫していると、ハスフェルの笑う声が聞こえた。
「お前は相変わらずだなあ。だけどそろそろ起きろよ。移動するぞ」
「ああ、もうひと狩りするって言っていたもんなあ。了解、起きるよ」
今度は手をついて起き上がった俺は、腕を伸ばして大きな欠伸をする。
うん、ちょっと疲れた感じだったけど、一眠りしたらすっきり復活したみたいだ。名残惜しいけどもふもふの間から立ち上がって周りを見て思わず吹き出したよ。
何しろ、シルヴァとグレイだけでなく、リナさん一家とランドルさんまでが、新しく仲間になったホワイトホーンラビット巨大バージョンの子に抱きついて全員揃って熟睡中だったんだからさ。
「これ、どうする?」
「さっきまで寝ていたお前に言われるのはあいつらも本意じゃあないと思うが、とりあえず移動したいから起こすぞ」
ハスフェルのツッコミに笑って頷き、順番に起こしていく。
ちなみに一番寝起きが悪かったのはアーケル君だったよ。ちょっと親近感を覚えたのは内緒だ。
敷布を撤収してそれぞれの騎獣に飛び乗った俺達は、ハスフェルとギイの案内で次の目的地へ向かった。
到着したのは、時々低木の茂みがあるだけの何の変哲もない草原。
「ええと、ここは何が出るんだ?」
マックスから飛び降りながらそう尋ねると、振り返ったハスフェルがにんまりと笑った。
「子猫達もきっと好きだろうと思ってな。ここはピルバグが出るんだよ」
「ピルバグ? ああ、巨大ダンゴムシだな」
頷いた俺の言葉に、唐突にシルヴァとグレイが悲鳴を上げて逃げ出した。俺の毛虫が駄目なのと同じくらいに、彼女達はピルバグが嫌いだったみたいだ。
「じゃあ、私達はこっちで休憩してま〜す!」
俺達が何か言う前に、相当離れたところにあった巨木の下まで逃げていった二人が、それぞれ手持ちの椅子を取り出して座る。
抱っこされたまま連れて行かれたホワイトホーンラビットのセージとカモミールは、それぞれのご主人の膝の上で中型犬サイズくらいになってご機嫌で寛いでいる。
「あはは、まあこっちは過剰戦力だからどうぞそこで好きなだけ休んでてください」
笑った俺の言葉に男性陣が揃って吹き出す。
「じゃあ、これが終わったら次は芋虫の出るところへ行くか」
「それは絶対お断りしま〜〜す!」
即座に叫んだ俺の悲鳴に、全員揃って大爆笑になったのだった。
「ああ、もう出てきてるよ」
ボスボスと戦う音がして振り返ると、茂みから這い出してきた伸びると1メートルクラスの巨大ダンゴムシに、巨大化した従魔達が一斉に襲いかかるところだった。
完全に出遅れた人族チームが揃って呆れて見ている中、マニとミニヨンとカリーノを先頭に、特に猫族軍団と犬族軍団が超ハイテンションで丸くなって転がるピルバグを叩いたり蹴りまくったりしていた。
そうだよな。マックスもニニもボール遊びが大好きだったもんな。
「これ、迂闊に近寄ったら、俺達まで一緒に蹴り飛ばされそうだなあ」
呆れたようなアーケル君の呟きにまた全員揃って吹き出し、もう一回大爆笑になったよ。
そして結局、ここでの狩りは従魔達だけで終わってしまい、その後も延々と五面目がクリアーするまで従魔達によるピルバグサッカー大会が繰り広げられたのだった。
え? その間俺達がどうしていたかって?
あまりの従魔達の勢いにドン引きした俺達は、シルヴァ達のいるところまで避難して、結局午後の遅いお茶会状態になっていたよ。
シルヴァ達は、俺達が取り出したいろんなお菓子に目を輝かせていたよ。
俺は、シャムエル様に山ほどお菓子を取り出してやったあとは、みたらし団子と緑茶でまったり寛いでいたよ。
はあ、あったかい緑茶美味〜〜。