初めての郊外へ行くぞ〜〜!
「ねえねえ、飛び地もいいけどさ。ケンが一緒に狩りに行くのなら、おチビちゃん達の訓練も兼ねて一緒に、まずは近場で簡単な狩りに行ってみるってのはどう?」
「たとえばスライムとか、小さめの昆虫とか草食系のジェムモンスター辺りなら、おチビちゃん達でも大丈夫かなって思うんだけどなあ」
笑顔で手を挙げたシルヴァとグレイの声に、俺も笑顔で頷く。
「同じ事を考えていたな。俺も出発までには、あの子達を郊外へ連れて行って狩りをさせてみたいと思っていたんだよな」
「ああ、それは確かに必要だな。じゃあ、このまま城へ戻って全員連れて出かけるとするか。なんなら、もう気温もそれなりに上がってきているから、郊外での野営も経験させておくべきじゃあないか?」
うんうんと頷くハスフェルの言葉に、皆が小さく拍手をする。
確かに、子猫達をニニの元から独り立ちさせる前に一通りの経験をさせておくべきだ。
「いいんじゃあないか、じゃあそれで行こう。どこか良さそうな狩場ってあるか?」
マックスの向きを変えて街へ戻りながらそう尋ねると、顔を見合わせて考えていたハスフェルとギイがそろって俺を見た。
「どうだろう? まずはスライムから始めるべきかな?」
腕を組んだハスフェルの言葉に、俺もちょっと考える。
「ううん、スライムって実は案外危険なジェムモンスターだぞ。うっかり張り付かれたらかなり危険だしなあ」
割と本気でそう言ったんだけど、リナさんに呆れたみたいに見られたよ。
「ケンさんは過保護ですねえ。あの子達は小さいとは言えリンクスですよ。スライム如きに遅れをとるわけありません。以前私がお世話したルルだって、もっと小さかったですけれどもスライムやホーンラビット程度は、当たり前に戦って倒していましたよ」
「ああ、そうなんですね。どうしてもニニの腹に潜り込んで寝ているイメージが強いもんで」
誤魔化すようにそう言って肩をすくめると、笑ったリナさんもうんうんと頷いていた。
「まあ、そのお気持ちはよく分かります。あの子達は本当に可愛いですからね。だけど本来は野の獣です。街にいる猫とは全く違いますよ」
諭すようなその言葉に、俺は真顔で頷いた。
確かにそうだ。あの子達は鋭い爪と牙を持つリンクスなんだ。しかも今ならニニだけじゃあなくて、全員保護者気分の猫族軍団をはじめ俺の従魔達が全員集合だ。危険なんてあるわけがない。
顔を見合わせて頷き合った俺達は、まずは留守番している子達を連れ出すために、一旦城へ戻ったのだった。
「おおい、皆起きてるか〜〜!」
お城へ到着した俺は、サクラに、マックスともども綺麗にしてもらってから急いで部屋に向かった。
「おかえりなさい。早かったのね」
俺が部屋に戻ったところで、ソファーに寝転がっていたニニが嬉しそうにそう言って顔を上げる。
「ただいま。なあ、一度子猫達を連れて郊外へ出てみようと思うんだけど、大丈夫かな?」
もう、産室ではなくて和室に出てきて好き勝手に転がってくつろぐ子猫達を見ながら、ニニのところへ行って撫でてやりながらそう尋ねる。
「ああ、確かにそろそろ狩りも経験させてやるべきね。お天気も良いみたいだし、いいんじゃあなくて?」
起き上がったニニが嬉しそうにそう言って思いっきり伸びをする。
おお、いつもながら見事な伸びっぷりだなあ。
「にゃに?」
「またお外行くのにゃ?」
「どこ行くにゃ?」
転がって遊んでいた子猫達が、一斉に起き上がって目を輝かせながら飛びついてくる。
「うわあ、やられた〜〜!」
わざとらしい悲鳴を上げて、ニニの上にマニとミニヨンごと倒れ込む。それを見て、慌てたようにカリーノも飛びついてきた。
「もう少ししたら旅に出るから、その前に狩りの訓練をしようと思うんだけど、行くか?」
三匹を順番におにぎりにしてやってから、起き上がった俺は子猫達を見ながら真面目な声でそう言ってやる。
「行くにゃ〜〜!」
三匹の返事が見事に重なり、部屋に好き勝手に転がって寛いでいた他の従魔達までもが一瞬で集まってきた。
何この一体感。
「よし、それじゃあ皆で一緒にお出かけだ。行く場所によると、そのまま野営するかもしれないからな」
「行くにゃ〜〜〜!」
もう一回子猫達の歓喜の叫びが綺麗に重なり、皆今すぐにでも駆け出しそうだ。
しかも、いつもは留守番しているイグアナコンビやハリネズミのエリーやモモンガのアヴィ、それからお空部隊もそろそろ出撃するつもりみたいで集まってきた。
「よし、それじゃあ全員揃って出かけるとするか。お願いだから、子猫達を守ってやってくれよな」
ニニとカッツェを撫でながらそう言い、俺も鞄を背負い直して剣帯をしっかりと絞めた。
「よし、俺も久々の狩りだし頑張るとするか!」
ヘラクレスオオカブトの剣をそっと撫でた俺は、にんまりと笑ってマックスの手綱を掴んだ。
「じゃあ、またよろしくな。相棒!」
「はい、お任せください! 何処までだって走りますよ!」
尻尾扇風機状態なマックスの首元を叩いてやる。
「無茶言うなって。今回は子猫達に狩りをさせるのが目的だから、そんな遠くへは行かないって」
笑って大きな首を抱きしめてやり、全員揃って部屋を出て行ったのだった。
さて、子猫達の初めての狩りは、どうなるんだろうな?